Wienners|ライブの積み重ねから生まれた起死回生の再メジャーアルバム

人生の勝負時を迎えているすべての人へ

──今回は正確に言うと再メジャーデビューで、当然ここまでにはアップダウンがあったことを思うと、「起死回生の一発」という曲はタイトルからして非常に意味深いなと。

Wienners

玉屋2060% 「メジャーでもう1回アルバムを出す」ということを念頭に置いて作った曲ですね。人は誰しも人生の勝負時みたいなものがあると思うんですけど、俺たちにとってはそれが今だと思っていて。なので、もともとは自分に対して発破をかけるための曲だったんです。でもWiennersのリスナーの中にも同じような状況にいて一歩を踏み出せないって人もいると思うから、自分に重ねて聴いてもらえるとも思ったんですよ。ただ、俺は誰かに共感してもらうことを想定して曲を作るタイプではないので、「じゃあ、それをどうやったら自分に当てはめてくれるのか?」というのはすごく考えました。

──どんな部分がポイントになりました?

玉屋2060% シンプルですけど、俺らが意志を貫くことで勇気を持ってくれる人がいるんじゃないかなと。これもライブを通して感じたことで、上からな言い方ですけど背中を見せるというか、それだけでも勇気を持ってくれる人がいることを確認できたんですよね。なので最初は自分たちの曲として作っていたけど、途中から聴いてくれる人の曲になっていって、それはすごく大きかったです。

──曲順もいいですよね。「MY LAND」で自分にとっての大切なものを握りしめて、その1人ひとりが「UNITY」で1つになったからこそ「起死回生の一発」がみんなの曲になり得るというか。

玉屋2060% そう言われるとものすごく美しい流れですね(笑)。「みんなの曲になっていく」っていうのは、アルバムを作るうえで今まで以上に意識した部分で、メンバーとの話し合いの中でもすごくよく出てきたキーワードだったんです。さっき言ったように、もともとの発想が「共感を得たい」ではないから、それをどう届ければいいのかというのは相当考えないといけないなと再認識して。自分だけの考えではここまでたどり着けなかったというか、ほかのメンバーの意見があったからこそ開けたものになったと思います。

アサミサエ 個人的に緊迫した曲にはしたくなかったんですよね。必死につかみ取るような緊迫感よりは、自分たちに訪れた幸運に目を向けられるようになった感じというか、みんなのピンチをチャンスに変えられるような曲にしたいと思ったんです。なので歌い方もなるべく軽く、明るい感じでキラッとさせたいと思って、そこはすごく考えました。それによって、それぞれがピンチに直面したときに背中を押せる1曲になったかなって。

クラシックとパンクの融合

──作曲家としての玉屋さん的には、「Kindergarten Speed Orchestra」はアルバムの中でも特にチャレンジングな曲だったんじゃないかなと。

玉屋2060% 「オーケストラをバカみたいなファストポップでやりたい」というアイデアは「TEN」(2018年発表の4thアルバム)の頃からあって、それがやっと形になった1曲です。デモを何十通りも作ったんですけど、最終的にはクラシックとパンクの融合みたいなことがちゃんとユーモアもある形でできたのかなって。子供たちが楽器を好きなようにめちゃくちゃ鳴らしまくってるみたいな。それをパンクってものに置き換えることができて、すごく気に入ってます。

玉屋2060%(Vo, G)
玉屋2060%(Vo, G)

KOZO 僕は1つ目のサビ前に出てくるフレーズを死ぬほど迷ったんですよ。“小さい子たちがオーケストラをやってるような雰囲気”がテーマだったから、これは整理しちゃうと逆に伝わらないなと思って。僕、小さい子にドラムを教えてるんですけど、あるとき小学校1年生の男の子がバーッて好き勝手にドラムを叩いていて。本人はただ楽しく棒を振っていただけだと思うけど、その感じがすごく衝撃だったというか、「あの感じをこの曲に入れちゃおう」と思ったんです。なので、この曲に入ってるフレーズはその男の子のがむしゃらなドラムに近い(笑)。

──ラストの「FAR EAST DISCO」はまさにISLAND感というか、日本っぽさが感じられる仕上がりですね。ダンスミュージックとしてちゃんと時代の空気をまとっていて、音もいいし、いい締めくくりだなって。

玉屋2060% シンプルだけどシンプルじゃないというか、メロディとかには俺たちのクセが出てるんだけど、でも普遍的なものを、未来の民族音楽と未来のダンスミュージックを掛け合わせたような曲を作りたくて。なおかつ、そこに圧倒的な多幸感があるのが重要だと思っていました。構成的には一番シンプルで、Aメロとサビとアウトロしかないけど、Wiennersのもう1つの武器である多幸感や祝祭感が凝縮されていて、できたときには「これが最後っしょ」って感じで。ライブでやるときにはすげえハイライトになってほしいし、なるんじゃないかなって。

──うんうん……ライブやりたいですよねえ。

玉屋2060% やりたいですよ! 最初に話したように、ライブを想定して作ってたから、早く届けたいですね。

この状況だからこそ新しい価値観の提示を

──新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、ほとんどのライブハウスが営業できていない状況だけど、Wiennersとしてはこの事態をどのように捉えていますか?

玉屋2060% まだこの状況に追いつけてない感じではあるんですけど、1人ひとりが今までの常識を変えていかなきゃいけない時期だと思っています。逆に言えば、変えられたら面白いことができるチャンスかもしれない。この状況はもう一生付いて回る気がしていて、そこで新しい価値観を提示できるかどうかが大事になってくる気がしています。アルバムで伝えたいことは特にないんですけど、自分の中のテーマとしては“1つ”という概念があったんですよ。それは「UNITY」が象徴していることでもあるし、地球は1つだし、命も1つだし、つながるっていうのも1つだし。そういう“1つ”の意味をより深く考えさせられる状況だと思う。その中で新しい価値観をそれぞれ見出していけたらいいなって。あと、この前メンバーとLINEでやりとりしてたときにKOZOくんがいいことを言っていて。

KOZO(Dr)

KOZO 現状を回避するのではなく、これから先につながっていく新しいことを考えるべきだなって。3月の段階ではまだその場しのぎのアイデアでなんとかなったかもしれないけど、今の状況を見るとそれだとマズイ。なので現状回避じゃなくて、先を見据えて新しい何かを生み出せたらなって思います。

──一時的に回避してまた元に戻るんじゃなくて、次に進む必要がある。その意味でも「UNITY」や「起死回生の一発」のような曲が入ったアルバムがこのタイミングで出るっていうのは意味があることのように感じます。

KOZO サブスクがあってよかったなっていうのは思いますね。音源を届けることはできそうなので、こういう状況だからこそ、みんなに聴いてもらえたらうれしいです。

Wienners