YOSHIKI(Dr, Piano / X JAPAN)、HYDE(Vo / L'Arc-en-Ciel、VAMPS)、SUGIZO(G / LUNA SEA、X JAPAN)、MIYAVI(G)によるバンドTHE LAST ROCKSTARS。彼らが1月にスタートさせるデビューツアーより、1月27日に行われる東京・有明アリーナ公演の模様がWOWOWで生中継される。
ライブの開催および放送・配信を記念して、音楽ナタリーではTHE LAST ROCKSTARSの特集を展開。ワールドワイドに活躍する4人のルーツを交え、THE LAST ROCKSTARSの魅力を紐解く。
文 / 中野明子
2022年11月11日、YOSHIKI、HYDE、SUGIZO、MIYAVIが新たなバンドTHE LAST ROCKSTARSの結成を発表。そのニュースは日本のみならず各国の音楽ファンを驚かせた。そして4人は多忙を極める中、国内外のメディアを招いて会見を行い、「世界をロックする」と高らかに宣言した(参照:YOSHIKI×HYDE×SUGIZO×MIYAVIのバンド結成理由とは?世界に飛翔するTHE LAST ROCKSTARS会見)。
「音楽界のアベンジャーズ」「モンスターバンド」「日本ロック界のドリームチーム」……そんな言葉を冠するにふさわしいバンドの結成は、「ロックバンドでドラムを叩いているYOSHIKIの姿を見たい」とHYDEが申し出たことに端を発するのだという。長らくプライベートで友人関係にあったという4人。それぞれが強烈な個性を放ち、輝かしい経歴とともにシーンの第一線を走り続けているが、そのバックグラウンドは異なる。
メンバーの中でもっとも長いキャリアを誇るYOSHIKIは呉服屋の息子として生まれ、幼少期からピアノ、トランペット、ドラムとさまざまな楽器に親しんできた。彼が手がけたクラシック音楽の要素も感じさせる楽曲の数々は老若男女を魅了し、それを証明するように1999年には第125代天皇(現上皇明仁)の即位10周年を祝う祭典にて奉祝曲「Anniversary」を披露した。プレイヤーとしての実力も折り紙付きで、X JAPANにおいては破壊的な激しいドラミングを披露したかと思えば、繊細かつ優美なピアノの旋律でリスナーの心を揺さぶる。特に、彼の華やかでテクニカルなドラムプレイは多くのフォロワーを生み出し、現在も音楽業界に多大な影響を与えている。YOSHIKIは1992年にロサンゼルスに移住し、バンドとソロの両方でワールドツアーを展開してきた先駆者。ニューヨークのMadison Square GardenやロンドンのWembley Arenaでの公演、アメリカのロックフェス「Lollapalooza」や「Coachella Valley Music and Arts Festival」への出演、ソロとしてはニューヨークのカーネギーホールでの公演など、アジア人として初めて“音楽の世界3大殿堂”を制覇。また、映画、テレビ、アニメなどさまざまな作品の音楽コンポーザーも務め、世界的に活躍するアーティストとして、これまでボノ(U2)、サラ・ブライトマン、ウィル・アイ・アム(The Black Eyed Peas)、Kiss、ジョージ・マーティン(The Beatlesプロデューサー)、ロジャー・テイラー(Queen)などと共演し、米誌で日本の歴史上もっとも影響力のある作曲家の1人として評されている。
かねてからベートーヴェンやモーツァルトを例に挙げ、「数百年後の人の心に残るものを作曲したい」と語り、世界を飛び回りながら音楽を作り続けているYOSHIKI。彼は最前線で活躍する一方、最近ではボーイズグループオーディション「YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X」でプロデューサーを務め、自らの知見を後進に伝えるべく尽力。国内外のチャリティ活動にも精力的で、ステレオタイプのロックミュージシャンとは異なる道を切り拓き続けている。
