音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵

確かな夜明けを告げるメジャー1stアルバム

植田真梨恵がメジャー1stフルアルバム「はなしはそれからだ」を2月25日にリリースする。今作は2つのシングル曲「彼に守ってほしい10のこと」「ザクロの実」と、11の新曲から成る13曲構成。約8年におよぶインディーズ活動を経てメジャーにフィールドを移した彼女は、今作で何を伝えようとしたのか。それぞれの楽曲に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 石川信介

最後まで初体験だった2014年

──前回のインタビュー(参照:植田真梨恵「ザクロの実」インタビュー)からは3カ月ほどですが、その間の活動で何か印象に残っていることはありますか?

毎度お邪魔してます(笑)。そうですね、昨年末に「COUNTDOWN JAPAN」に初めて出させていただきまして。大みそかの出演だったんですけど、初めての経験ばかりですごく勉強になったし、面白かったですね。

──具体的に言うとどんなところが?

植田真梨恵

幕張メッセのあれだけ大きなステージで歌うのも初めてだったし、フェス特有のお祭り感の中で歌うのも初めてだったし。2014年はメジャーデビューをはじめ初体験のことが多かったんですけど、いっぱいいろんなことを経験したなと思いながら終わりました。

──最後の最後まで初めての経験をしたと。

はい。しかも会場にはお世話になっているレコード会社の人もいっぱいいたから、みんなでワーッてハッピーな雰囲気の中で「あけましておめでとうございます!」って会社の人たちと最初に挨拶して。それでまたすごく気合いが入って、2015年もがんばろうって思いました。

奇をてらわないまっすぐなアルバム

──2015年最初のリリースとなるメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」を聴きまして、植田さんのいろいろな表情が見えつつ、でも1本芯は通っていて全体的にポジティブな印象を受けました。

ありがとうございます。デビューのときからずっと言っているんですけど、奇をてらわずにただまっすぐにいいものを作りたいと思っていて、そういう意味で満足のいくものができたかなと思います。

──シングルのカップリングが1曲も入ってないのはあえてですか? それによってよりいろいろな表情を提示できていると思ったのですが。

植田真梨恵

そうですね、シングルを作ってる段階からアルバムにカップリングは入れないという気持ちでいました。なのでアルバムもそうだし、シングル1枚1枚もエネルギーを注ぎ込みながら作ることができたと思います。

──メジャーでは初めてのアルバムですが、インディーズの頃と意識の違いはありましたか?

前作の「センチメンタルなリズム」のときは「曲を聴かせなきゃ!」っていう気持ちが強かったんですけど、今回は1曲1曲が皆さんのためになればいいなと思いながら作っていきましたね。前回は初めてのフルアルバムだったから気負っていた部分もあったと思うんですが。

──自己主張をするのではなく、聴いた人の気持ちを主体に考えて。

うん、より聴いてくれる人のことを考えて作りました。あと、それぞれの曲はもちろんなんですけど、アルバム1枚を通して作品になっていることも意識するようになりましたね。

がんばりつつ、がんばりすぎないように

──では具体的に各曲について伺えればと思うんですが、1曲目の「Intro」から、映画のオープニングのような、これから物語が始まるんだっていうワクワク感がありました。波の音が入っていたので、海辺の街で主人公が星空を見上げているような。

なるほどなるほど。私としては日常生活を送っているたくさんの人たちが星空を見上げているイメージですね。部屋の中からだったり、街を歩きながらだったり。

──あ、それでいろんな人の声が入っているんですね。

はい。最後の「さよならのかわりに記憶を消した」のアレンジもしてくれたjoe daisqueくんにトラックを作ってもらいました。アルバムの最初から最後までがひとつながりになるように。

──続く2曲目の「FRIDAY」は直球のロックンロールですよね。これがメジャー1stシングルだったとしてもすんなり受け入れられるくらいキャッチーな曲だと思いました。

おお!

