ナタリー PowerPush - X JAPAN

YOSHIKI単独インタビュー

やっぱりサビは「紅に染まった」って歌うべき

──ワールドツアーはどの国も大盛況でしたが、X JAPANはなぜ海外のファンにこんなに支持されてるんだと思いますか?

インタビュー風景

月並みかもしれませんけど、やっぱり努力は必ず報われるっていうか、いつも真剣に音楽に向き合ってきたからじゃないですかね。本当に伝えたい音楽を気持ちを込めて作る。あとライブも、ノルマをこなすようにやったライブはひとつもなくて、すべてに全身全霊を込めてきた。もちろん戦略的に考えてる自分もいますけど、最終的にはいかに純粋に音楽に打ち込むか。それが人の心を打って、時代の壁も人種の壁も超えられるんだと思ってます。

──音楽性についてはどうですか? X JAPANの音楽にはどこか日本的な情緒とか、わびさびみたいなものがあって、そこが海外の人に強く支持されている面もあるのかな、と思うんですが。

僕もすごくそう思います。洋楽の影響を思いっきり受けて、同時に日本の音楽の影響も受けて、その両方を自然に混ぜたものがX JAPANだと思うんですよ。僕は日本のポップスもクラシックもいっぱい聴いてきたし、もちろん洋楽のハードロックもパンクロックもヘヴィメタルも全部聴いてきて、それを一回自分の中に入れて、結果出てきたのがX JAPANの音楽で、それが逆に洋楽ファンから新しいって言われますよね。

──そういえばワールドツアーでは日本語と英語の歌詞を混ぜているそうですね。

11月14日、「Girls Award 2011 AUTUMN / WINTER」に出演した際のYOSHIKI。

最初、北米ツアーのスタートは全部英語の歌詞で始めたんです。でも途中から「この曲はやっぱり日本語のほうがいいんじゃないか」って話になって。例えば「紅」っていう曲があるんですけど、北米ツアーの途中で、やっぱりサビは「紅に染まった」って歌うべきだっていうのでそこは日本語にしたり、「Rasty Nail」はニューアルバムには多分全部英語バージョンで入ると思うんですけど、北米ツアーの後半ではわざと部分的に日本語を入れてみたり。

──面白いですね。

僕らが洋楽が好きで英語を一生懸命勉強して歌ったように、海外の人たちが日本語を勉強してサビを一緒に歌ってくれるんです。

──そういった日本的な要素は、X JAPANのひとつの芯になっている気がします。

「紅に染まったこの俺を」だからね(笑)。どこをとっても日本ですね。

解散前は何か大切なものを忘れてしまっていた

──再結成してから4年が経ちますが、復活後のX JAPANはLOLLAPALOOZAやSUMMER SONIC、a-nationといったフェスにも出演していますよね。90年代は対バンやイベント出演をほとんどせず、孤高のバンドというイメージが強かったんですが。どういう心境の変化があったんでしょうか?

11月14日、「Girls Award 2011 AUTUMN / WINTER」に出演した際のYOSHIKI。

一言で言うと、初心に返ることができたんだと思います。今回の海外ツアーもそうなんですけど、極端に言えば、お客さんがいてくれれば自分たちは電球1個のステージでもやるんだっていう意識でいるんです。やはりこれだけたくさんの国を回ってると、うまくいかないことがいっぱいあるんですよ。機材が届かなかったりとか、電源が間に合わなくて発電機使ってやんなきゃいけないとか、楽屋がないとか。

──日本では考えられない状況ですね。

昔、ラストライブ前のX JAPANは東京ドームしかやってなかったんです。毎年東京ドームしかやってなくて、極端な話、楽屋に入ったらフランス料理のコースが用意されてる、みたいな(笑)。足を机の上に乗っければ誰かがブーツを履かせてくれる。ドラムセットが3台用意されてて1個壊したらまた次が出てくる。そういうところまで行っちゃってたんです。