THE LAST ROCKSTARS結成の立役者であるHYDEのルーツは、GASTUNKとDEAD END。過去のインタビュー(参照:HYDEソロ20周年記念インタビュー)で彼は、「GASTUNKは産みの親で、DEAD ENDは育ての親」と語っている。ハードコアやヘヴィメタルをベースとしたGASTUNKの楽曲と、美しくも退廃的な空気をまとったDEAD ENDの音楽が脈々とHYDEの歌や作る楽曲に流れていることは確か。母体であるL'Arc-en-Cielはもとより、VAMPSやソロの楽曲においても彼は“静と動”の両方の側面を巧みに使い分け、悪魔のように禍々しいオーラを放った次の瞬間には、優しく穏やかな歌声で何もかもを包み込んでいく。楽曲ごとに異なる世界を描き出すその能力は、さながら魔法のようでもある。「歌うことが宿命」と明言するように、誰もがシンガーとしての実力を認めるところだが、本人は「まだまだ」と謙遜する。その所以は、「海外のフェスで観客を熱狂させること」「世界に通用する音楽を作る」という自身の夢をまだ叶えていないからではないか。自身が思春期に魅せられたMötley Crüeのように、国境を越えて自らの歌を響かせたい。30年を超えるキャリアの中で、L'Arc-en-Cielとしても、VAMPSとソロの両名義でもワールドツアーを精力的に行うなど確かな実績を誇るHYDE。スタジアムライブを成功させる彼にとってもまだ見ぬ景色がある──その境地への切望がTHE LAST ROCKSTARS誕生につながったのかもしれない。
YOSHIKIと同様にクラシックをルーツに持つのが、両親ともにオーケストラ団員という音楽一家に生を受けたSUGIZOだ。3歳からバイオリンを弾き始めたという彼は、中学1年のときにYMO、RCサクセション、Japanに出会い、ロックやニューウェイブに傾倒していく。1992年にLUNA SEAのギタリストとしてデビューした彼は、自らの中に流れるクラシックの様式美を楽曲やパフォーマンスに反映。“五者五様”の個性を放つLUNA SEAの中でも、その華やかなプレイと革新的なアイデアでリスナーを惹き付けてきた。1997年にはイギリスに渡り自身のレーベルを発足させると、国外での活動も意欲的に展開。1stソロアルバム「TRUTH?」には坂本龍一やミック・カーンが参加したことでも話題となった。リブート後にはLUNA SEAとしてワールドツアーを行い、現在に至るまで国内外のさまざまなアーティストたちとバンドを組んだり、音楽プロジェクトを発足させたりと多様な活動をしてきたSUGIZOだが、もっとも世間を驚かせたのはX JAPANへの加入だろう。故HIDEへのリスペクトはありつつも、レジェンドバンドの一員になるというプレッシャーは想像を絶するものだったに違いない。しかし、見事な演奏力と華やかな佇まい、バランサーとしての才覚によって彼の加入はX JAPANファンに受け入れられた。また、SUGIZOと切っては切り離せないものとして社会活動が挙げられる。SUGIZOは1990年代後期より難民問題や環境保護、災害ボランティアなどに積極的に取り組み、自身がその中で感じたことを言葉や音楽を通して発信。根底には「よりよい未来を後進に残したい」という切なる願いがあるという。
4人の中で最若手のMIYAVIはかつてプロのサッカー選手を志し、音楽とは無縁の生活を送っていた経歴の持ち主だ。しかし中学時代にギターと出会い、音楽で生きていくことを決意し17歳で上京。10代でデビューした早咲きの才能の持ち主でもある。2002年にソロとして始動してからは、“和”を意識したビジュアルとサウンド、エレクトリックギターをピックを使わずに指で弾く“スラップ奏法”を用いた独特のギタープレイを武器にシーンを席巻。キャリアの早い段階で海外を目指していた彼は、2008年に初のワールドツアーを開催したことを機に、現在までに約30カ国350公演以上を実施。卓越した演奏力と、スポーツで培った身体能力の高さを生かした躍動感のあるステージングは海外でも注目され、“サムライギタリスト”の異名を持つことは広く知られている。また20代の頃から世界を目指し、ハリウッド映画への出演経験もある彼の視野は社会情勢にも向けられ、2017年には日本人初のUNHCR親善大使に就任。コロナ禍前は難民キャンプにたびたび赴き、ギター1本で現地の子供たちを熱狂させてきた。およそ多くの人がイメージするロックスターとは異なる活動だが、そこに根付くのはSUGIZO同様に未来への尽きせぬ思いだ。自身の音楽や活動を通して、希望のある未来を作りたい。そんなことをMIYAVIは自身の初エッセイ「何者かになるのは決してむずかしいことじゃない」でつづっている。