──「いよいよ飛び立つときね」「現れた まだ見たことない世界」といったフレーズもあって、力強いメッセージが込められていて。

確かにメジャーデビューが決まったタイミングで、「彼に守ってほしい10のこと」を作った直後くらいにできました。メロディと歌詞が強くて、歌っても楽しい曲を作りたくて。自分ではアルバムのリード曲にしたいとずっと思っていて、この曲を軸にアルバムを作っていきましたね。

──「10のこと」と同じ時期ということは、メジャーが決まっての決意表明という部分もあるんでしょうか?

もちろんそういった気合いもあるんですが……。私、けっこう神経質だと思ってたんですけど、最近になって意外と楽観的に物事を考えてる人間だったって気付いたんですよ。

──へえ。

植田真梨恵

だからみんなそれぞれの毎日の中で、勝負の前とかに聴いてがんばろうって思ってくれたらうれしいっていう気持ちと、でもがんばりすぎて空回りにならないように、楽しみながらやってほしいという気持ちを込めて書きました。

──楽観的っていう話でいうと、打ち込みで作られた「hanamoge」もその雰囲気が出てますよね。ふっと肩の力が抜けるようなサウンドで、「出来ないときはできない」って言ってるし(笑)。

そうなんです(笑)。私、自分で言ったことはちゃんと守ろうと常々思っていて、友達とも言った言わないでたまにケンカするんですけど、でもそもそもの自分は無責任な人なのかもって思いました。

──そうじゃなきゃ「出来ないときはできない」とは歌わない、と(笑)。「hanamoge」もわりと最近書いた曲ですか?

それがね、2009年にそもそもの歌詞を書いているんです。

──じゃあ、その頃からすでにそういう気質が。

もともと楽観的なんですよ(笑)。それに改めて気付きました。

──タイトルはハナモゲラからなんですよね? 日本語なのに外国語に聞こえる言葉遊びの。

はい。私が詞先で書いてた時期に、当時にしては珍しくメロ先で適当な仮歌を入れてたんですよ。「♪ふんふんふーん」みたいな。それで仮タイトルを「ハナモゲ」にしていて。それから何回かタイトルを考えようとしたんですけど、それに勝るワードが出てこなくて、結局そのままタイトルになりました。この曲はずっと聴ける1曲だと思っていて、この1曲のためにアルバムを買ってもいいんじゃないかなと思うくらい好きな曲です。

1stアルバム「はなしはそれからだ」 / 2015年2月25日発売 / GIZA studio
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / GZCA-5271
通常盤 [CD] / 3240円 / GZCA-5272
CD収録曲
  1. Intro
  2. FRIDAY
  3. 彼に守ってほしい10のこと
  4. hanamoge
  5. 支配者
  6. 昔の話
  7. a girl
  8. プリーズプリーズ
  9. ペースト
  10. ザクロの実
  11. 泣いてない
  12. カルカテレパシー
  13. さよならのかわりに記憶を消した
初回限定盤DVD収録内容

植田真梨恵 PV collection -2010 / 2014-

  • 未完成品(インディーズ3rdアルバム「葬るリキッドルーム」より)
  • ミルキー(未公開映像)
  • センチメンタリズム(インディーズ4thアルバム「センチメンタルなリズム」より)
  • 心と体(インディーズ1st シングル「心/S/サ」より)
  • 彼に守ってほしい10のこと(メジャー1stシングル)
  • ザクロの実(メジャー2ndシングル)
植田真梨恵LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」
2015年3月15日(日)東京都 LIQUIDROOM
2015年3月21日(土・祝)愛知県 池下CLUB UPSET
2015年3月28日(土)福岡県 BEAT STATION
2015年4月3日(金)大阪府 BIGCAT
植田真梨恵(ウエダマリエ)

植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。同年11月に2ndシングル「ザクロの実」を発表し、2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」をリリース。