音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵
闇を歌って光を照らす「ザクロの実」
今年8月にメジャーデビューを果たした植田真梨恵が、11月19日に2ndシングル「ザクロの実」をリリースする。ギターをかき鳴らす姿が印象的だった前作から一転、「ザクロの実」はピアノの旋律が印象的な切ないポップチューンだ。彼女はこの2ndシングルで何を表現したかったのか。メジャーデビュー後の変化とともに話を聞いた。
取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 須田卓馬
メジャーデビュー後の変化
──「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューしてから3カ月ほど経ちましたが、実感は湧きました?
うーん……ないです(笑)。
──そうなんですか? かなり街中で曲が流れてましたけど。
みたいですね。友達にも「コンビニでもカラオケでも、居酒屋でもめっちゃ流れてるで」ってかなり言われたんですが、偶然なことに私、1回も遭遇してないんです。あ、でも渋谷で大きな看板は見ましたけど。だからあまり実感としてはないんですよね。
──実際にメジャーデビューしてみて変わったと思うことはあまりない?
うーん、ありがたいことに生活が慌ただしくなったので、常に次の日の仕事の段取りを考えるようにはなりました。あとは、イベントとかで地元の福岡に行かせてもらえる機会が増えたので、親とよく会うようになりました(笑)。
──前回のインタビューで、「10のこと」はメジャーを意識して制作したと言っていましたが、それに対する周囲の反応は気になったりしませんか?(参照:植田真梨恵「彼に守ってほしい10のこと」インタビュー)
なりますね。だからTwitterとかでエゴサーチしてめっちゃ見ました。「あの曲何回も流れててうざいわ」って書かれたりしていて、「うざがられてるなー」って思ったり(笑)。
──賛成意見もある中で、悪い意見のほうに目がいってしまう?
インディーズの頃の私だったら、「いいね」って思う人だけ聴いてくれればいいというスタンスだったので、反対意見から目を背けていたと思うんです。でも今は、よくも悪くも私の歌がどれだけの人に届いているのか、ということのほうが気になるので。最初はそういう意見にヘコんだりもしたんですけど、少しでも多くの人に私の歌が届いているのはいいことだと今は思えるようになりました。
──9月には大阪と東京でメジャーデビュー後初のワンマンライブがありましたが、実際にお客さんを目の前にしてみていかがでした?(参照:植田真梨恵、東京ワンマンで2ndシングル披露)
とっても楽しかったです。自分が楽しいだけではなくてパワーをあげたいライブとして考えていたんですけど、両日ともお客さんの熱気がすごくて。だから冒頭から楽しくなりすぎちゃいそうで怖くて、平静を保ちながらプレイして、最後に気持ちを爆発させたという感じでしたね。
──仁王立ちでギターをかき鳴らしてる姿が目に焼き付いています(笑)。
ほんとですか? お客さんのパワーがすごくて、倒れないように必死だったんですよ。みんな手をあげて歌ってくれて、すごく喜んでくれている感じが伝わってきたので。
ピアノ編成ありきでできた曲
──ライブで2ndシングル「ザクロの実」をいち早く披露していましたよね。“ザクロ”っていう言葉は、どういうイメージで付けたんでしょう?
曲調のイメージから出てきた言葉がたまたまザクロだったので、閃きというか。ふと「ザクロの実」というフレーズが出てきて、その言葉から始まるストーリーを考えて、私の中に根付いている恋愛観みたいなものを描いていった感じですね。
──そうなんですね。“ザクロ”っていう語感もいいし、ピアノの旋律やメロディもすごくきれいな曲だと思いました。
ありがとうございます。この曲を作った2011年頃はちょうどピアノとのライブが増えていた時期で、その編成でやって映える曲がほしいと思っていたんです。なので、ピアノがメインのポップな曲を書きたくて。「サファイア!」っていう曲もこの時期に書いているんですけど、姉妹的なイメージで、「ザクロの実」は切ないほうの曲として。
──もともとピアノありきで考えて作られた曲だったんですね。ギターレスですが、それも最初から意図して?
そもそもピアノでデモを作っていたので、「ギターを入れてもいいけど、いるかな?」っていう感じで。ピアノとアコギでライブをやっているうちにかなりできあがっていたというか、「あるべき音があるべきところにある」という感じになっていたので、アレンジも難航することなく。ドラムとベースでちょっと肉付けをしたっていうイメージですね。
──シンプルなアレンジですけど、逆に植田さんの声が映えるというか。
入れようと思ったら今の時代いくらでも音を入れられるので、なるべく生音でシンプルにいけたらカッコいいなと思ってますね。
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収録曲
- ザクロの実
- ハイリゲンシュタットの遺書
- 朝焼けの番人
- ザクロの実 -off vo.-
- ハイリゲンシュタットの遺書 -off vo.-
植田真梨恵(ウエダマリエ)
1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月6日にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。11月19日に2ndシングル「ザクロの実」をリリース。2015年1月に大阪と東京でピアノワンマンツアー「植田真梨恵LIVE OF LAZWARD PIANO -青い廃墟-」を実施する。