音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵
確かな夜明けを告げるメジャー1stアルバム
何かのせいにしない人間でありたい
──先ほど「FRIDAY」で「勝負の前に聴いてがんばろうって思ってくれたら」という話がありましたが、「支配者」もそうじゃないかと思っていて。この曲も前向きなメッセージが詰まった応援ソングですよね。
ほんとにその2曲がアルバムを引っ張っていってくれますね。聴いた人たちのがんばる力になりますようにって思いながら書きました。
──特に「この世界で私を動かすのは私だけ」のラインとか、植田さんの強いメッセージが表れているなと。
何かのせいにしないで、自分が今いる環境の中でがんばれる人間でありたいと常々思っているんですよね。何かしらのせいにするのは簡単じゃないですか。みんなそれぞれの事情があるのはわかるんですけど、その上で今をがんばってほしいなと思いながら作りました。それは私自身に対してもそうなんですけどね。
──他人のせいにはしないというか。
そうですね。何か分岐点があったとき、どっちを選んでも一緒だと思うんですよ。Aを選んだらBはないわけだし、Bを選んだらAはないしっていうのは全部のものに対して共通だと思っていて。自己責任っていうと言葉は重いけど、どっちを選んでも一緒だからがんばろうという感じですね。
──ちなみに「FRIDAY」と「支配者」と同時期に制作してメジャーデビュー曲としてリリースした「彼に守ってほしい10のこと」ですが、発表から半年ほど経って植田さんの中で曲に対するアプローチが変わった部分はありますか?
歌っていくうちに気付いたんですけど、私が一番強い意思を持って歌うべき曲だと思ってるんですよ、今現在。1つ自分が立つべき場所を決めて、地面にガッと杭を刺して、もうそこから何があっても動きません!って宣言してるイメージというか。なるべくポップなものを作ろうと思っていたけど、そもそも持っているメッセージがすごくロックなものだったんだなって思いました。
──恋愛の曲に見えるけど、実は自分の譲れない信念を歌っていたということ?
そうですね。だから私自身がブレているときは歌えない曲だと思いました。
2つの意味がある「a girl」
──アルバムは中盤の「昔の話」でガラッと雰囲気が変わって。アコースティックギターのアルペジオの響きや、深くかかったリバーブが胸を締め付けるような郷愁感を誘いますね。
とにかくいろんな曲を楽しんでもらいたいと思って、アルバムの中では一番最後に書いた曲ですね。
──全体のバランスを見ながら作ったんですね。いい意味で気張らずに聴けます。
まさにそうなればいいなと思っていて。がんばらないと聴けないアルバムは嫌だったので。
──そして「a girl」がアルバムの中ですごく異彩を放っていると感じました。
そうだと思います。私としてはこのアルバムは、こっちの見方から見るとこうだけど、別の角度からだと全然違うように見えるっていうことを要素として入れたいと思っていて。この曲のタイトルの「たった1人の女の子」っていう言葉には、両面の意味があると思うんです。「独りぼっちの寂しい女の子」っていう意味にも、「たった1人しかいない尊ぶべき女の子」っていう意味にもとれるっていう。
──先ほどの「FRIDAY」や「支配者」にしても、恋愛の曲にしてもアルバムを通して全体的にポジティブなムードがあると思うんですが、この曲に関しては出口が見えないというか、混沌とした雰囲気が伝わってきて。アレンジでもダイナミックなストリングスが入っていたり、不穏なムードを醸し出すピアノが入っていたり。
この曲はアルバムの中で一番ミュージカルっぽいというか。最も演じる感覚が強くてすごくパワーが必要な曲ですね。この曲について言葉で説明するのが難しいんですけど……とにかくこれを聴いて寂しい気持ちとかつらくてどうしようもない気持ちとかを、少しでも紛らわせてくれたらいいなとは思っています。
──なるほど、ほかの曲のように「がんばれ」って背中を押したりはしていないけど、この曲も植田さんなりの応援歌なんですね。たしかにこの歌を聴いた人が「寂しいのは自分だけじゃないんだ」と感じて、それが力になるかもしれないですね。
まさに今寂しさを抱えている人に、「いや、あなたはたった1人しかいないんだよ」と言いたくて。それが伝わればいいと思います。
植田真梨恵史上最もストレートなラブソング
──アルバム後半の楽曲は恋愛の要素が多いと感じたんですが、特に「プリーズプリーズ」はストレートなラブソングで。こんなにまっすぐなラブソングって植田さんにしては珍しくないですか?
珍しいでしょ? 私ホントは素直なんですよ(笑)。
──あははは(笑)。
この曲自体は何年も前に書いてたんですけど、ようやく今歌えるようになってきたかなと思って。ここまで言いたいことはなかなか言えないんですけどね。
──今までは気恥ずかしさがあった?
ただただスイートになっちゃうイメージがあったんですけど、今ならそうじゃない表現ができるかなと思って。スイートスイートしすぎないように淡々と歌ったんですよ。普通の日々の中で思っていることがリアルに浮かんでくるように……でも歌詞だけを読むと恥ずかしいですね(笑)。
──(笑)。次の「ペースト」なんですけど、この曲実は5年くらい前に聴いたことがあって。
うそ!?
──昔レコード会社の方からデモCDをいただいたんですよ。「イチオシの新人がいます!」って。
ガーン……。よく覚えてましたね。
──間奏の踏切の音が印象的だったので覚えてて。
うれしいです。ずっと発表のタイミングを見計らっていたんですけど、今回アルバムの雰囲気に合うと思って。でも、あの踏切もうないんですよ。下北沢の有名な開かずの踏切で録音したので。
──そっか、下北沢の駅は地下化されましたもんね。制作時からだいぶ時が経ちましたけど、今回収録するにあたって変えた部分はあるんですか?
歌い直しましたね。もっとペースト状感というか、何も考えてない感を出したくて。
──あえて感情を込めないということでしょうか?
はい。日常生活の中でもカフェでお茶してたり電車に乗ってたりしていてボーッとしているときってあると思うんですけど、その感じを出したくて。それで、サビでワーッて感情が爆発するイメージですね。
次のページ » 初のフェードアウト曲
- 1stアルバム「はなしはそれからだ」 / 2015年2月25日発売 / GIZA studio
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / GZCA-5271
- 通常盤 [CD] / 3240円 / GZCA-5272
CD収録曲
- Intro
- FRIDAY
- 彼に守ってほしい10のこと
- hanamoge
- 支配者
- 昔の話
- a girl
- プリーズプリーズ
- ペースト
- ザクロの実
- 泣いてない
- カルカテレパシー
- さよならのかわりに記憶を消した
初回限定盤DVD収録内容
植田真梨恵 PV collection -2010 / 2014-
- 未完成品(インディーズ3rdアルバム「葬るリキッドルーム」より)
- ミルキー(未公開映像)
- センチメンタリズム(インディーズ4thアルバム「センチメンタルなリズム」より)
- 心と体(インディーズ1st シングル「心/S/サ」より)
- 彼に守ってほしい10のこと(メジャー1stシングル)
- ザクロの実(メジャー2ndシングル)
植田真梨恵LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」
- 2015年3月15日(日)東京都 LIQUIDROOM
- 2015年3月21日(土・祝)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2015年3月28日(土)福岡県 BEAT STATION
- 2015年4月3日(金)大阪府 BIGCAT
植田真梨恵(ウエダマリエ)
1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。同年11月に2ndシングル「ザクロの実」を発表し、2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」をリリース。