挫・人間|現実世界で笑いあうために

幸せになるためにがんばるのは難しい

──「笑いあうために」も今までになかった曲調ですよね。フォーキーなミディアムチューンで、ホーンやピアノが入っているという。

下川リヲ(Vo, G)

なかったですね。これ、僕が一番好きな曲なんですけど、アルバム収録曲の中で最後にできたんですよ。「品がねえ 萎え」を制作してる頃から、本当に歌いたかったのはこれだったんだって思いました。「笑いあうために」なんて、タイトルだけ聞いたらみんなけっこうざわっとするんじゃないかな。すげえ皮肉なのかマジなのか、どっちかわかんないと思う。でも、どう思われたとしても、やっぱ僕はそれが書きたかったんだなって。

──皮肉も入ってるんですか?

入ってないんです。これだけ怒ってたり、周囲に怖がられたりしてるバンドなんですけど、この曲が一番の真理で。ホントに思ってることを歌詞にするのはすごく恥ずかしいけど……僕の“生肉”の部分を晒したような曲なんです。勇気を出して書きました。

──この曲にある「トラウマばかりじゃ楽しくない」「一緒に憎んだすべてと笑いあうために」などの歌詞は、下川さんの素直な思いなんですね。

憎しみに突き動かされてる系のバンドマンなので……サブカルとかアンダーグラウンドが好きな人は基本的にそうだと思うんですけど、それらは最初は憎しみを肯定してくれるものだった。でもその憎しみの中から抜け出そうとすると、同じ憎しみの中にいた人たちから「お前、ここから抜けようとしてるんじゃないか」って思われることって、今のSNS時代、けっこうあると思うんですよ。「お前最近カッコよくなってんじゃん」みたいな。幸せになるためにがんばるのは難しいんですよね。でも僕は、陰キャが脱・陰キャしようとしてる、そんなエネルギーが働いてるときが一番カッコいいと思っていて。一歩踏み出すときは怖かったり痛かったりするものなんですけど「それでもいいんだぜ」ってことを歌いたかったと言うか。

──その“生肉”の部分を歌えたのはなぜだと思いますか?

どうやったら人に伝わるんだろうな、僕らを好きでいてくれる人たちに一番かけたい言葉ってなんだろうなといろいろ考えて。その結果、僕が出せる最大の答えが“生肉”の部分を見せることだったんです。

──「品がねえ 萎え」の制作時に本当に作りたかったのはこういう曲だと思ったとおっしゃっていましたけど、今の下川さんから見て「品がねえ 萎え」はどういう作品ですか?

「マジ素直」ですね(笑)。「品がねえ 萎え」も「笑いあうために」も、どっちも素直なんですよ。「品がねえ 萎え」はすごく排他的な曲ですけど、あれはあれで僕たちの合言葉みたいなものを詰め込んだと思っていて。

──お客さんとの信頼関係がある今だからこそ、「笑いあうために」のような曲ができたのかもしれませんね。

そうなんです。僕が幸福だと思っているのは否定しようのない事実なので。夏目の涙がそれを物語ってるんですけど。

──LIQUIDROOM公演ですね。夏目さん、ライブ序盤で泣いてました。

すぐ泣いちゃう。でも気持ちはすごいわかるんですよ。僕が先に泣くか夏目が先に泣くかで夏目が先だっただけで。だから幸福なんですよね、皆さまから与えられてるものっていうのは。それはやっぱりポジティブな作品やパフォーマンスで返したいなと思います。

作詞・夏目創太

──そんな「笑いあうために」のような素敵な曲がありつつ、下ネタ満載の「カルマポリスII」みたいな曲も入ってますね。

ホント速攻で台無しにするっていう。

──「ダンス・スタンス・レボリューション」のときも、「これは聴いた人をふるいにかけるような曲かもしれない」と言ってましたけど、この曲もまさにそういう曲ではないですか?

下川リヲ(Vo, G)

これに関しては笑って聴いていただければと。それでふるいにかけられる人、たぶんもう残ってないです(笑)。

──ここまで下ネタ満載の歌詞って今までなかったですよね。

なかったです。この曲の作詞、夏目創太なんで。僕は一切関わってないです。

──なるほど(笑)。

最低最悪。でも初めて聴いたとき笑っちゃいました。

──なぜ夏目さんが歌詞を書くことになったのですか?

