音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵
確かな夜明けを告げるメジャー1stアルバム
初のフェードアウト曲
──「ザクロの実」を挟みつつの「泣いてない」ですが、これは歌詞が全部平仮名なのが印象的ですね。遊び心が散りばめられていて。
けっこう怖い恋愛の歌なんですよね。「血と血が」って漢字で書かれると嫌だなと思って、平仮名でごまかしました(笑)。
──歌詞はわりと重めですけど、疾走感のあるサウンドだから重さを感じないのかなと。
うんうん。ちょっとクレイジーな恋愛観を歌ってみようと思って。アコーディオンソロが入っているのでライブでどうしようかなと思っているんですが(笑)、演るのが楽しみな1曲です。
──続く「カルカテレパシー」ですが、これも前向きで明るい感じがあって、思わず口ずさみたくなるような1曲ですね。
はい、植田真梨恵なりのJ-POPの曲を書きたくて作りました。ほんとに歌ってて楽しい曲ですね。
──そして今回、初めてフェードアウトで終わる曲に挑戦したと伺いました。
そうなんです、曲がいつ終わったかわからないから私フェードアウトが好きじゃなかったんです。でも「これはフェードアウト曲だわ!」って思って、やってみたらすごくいい感じになって。
──「これはフェードアウトだわ!」と思った理由は?
バンドメンバーと“いっせーのーせ”で音を鳴らしてアレンジを決めていくようになってからなんですけど、みんなで鳴らしているものを録るんだっていう意識が強くなって。それから抵抗がなくなりましたね。
──セッションしてる感じがしますよね。スタジオでみんなでワイワイやってる絵が目に浮かびます。
うんうん、そういうみんなで鳴らしている雰囲気をアルバムの最後のほうに入れたいと思いました。
──そして最後が「さよならのかわりに記憶を消した」ですけど、これは映画「エターナル・サンシャイン」をモチーフにしてるんですよね? 別れた恋人が自分との思い出を消すために記憶除去手術を受けたことを知り、主人公も同じ手術を受けるという。
そうですね、ほとんど映画のことしか歌ってなくて、映画の主人公の気持ちで曲を書いたものです。このアルバムの中では一番古い、2008年に書いてる曲で、映画が好きすぎて作ってしまいました。
──グランドピアノの音色が非常に切ない雰囲気で。
グランドピアノ1本で事足りる感じなんですけど、そこにもうちょっと……切ない雰囲気だけじゃない、不思議な雰囲気を出したくて。絶え間なく波が押し寄せてきて、遠く水平線から宇宙につながっていくようなイメージで、joe daisqueくんにアレンジをお願いしました。
──確かに波の音が象徴的に入ってますよね。
はい。そこから1曲目の「Intro」にループするイメージですね。
初めてお墓に入れられる作品
──アルバムには新旧の楽曲が収録されていますが、選曲の基準というか、コンセプトはあったんですか?
1つ大きなコンセプトとしては、ずっと言ってるんですけど、「歌が真ん中にある」というのがあって。そして歌ってみると楽しかったり、元気になったり。そんなに肩に力は入ってないけど、ちょっと前向きになるようなものにしたいと思いながら作っていきました。あとはテーマとしては夜から朝とか、冬から春とかの移り変わりを表現したり、ものの見方ひとつで簡単に変わってしまうことが盛り込めればいいと思っていて。
──アーティスト写真も左側が夜のイメージで、そこから右に向かって徐々に朝になっていく様子が表現されてますね。
はい、そこは意識して。私自身、朝も夜も両方好きなんですけど、今は朝から夜ではなくて、夜から朝のほうに意識が向いているというか。このアルバムを聴いてるうちにちょっとでもプラスになる変化があればいいな、少しでも聴いてる人に光が射すといいなと思っています。
──ジャケットで手にしているオブジェは植田さんが手作りしたとか。
部屋の中から見える景色っていうのをジャケットにしたくて。マンションみたいにどこにでもあるような間取りの部屋にいろんな人が住んでいて、窓越しに見える宇宙を想像している、というイメージですね。
──「Intro」のときに「たくさんの人が星空を見上げている」と言っていましたが、その中の1人を表現している?
そうですそうです。
──そういうアートワークも含めて、改めて振り返ってどんな作品になったと思いますか?
これまでミニアルバムも含めて何枚も作ってきたんですけど、私としては初めてのオリジナルアルバムという気持ちなんです。どの曲もセルフディレクションで最後までやらせてもらってるからだと思うんですけど、思いのほか飽きることなくずっと聴いていられるし(笑)、初めてお墓に入れられる作品になったと思います。ほんとにひねりなしのいいアルバムになりました。
──前回インタビューをさせていただいたときに「いいアルバムを作りたい」って言っていましたが、できましたね。
できましたよー。
──では今後の目標は?
うーん、素敵なラブソングを作って届けたいですね。今のところ構想はないんですが(笑)、より自分自身と向き合って、余計なフィルターを通さない曲をリリースしていけたらと思っています。
──でも、「まずはこのアルバムをたくさんの人に聴いてほしい」という感じですよね、きっと?
そうですね。“はなしはそれからだ”ですね(笑)。
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- 1stアルバム「はなしはそれからだ」 / 2015年2月25日発売 / GIZA studio
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / GZCA-5271
- 通常盤 [CD] / 3240円 / GZCA-5272
CD収録曲
- Intro
- FRIDAY
- 彼に守ってほしい10のこと
- hanamoge
- 支配者
- 昔の話
- a girl
- プリーズプリーズ
- ペースト
- ザクロの実
- 泣いてない
- カルカテレパシー
- さよならのかわりに記憶を消した
初回限定盤DVD収録内容
植田真梨恵 PV collection -2010 / 2014-
- 未完成品(インディーズ3rdアルバム「葬るリキッドルーム」より)
- ミルキー(未公開映像)
- センチメンタリズム(インディーズ4thアルバム「センチメンタルなリズム」より)
- 心と体(インディーズ1st シングル「心/S/サ」より)
- 彼に守ってほしい10のこと(メジャー1stシングル)
- ザクロの実(メジャー2ndシングル)
植田真梨恵LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」
- 2015年3月15日(日)東京都 LIQUIDROOM
- 2015年3月21日(土・祝)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2015年3月28日(土)福岡県 BEAT STATION
- 2015年4月3日(金)大阪府 BIGCAT
植田真梨恵(ウエダマリエ)
1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。同年11月に2ndシングル「ザクロの実」を発表し、2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」をリリース。