──なるほど。

メンバー同士の会話も、その間にマネージャーがいてそれぞれマネージャーを通して伝える、みたいなことになってて。でも俺たち目の前にいるじゃん、って。そういう状況の中で、気付いたら何か大切なものを忘れていた気がするんです。自分たちが音楽をやれる環境にいて、それがいかに幸せかっていうことを。

──渦中にいるときは気付かないものなんですね。

11月14日、「Girls Award 2011 AUTUMN / WINTER」に出演した際のYOSHIKI。

一旦バンドを解散して、ToshIとも一回離れて、その10年間の空白の中で自分の置かれていた状況のありがたさがわかったんです。北米ツアーの前にLOLLAPALOOZAに出たんですけど、イベントだし当日リハーサルとかないんですよ。ぶっつけ本番。出番前に自分でドラムをチェックして、演奏中も壊れちゃって直しながらやらなきゃいけない(笑)。そんなのから始まって、北米ツアー中もトラブルが次から次へと起きて、やってるうちに初心に返れた気がして。昔ライブハウスを回ってたときは、当時免許証持ってるのが俺とHIDEしかいなかったんで、いつも俺かHIDEが運転してたんですよ。自分たちで運転して機材も自分たちで運んでた、その頃の気持ちに今やっと戻れたんですよね。

──その流れの中で国内の大型フェスへの出演もありましたが。

サマソニに出たのも、僕が呼ばれた知人のディナーの席にサマソニの関係者の人がたまたま来てて、そこで「今度サマソニとか出てみたいんですよね」って言ったら「本当に出ます?」「出ます出ます」みたいな。それで今回実現したんです。フェスはいいですね。アウェイ的な雰囲気もX JAPANには結構似合ってると思うし、初めて観た人を魅了してファンにしようっていう、昔はいつもそういう感覚だったんで、そういうのを今楽しみながらやってる感じです。

ライブDVD「THE LAST LIVE 完全版」 / 2011年10月26日発売 / ジェネオン・ユニバーサル

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  • 初回限定コレクターズボックス[DVD3枚組]  / 12600円(税込) / GNBL-7009
  • 通常盤[DVD2枚組]  / 5250円(税込) / GNBL-7010
収録曲
  1. Amethyst
  2. Rusty Nail
  3. Week End
  4. SCARS
  5. DAHLIA
  6. Drum Break
  7. DRAIN
  8. ピアノソロ
  9. Crucify My Love
  10. Longing~跡切れたMelody~
  11. Orgasm
  12. Forever Love
  13. Prologue-World Anthem
  14. X
  15. Endless Rain
初回限定盤 封入特典
  • 復刻ツアーパンフレット(縮刷版)
  • TOKYO DOME LIVE DVD 全4BOX購入者プレゼントキャンペーン応募券
初回限定盤 特典映像
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X JAPAN(えっくすじゃぱん)

1982年にYOSHIKI(Dr, Piano)とToshI(Vo)を中心に結成される。インディーズで絶大な人気を誇り、1989年にアルバム「BLUE BLOOD」でメジャーシーンに進出する。派手なメイクと衣装に代表される独特のスタイルが大きく注目される一方で、圧倒的なヘヴィメタルサウンドと確かな演奏力が高評価を獲得。攻撃的なメタルナンバーとドラマチックなバラードの双方に定評があり、ヴィジュアル系バンドの先駆者的存在としても認知されている。人気絶頂の1997年、ToshIの脱退宣言を機に解散。再結成が熱望されるが翌1998年にHIDEが急逝し、復活は絶望視される。しかし2007年10月に突然活動再開を宣言しファンを熱狂させた。アジア諸国やアメリカ、ヨーロッパなどでの人気も高く、復活第1弾となった新曲「I.V.」はハリウッド映画「SAW4」のメインテーマソングに起用。本作で念願の世界デビューを果たしている。2008年3月には復活ライブを東京ドームを3日間にわたり開催し、各地からファンが集まった。2009年5月にはSUGIZO(G)が新メンバーとして正式加入している。