ジャンルや世代を超えたアーティストが一堂に会する音楽イベント「SAMURAI SONIC vol.5」が10月8日に千葉・幕張メッセ国際展示場ホール4&5で開催される。
10月の開催に向け、音楽ナタリーではこのイベントを2回にわたり特集。ダイノジが登場した1回目(参照:「SAMURAI SONIC vol.5」インタビュー)に続き、特集2回目では-真天地開闢集団-ジグザグの3人にインタビューを行った。活動8年目を迎え、近年ではロックフェスに多数出演するなど、ヴィジュアル系というジャンルの枠を超えて活躍しているジグザグ。彼らが抱く現在のV系シーンや、自由度を増している自分たちの活動に対する思い、またそれぞれのライブ観について、「SAMURAI SONIC」への意気込みとともに語ってもらった。
さらに特集後半には、イベントに出演する雨のパレード、Wienners、瑛人、Q.I.S.、鈴木鈴木、DJダイノジ、THE BAWDIES、miwaからの「SAMURAI SONIC」に向けた意気込みコメント動画を掲載する。
取材・文 / 張江浩司
2023年10月8日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場ホール4&5
<出演者>
雨のパレード / Wienners / 瑛人 / Q.I.S. / -真天地開闢集団-ジグザグ / 鈴木鈴木 / DJダイノジ(公認アンバサダー) / THE BAWDIES / miwa / and more
どっちを捨てるか拾うかではなく、やりたいことをやってるだけ
──ジグザグの皆さんは近年、ロックフェスに多数出演されています。ロックフェスはヴィジュアル系バンドのジグザグにとってある意味、“異種格闘戦”になりますよね。
命 -mikoto-(Vo) 昔からヴィジュアル系というジャンルの中だけで活動している意識はなかったんですが、そのシーンの中でスタートした以上、以前はそういうバンドが集まるイベントにしか出られなかっただけというか。ライブハウスの店長とかには「ロックだろうがポップスだろうが、どんなイベントにも出るんで」と言ってたんですよ。ヴィジュアル系を観に来たお客さんじゃなくても盛り上げる自信は当時からあったので。
──ロックフェスに出ることで、本来やりたかった活動に近付いてきていると。
命 そうですね。僕らとしてはずっと出たかったです。ヴィジュアル系バンドにはどうしても偏見があったり、お客さんの毛色も違ったりするから、イベント側としては扱いづらいんだろうなとは思うんですよね。
──そもそもライブハウスの時点で、ヴィジュアル系が出演する場所としない場所がはっきり分かれていますよね。
命 そうそう、界隈がパキッと分かれちゃってるんで。それをバンドを始めてから知ったんです。「うわ、マジか」って。早くこの状況を脱却したいとずっと思ってました。
龍矢 -ryuya-(B) 本当にずっとそういう話をしてきたので、この広い音楽性をいろんな人に聴いてもらえるようになったのは、すごくうれしいです。
影丸 -kagemaru-(Dr) ヴィジュアル系のシーンにどっぷりでやってた頃からそうでしたけど、いろんなジャンルの曲を命様が作ってくれるので、どこでも戦えます。「これが俺たちだ!」って感じで。
命 なんか今は、ヴィジュアル系のシーン自体が狭まっちゃってる気がするんですよ。よりニッチになってる。ジグザグを始めた頃は、ゴールデンボンバーさんとかシドさんとかの人気が一般化して間口が広がっていたと思うんですけど、今はそれが一段落して排他的になったというか。
──ハードコア化というか、原理主義化というか。そういう風潮の中で振れ幅の大きい音楽性で活動すると、反発も大きかったんじゃないですか?
命 もう、それは避けては通れない(笑)。当時からMCとかで「音楽が好きでやってるんだ」と言ってたんですよね。どっちを捨てるか拾うかみたいな話じゃないし、やりたいことをやってるだけだから。僕自身は変化してないんだけど、活動の幅を広げる中で「裏切られた」と思ってるファンはいるかもしれないですね。“理想の彼氏”に抱く感情みたいな感じで。
──「私のジグザグはこんなことしない!」という。
命 僕らの知らないところでファンが作ったルールというか空気感があって、それがどうにも維持できなくなってる状態なので。ライブハウスからのし上がったようなバンドは、みんなこういう経験をしてますよね。
──The Beatlesの時代からあることだと思いますね。
命 ビートルズもそうなら、もう何も怖くないな(笑)。でもまあ、好きになった瞬間がその人にとってのピークですから。それから逸れると「違う!」ってなるのは仕方ないとは思いますけどね。
──でも、ジグザグはファンの期待を裏切ることすら楽しんでるようにも見えます。
命 どうなんだろう? もしかしたらそういう意識もあるのかもしれない。まあ、気にせずやってるっていうだけなんですよね。
ウケる確信があった「きちゅねのよめいり」
──自由なスタンスで活動するにあたって、ターニングポイントになったタイミングはありますか?
命 僕にとっては、メンバーの脱退ですかね。ジグザグの前から一緒にやってきたメンバーがいたんですけど、年齢的にバンドを続けていけなくなって。僕も「いよいよヤバいな」と思って、自分の意識、環境、バンドの方向性をガッと変えたんです。僕自身の変化と周りの変化とが重なって、その時期にはいろんな追い風が吹いたんですよね。それがあって、今に至るというか。やっぱり、あとがない人間は強いですよね。
龍矢 そのちょっとあとに、「きちゅねのよめいり」(2019年発表の音源集「ペサ・シェルヴェゼル」収録)をリリースしたんです。それもすごくターニングポイントになったと思いますね。「きちゅねのよめいり」は禊(ジグザグのライブの呼称)で初披露したときに初めてとは思えない盛り上がり方をして。
命 想定の3倍くらい盛り上がった(笑)。
龍矢 僕たち3人とも「これはキタぞ!」と思いました。その後もCDリリースしてないのに全部の禊でやりまくって、「きちゅねのバンド」と言われるくらいになりました。
命 それまでもふざけた曲とかポップな曲はあったんですけど、この曲はポンポンとお客さんにハマったというか。
龍矢 スタジオにこの曲を持ってきた時点で振付が決まってましたもんね?
命 「ここはこうやってやんねん!」って(笑)。絶対盛り上がるやろと思ってたら、やっぱりウケました。確信があるときは、うまくいくんですよ。
影丸 僕は本当についていってるだけなんで、ターニングポイントとか意識したことないんですよ。メンバーが辞めたときも、このバンドの力を信じてたので、命様とか龍ちゃんほど深刻に考えてなかったし。2人のほうがジグザグのことをよくわかってると思います。僕はドラムを叩くことしかできないので(笑)。
──影丸さんにとってはジグザグに加入したこと自体がターニングポイントなんですね。
影丸 本当にそうですね! 100人200人規模の会場でやってた頃から“いつか高みに上っていくオーラ”が命様からにじみ出てたんですよ。信じてよかったのひと言に尽きますね。
命 その期待にある程度応えられてよかったですよ。「全然期待外れやんか」っていう可能性もあったわけで。
影丸 いやいや、もう全部ジグザグに入ったおかげで毎日が充実しています!
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