音楽ナタリー Power Push - 米津玄師

自己否定から生まれた新たな挑戦

米津玄師がニューシングル「LOSER / ナンバーナイン」をリリースした。

自身最大のヒットを記録したアルバム「Bremen」から約1年ぶりとなる今作はルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」公式イメージソングとして制作された「ナンバーナイン」や、ミュージックビデオで本格的なダンスを披露する「LOSER」など、新たな挑戦の詰まった1枚となっている。

中田ヤスタカ(CAPSULE)とのタッグが実現した映画「何者」の主題歌「NANIMONO」も含め、新たなコラボレーションを多く展開している現在の米津。彼を駆り立てるものは果たしてなんなのか。インタビューで彼が語ったのは、意外とも言えるほどの強い「自己否定」の意識だった。

取材・文 / 柴那典

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「ルーヴルNo.9」に音楽を付けるのは俺しかいない

──今回のシングルは3曲が収録されていますが、どんな順番で作っていったんでしょうか?

「ナンバーナイン」が最初ですね。去年にルーヴル美術館のお話をいただいて書き始めた曲なので(参照:米津玄師、ルーヴル美術館特別展の公式イメージソングを書き下ろし)。「ナンバーナイン」が最初にあって、じゃあ次は何をするかって考えて「LOSER」ができた。で、すごくいい曲が2つできたから、あとは自分の好きなように作ろうと思って「amen」ができた。そういう順番です。

──昨年には「Bremen」というアルバムをリリースしました。米津さんにとっても相当手応えのある作品だったと思うんですけれど、そこからの次の1歩という意味では、どういうイメージがあったんでしょう?

次をどうするかについては、最初は何も考えてなかったんですね。どうしようかなとか思いつつ、なんとなく過ごしてたんです。そうしたらルーヴル美術館の話が来たので、「ナンバーナイン」は、自分がどうしたいかというより、そこにどう対処するかという考え方で作りました。

──逆に言うと、そういう取っ掛かりが与えられたことはけっこうありがたかった?

そうですね。今まではどこに向かうかを1から10まで全部自分で決めなきゃいけなかったんですけど、進む方向を与えてもらうのは新鮮だったし、やっていてすごく楽しかったですね。

──「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」はマンガやバンドデシネをテーマにした展覧会ですし、そういうところも含めて米津玄師としてのアーティスト性と共振、共鳴するようなお話だったと思うんですが。

そうですね。いわゆるバンドデシネにも以前から影響を受けてきたので。「ルーヴルNo.9」の中にラインナップされてるマンガ家の中にも、自分がものすごく影響を受けた人はたくさんいたし。それに対して音楽を付けるっていうのは、俺以外ありえないんじゃないかって思うくらいで。ジャストフィットする話だなというのは最初に思いました。

「Bremen」の次へ

──では「ナンバーナイン」という曲を作るにあたってはどういうところを目指していったんでしょう?

米津玄師

「Bremen」でやったことをある程度踏襲しながら、それをアップデートするというか、また少し違う方向に持っていくものをということを考えてましたね。わかりやすく「Bremen」の次へ行くものという感じです。

──サウンドの感触は「Bremen」とつながりはありますが、曲の構造はかなり変わっていますね。

「ナンバーナイン」ではmabanua(Ovall)さんに編曲に入ってもらっているんです。今まではサウンドプロデューサーみたいな人は蔦谷好位置さんとしか一緒にやったことがなかったんですけど、mabanuaさんは全然アプローチも違うし、感触も違っていて。それも新鮮でした。

──この曲の歌い出しには「砂漠の中 遠くに見えた東京タワー」という1節がありますよね。いわば文明が滅んだ廃墟としての東京のようなイメージがある。これはどういうところから?

まず大前提として砂漠が好きっていうのが自分の中にあって。それに、俺の中の「バンドデシネっぽさ」が砂漠なんですよね。10代の頃からすごく好きでカッコいいと思ってたメビウスというバンドデシネの巨匠が、砂漠をモチーフに絵を描くことが多くて。そういうところから「バンドデシネ=砂漠」というイメージがあったのかなって自分では思ってるんですけど。

──「東京タワー」という言葉はどういう象徴になったと思います?

