Wiennersが5月13日にメジャー第1弾アルバム「BURST POP ISLAND」をリリースした。約10年前の2010年7月に発表された1stアルバム「CULT POP JAPAN」を連想させるタイトルからして、彼らの新たな始まりを感じさせる今作には、すでにライブでアンセム化している楽曲「ANIMALS」「UNITY」など全11曲が収録されている。
また「BURST POP ISLAND」は、彼らにとって2度目のメジャーデビュー作品でもある。音楽ナタリーでは、メンバー全員が「充実したアルバム」と口をそろえて語る本作の魅力や制作エピソードについて話を聞いた。
取材・文 / 金子厚武 ライブ写真撮影 / 星野健太
メジャーでやる意味を考えた1枚
──「BURST POP ISLAND」を聴かせていただいて、まず非常に抜けのいい作品に仕上がったなと感じました。お一人ずつ完成後の手応えを話していただけますか?
∴560∵(B, Cho) アルバムが形になる前の段階で、ライブに重きを置いていた時期があったんです。ライブ会場限定の作品を作ったり、それを持って全国ツアーで各地を回ったり。その現場の熱量を受けて「こういうライブをしたい」「こういうバンドでありたい」みたいなビジョンが、メンバー間でどんどんくっきりしてきたのかなと。全体を通してテンションの高いアルバムになっていて、ここ1、2年の活動が如実に反映された手応えはありますね。
アサミサエ(Vo, Key, Sampler) エネルギーが詰まったアルバムになったなっていうのは私も思うんですけど、ひと口に“元気いっぱい”だけじゃないっていうか、癒せるような部分とかもきちんと詰まったアルバムになったと思っていて、今の状況の中で必要とされる作品になったんじゃないかなって。Wiennersって刺激的なイメージがあると思うんですけど、人間臭さみたいな部分もすごくあって、そこも感覚的に伝わると思うので、たくさんの人に届いてほしいです。
KOZO(Dr) 「BURST POP ISLAND」というタイトルに落ち着くまではわりと難航したんですけど、このタイトルが浮かんだとき「これだ!」ってなって、すごくしっくり来たんですよね。∴560∵が言ったように明るくて楽しい部分の爆発力もあるし、サエが言ったように人懐っこさとか人間味もすごくある。両方の持ち味をちゃんと落とし込めたから、「こんな状況だからこそ」っていうのはホントその通りというか、みんなつらいと思うけど、そんな中でも楽しい気分になれるような作品になったんじゃないかなって。
玉屋2060%(Vo, G) 3人が言ってくれたことにプラスで言うと、今回メジャーでやる意味をみんなすごく考えたと思うんです。メジャーで多くの人が関わるってことは、それだけもっとたくさんの人に広めたいって気持ちをより強くしていかないとダメだと思って「どうやったらWiennersの音楽がもっとお客さんに伝わるのか?」とか「今まで伝わりづらかった部分はどこなのか?」っていうのを一歩踏み込んですごく考えるようになって。ライブのときにお客さんがどういう状態になっているのかとか、そこまでデザインして曲を作るようになったので、そういうマインドで、メジャーっていうフィールドでやれるっていうのは、自分たちにとってすごく大きなことで。
──なるほど。
玉屋2060% 俺は音楽的にめちゃめちゃ偏ってる人間だと思うんです。だから今回は俺が作る曲に対して「どこを削ったらいいのか」「どこがホントに伝えたい部分で、どこにスポットライトを当てればいいのか」みたいなことをメンバーとやり取りするようになって、それは今までなかったことなんです。この感覚が自分の中に染みこんでいったら、この先出す音源はもっともっと進化していくと思うんですよね。その意味ではとてもいいスタート地点だと思うし、そこまで到達したという意味ではゴールでもある。ここまでの過程まで含めて、充実したアルバムになったと思います。
ニューアンセムとなった「UNITY」
──ライブに重きを置いていた時期があったという話があったように、去年は夏前に「BATTLE AND UNITY TOUR」という2マンツアーが開催されました。このツアーで会場限定盤として販売された「BATTLE AND UNITY」収録の「UNITY」が今作にも収められていますよね。
玉屋2060% 「UNITY」こそ、お客さんと一緒に歌ってる画が想像できて、初めて曲が完成するものだったんですよね。あの曲を会場限定で出して、ツアーを回って、すごく反応がよかったのは自分の中で大きかったし自信になりました。ちゃんと届けるところまで考えて、構築して、伝えれば通じるんだなっていうのは昨年のツアーですごく実感できたし、それはその前の「SUPER THANKS,ULTRA JOY TOUR」から徐々に感じていたことで。それが1つ形になったというか、ニューアンセムみたいなものとして「UNITY」が作れて、今はもうライブで大事な曲になってますね。
──すでにシンガロングが起こる楽曲になってますもんね。
玉屋2060% ああいうシンプルな曲を出すことを恐れなくなったのも、去年1年ずっとライブをやってきた中で、フロアに対する信頼が上がったっていうのが大きくて。今までだったら「こういうシンプルな曲を出していいのかな?」って感じもあった。けどフロアを見たときに、ただシンプルなだけの絵面にはならないなって安心感があったんですよね。あとはこの4人で5年間やってきて、シンプルな曲でも4人で鳴らせば“ただのシンプル”にはならないのもわかってきて。シンプルに見えるのは悪いことではないけど、やっぱり怖いじゃないですか。裸を見せるみたいな感じっていうか。
──特にWiennersはいろんな要素が組み合わさってこそみたいなイメージもありますしね。
玉屋2060% そうなんですよね。でも、そこを恐れなくなったのは去年いろいろ積み重ねてきた結果なのかなって。
∴560∵ 「UNITY」みたいなシンプルなタイプの曲って、「ドリームビート」とか今までもあるにはあったんですけど、主軸にはしてこなかったというか、今まではポジション的に一歩引いたところにあったんです。でも「UNITY」をツアーでやったときに「ライブでこうなってほしい」と思っていた以上のレスポンスがあって。ホントに自信になったし、想像以上のものに仕上がった感じがあったんです。なので、こういうのも“Wiennersらしさ”としてもっと出していいんだなっていうのが確信に変わって、その感じは今回のアルバム全体に散りばめられていると思います。
──歌詞は玉屋さんとアサミさんの共作なんですよね。
玉屋2060% サビをアサミサエに歌ってもらう曲だったので、今後ずっとやっていく曲っていう意味でも、自分の歌うところの歌詞は本人に書いてもらいたいなって。「UNITY」はシンプルでわかりやすいテーマだっていうのもあって、サエさんに投げさせていただきました。
アサミサエ ライブのお客さんを見ていても思うんですけど、生きていく中で、いいことばっかりじゃないというか、「オー!」って盛り上がる背景がちゃんと見えるから、ライブってめっちゃいいなと思うんですよね。「みんな毎日戦ってるんだな」とか、そういう部分が見えたうえで書いてる歌詞というか、キレイだけじゃないのがいいなって。
──歌詞から引用すれば、「とち狂った世界」だし「ぶっ壊れた心」だけど、その上で「一つになれるかな」っていう。
アサミサエ そこの部分は玉屋さんの歌詞なんですけど、そこから派生して最終的に「一つになる」ってところを書いてるというか。具体的になりすぎないようにして、でも具体的すぎないからこそ、みんなに当てはまるものにしようって意識で書きましたね。
次のページ »
芯がぶれなければ振り切ってもいい