一見すれば成功者以外の何者でもない4人だが、その心に共通して抱えているのは満たされぬ渇望感。現状に満足できない、まだまだ新しい音楽を探求したいという飢餓のような思い。彼らの瞳は野心に燃え、これから世界に打って出るという意志に満ちていた。その思いはそれぞれのファンにも波及し、デビューツアーのうち国内公演のチケットは文字通りの争奪戦に。WOWOWでの生中継の決定がアナウンスされると、歓迎の声がSNSに飛び交った。
なお、現時点で世に出ている彼らの音源は、エッジィなEDMと耽美なロックサウンドが融合したデビュー曲「THE LAST ROCKSTARS(Paris Mix)」と、結成発表と同時にティザー映像が公開された、どこか刹那的でありながらダンサブルな要素を持つ「PSYCHO LOVE」のみ。だがこの2曲だけでも、THE LAST ROCKSTARSのポテンシャルを感じるには十分。全員が作詞作曲を手がける4人だけに、ライブではどんな曲を届けてくれるのか。ライブを目前に控え、「THE LAST ROCKSTARS(Paris Mix)」のフルサイズバージョンのミュージックビデオも公開されたこともあり、否が応でも期待値が高まる。
「THE LAST」には、「最後」以外にも「この上ない」「最上の」といった意味がある。THE LAST ROCKSTARSというバンド名には、本人たちが標榜する“最後のロックスター”という意味だけでなく、メンバーにとって“最後”の挑戦、稀代のアーティストとして活躍する4人が“この上ない”ロックを鳴らすといった複数の思いが込められているのだろう。
最後に、YOSHIKIとSUGIZOが会見で強調していたことをここで記しておきたい。YOSHIKIは「僕らの結成が正しかったか、正しくなかったかは未来が決めること。それぞれのバンドにいい影響があってほしい」、SUGIZOは「すべてのバンドのファンと一緒に新しい夢を見たい」と語った。日本発のバンドとして、世界を揺り動かし、新たな音楽を届ける。そんな思いのもとに生まれたTHE LAST ROCKSTARS。4人がステージ上で起こす化学反応を、どうかその目で見届けてほしい。
プロフィール
THE LAST ROCKSTARS(ザラストロックスターズ)
YOSHIKI(Dr, Piano / X JAPAN)、HYDE(Vo / L'Arc-en-Ciel、VAMPS)、SUGIZO(G / LUNA SEA、X JAPAN)、MIYAVI(G)によるロックバンド。それぞれ音楽シーンにおいて第一線を走り続ける4人が、「世界をロックする」ことを目指して結成した。2022年11月に記者会見を行い結成を発表したのち、12月にはデビューシングル「THE LAST ROCKSTARS(Paris Mix)」を世界配信。年末には「第73回NHK紅白歌合戦」に初出場した。2023年1月より初ツアーを東京、ニューヨーク、ロサンゼルスの3都市で行う。東京公演のチケットは即完売。2月4日のニューヨーク公演、10日のロサンゼルス公演もソールドアウトしたことを受け、2月3日にニューヨークでの追加公演が決定した。
「THE LAST ROCKSTARS Live Debut 2023 Tokyo - New York - Los Angeles」2/3 ニューヨーク公演チケット購入ページ
THE LAST ROCKSTARS (@LAST_ROCKSTARS) | Twitter