情景として、砂漠になった東京っていうのがまず最初に浮かんできたんです。そういう風景って、客観的に見たら、希望も何もないみたいな状態だと思うんですよね。でも、めちゃくちゃになっちゃった状況でも、そこにへばりついて生きている人間って、わりと明るいんじゃないかと思うんです。いくらめちゃくちゃな状態でも、住んでる人にとってそれが当たり前だったら疑問を持たないじゃないですか。それは、今自分が住んでる日本においても変わらないと思うし。幸せなんだけど、よく見るとめちゃくちゃな日常を生きてるなと。それで、「ナンバーナイン」っていうこの曲自体も、明るい曲調にしようと思って、ポップなリズム感で作ったんです。

両A面シングル「LOSER / ナンバーナイン」/ 2016年9月28日発売 / Sony Music Records
LOSER盤 [CD+グッズ] / 2106円 / SRCL-9191~2
ナンバーナイン盤 [CD+DVD+グッズ] / 1944円 / SRCL-9193~4
通常盤 [CD] / 1296円 / SRCL-9195
CD収録曲
  1. LOSER
  2. ナンバーナイン
  3. amen
ナンバーナイン盤 DVD収録内容
  • 「LOSER」ミュージックビデオ
  • 「ナンバーナイン」ミュージックビデオ
中田ヤスタカ 新作CD「NANIMONO EP / 何者(オリジナル・サウンドトラック)」
2016年10月5日発売 / [2CD] 2160円 / Warner Music Japan / unBORDE / WPCL-12472~3
DISC 1 NANIMONO EP
  1. NANIMONO (feat. 米津玄師)
  2. NANIMONO (feat. 米津玄師) -extended mix-
  3. NANIMONO (feat. 米津玄師) -Danny L Harle remix-
  4. NANIMONO (feat. 米津玄師) -TeddyLoid remix-
  5. NANIMONO (feat. 米津玄師) -banvox remix-
DISC 2 何者(オリジナル・サウンドトラック)
  1. 就活スタート
  2. 3人の出会い
  3. 拓人の想い
  4. 就活対策本部結成
  5. 何者のテーマ
  6. ギンジとのやりとり
  7. ルームシェア
  1. 瑞月のお母さんの話
  2. 何者~モンタージュ~
  3. グルディス
  4. 光太郎の本音
  5. 何者劇場
  6. 拓人と瑞月

米津玄師 2016 TOUR / はうる

  • 2016年11月23日(水・祝)東京都 豊洲PIT
  • 2016年11月28日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2016年11月29日(火)大阪府 Zepp Namba
  • 2016年12月2日(金)宮城県 仙台PIT
  • 2016年12月8日(木)東京都 Zepp Tokyo
米津玄師(ヨネヅケンシ)

男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にボーカロイド楽曲を投稿し、代表曲「マトリョシカ」の再生回数は800万回を、「パンダヒーロー」の再生回数は400万回を超える人気楽曲となる。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表。全楽曲の作詞、作曲、編曲、ミックスを1人で手がけているほか、アルバムジャケットやブックレット掲載のイラスト、アニメーションでできたビデオクリップも自身の手によるもの。マルチな才能を有するクリエイターとして注目を集めている。2013年5月、シングル「サンタマリア」でユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。同年10月にメジャー2ndシングル「MAD HEAD LOVE / ポッピンアパシー」、ハチ時代のアルバム「花束と水葬」「OFFICIAL ORANGE」の再発盤をリリースした。2014年4月、米津玄師名義としては2枚目のアルバム「YANKEE」を発表。同年6月には初ライブとなるワンマン公演を東京・UNITで開催した。2015年1月にシングル「Flowerwall」をリリース。4月には全国ツアー「米津玄師 2015 TOUR / 花ゆり落ちる」を開催し、10公演を行った。同年8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」で野外フェス初出演を果たす。9月にシングル「アンビリーバーズ」を発表。10月にはアルバム「Bremen」をリリースし、2016年1月からワンマンツアー「米津玄師 2016 TOUR / 音楽隊」を実施した。ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」の公式イメージソングとして、新曲「ナンバーナイン」を書き下ろし、同年9月に両A面シングルとして「LOSER / ナンバーナイン」をリリース。10月には中田ヤスタカとタッグを組み、映画「何者」の主題歌「NANIMONO (feat. 米津玄師)」を発表する。