夏目が作ってきた仮歌の段階でこの歌詞がありまして、もうこれでいいでしょって。変えようがないし、この歌詞を緩めても意味ないなと。ただ最初は歌詞に出てくる言葉がそのままタイトルだったんですけど、さすがにちょっとダメだよって話をしまして、僕が曲名を考えたんです。「警察だからポリス……あ、『カルマポリスII』」って(笑)。Iはやっぱ大御所がいるので。

Recゲストは精度の高いオタク2人

──アルバムのラストを飾るのは「品がねえ、萎え」にも入っていた「ダンス・スタンス・レボリューション」。曲中に「ウォールオブデス」という言葉が出てくる激しい曲ですが、ツアーで披露した際には観客が歩きながらハイタッチする“ウォークオブハイタッチ”という平和な光景が広がっていました(笑)。

下川リヲ(Vo, G)

けっこう喜んでくれる人が多くて。ウォークオブハイタッチ、岡崎体育さんもやってるらしいですね。

──そうなんですね。

らしいですよ。夏目が言ってまして。どっちが先かあとかは知らないですけど、話したこともほとんどないのにまったく同じパフォーマンスをするという謎のシンクロニシティ。でも、明らかに岡崎体育さんって弱そうですからね。きっと僕らと似たような人なんだろうなって思います。

──(笑)。ちなみに、前作アルバム「もょもと」にはAxSxE(NATSUMEN)さんが参加していましたが、今回レコーディングゲストはいますか?

はい。「笑いあうために」は最近ドレスコーズやギターパンダでもサックスを吹いている福島健一さんにお願いして、フルートとサックスを吹いていただきました。いやー、感動しましたね。生の管楽器ってこんなにすごいんだなって影響されて、僕もトランペットとかやってみようかなと思ってるんですよ。あと、「ダンス・スタンス・レボリューション」でオタクの声をやってくれた梶原笙(So Sorry,Hobo)。精度が高いオタクをわざわざ外部から連れて来ました。ちなみにもう1人オタクがいるんですけど……。

──もう1人?

楽器にまったくこだわらず、オタクの精度にこだわった結果、オタクのゲストが別々で2人来るっていう(笑)。

──どんなバンドなんですか(笑)。

「webザコ」でぼやきを入れたり、僕らと一緒に「webザコ」って叫んでくれたりしてるのがコースっていうオタクで。普段大声をまったく出さないオタクの、喉の開ききらない叫び声が収録できて最高でしたね。あとカタカタカタっていうあまりにも速すぎるキーパンチの音もコースです。Macってキーボードの音を出さないように出さないように進歩してるんですけど、わざと古いMacのキーボードを持ってきて、でっかい音でカタカタ鳴らすっていう。今Apple社の人が聴いたら発狂するような音を(笑)。普通キーボードの音って聞いたらみんな鍵盤の音を想像すると思いますけど、オタクのキーボードの音から始まるアルバムです。

──12月にはアルバムを携えたツアー「挫・人間 TOUR 2018/19 ~厨二病?いや、チューしよう~」が始まりますね。

肩組んで行こうぜと言うか、寄り添いすぎて接吻を求めるというタイトルです(笑)。楽しみにしていてほしいです。

下川リヲ(Vo, G)
ツアー情報
挫・人間 TOUR 2018/19 ~厨二病?いや、チューしよう~
  • 2018年11月14日(水) 東京都 新宿red cloth
    出演者 挫・人間
  • 2018年11月20日(火) 宮城県 enn 3rd
    出演者 挫・人間 / Su凸ko D凹koi
  • 2018年11月21日(水) 岩手県 the five morioka
    出演者 挫・人間 / Su凸ko D凹koi / アシュラシンドローム / プピリットパロ
  • 2018年11月23日(金・祝) 北海道 Spiritual Lounge
    出演者 挫・人間
  • 2018年11月25日(日)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
    出演者 挫・人間 / and more
  • 2018年11月30日(金) 石川県 vanvanV4
    出演者 挫・人間 / 八十八ヶ所巡礼 / 超能力戦士ドリアン
  • 2018年12月1日(土) 岡山県 PEPPERLAND
    出演者 挫・人間 / 八十八ヶ所巡礼
  • 2018年12月2日(日) 京都府 京都MOJO
    出演者 挫・人間 / 八十八ヶ所巡礼
  • 2018年12月9日(日) 茨城県 club SONIC mito
    出演者 挫・人間 / 巨乳まんだら王国。 / 眉村ちあき
  • 2018年12月15日(土) 広島県 HIROSHIMA 4.14
    出演者 挫・人間 / 超能力戦士ドリアン
  • 2018年12月16日(日) 福岡県 UTERO
    出演者 挫・人間
  • 2018年12月22日(土) 静岡県 HAMAMATSU FORCE
    出演者 挫・人間 / モーモールルギャバン
  • 2018年12月23日(日・祝) 香川県 高松TOONICE
    出演者 挫・人間
  • 2019年1月12日(土) 宮城県 FLYING SON
    出演者 挫・人間
  • 2019年1月19日(土) 大阪府 Shangri-La
    出演者 挫・人間
  • 2019年1月20日(日) 愛知県 APOLLO BASE
    出演者 挫・人間
  • 2019年1月25日(金) 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    出演者 挫・人間