ナタリー PowerPush - TOTALFAT
メジャー2作目でさらなる進化 パンクの枠を超えた名盤完成
TOTALFATのニューアルバム「DAMN HERO」がリリースされた。メジャーからの1作目となった前作「OVER DRIVE」から1年ぶりに発表される本作。井上ジョーとのコラボレーションや初の日本語詞で話題を集めた先行シングル「World of Glory with JOE INOUE」を始め、パンクやメロコアの枠では収まらないバラエティに富んだロックアルバムに仕上がっている。
ナタリーではメンバー4人にインタビューを実施。プロデューサーに再び岡野ハジメを選んだ理由やアルバム制作時のエピソード、さらには井上ジョーとのコラボレーションについてなど、興味深い話をたっぷり訊いた。
取材・文/西廣智一 撮影/中西求
「OVER DRIVE」をさらに進化させてもう一回戦おう
──今回のアルバム「DAMN HERO」を制作する前に、どういう内容にしようと話し合いましたか?
Shun(Vo, B) 今回は事前に話し合って方向性をきっちり決めるというよりは、前作「OVER DRIVE」のツアーをまわりながらメンバーそれぞれが感じたことを消化して作っていった感じかな。ツアーをしながら「『OVER DRIVE』にもっとこういうメロディの曲があったらいいな」「こういうビートの曲、こういう展開の曲、こうやって暴れられる曲があったらいいのに」って、今のTOTALFATに足りないものがどんどん見えてきて。そうしたら自然にイメージができていって、それぞれが個人で作ったデモを持ち寄ったんです。だから、「OVER DRIVE」をさらに進化させてもう一回戦おうっていうイメージが強かったですね。
──これまでもライブをしながらアルバムを作っていく中で「もっとこういう曲があったらいいのに」と感じることはあったとは思いますが、今回は特に強く感じたということでしょうか?
Jose(Vo, G) そうですね。去年はいろんなフェスにも出させてもらったんですけど、いろんなステージに立つことで「ああ、ここだったらこういう曲のほうが自分らに合ってるな」「フェスだったらこんな曲をやりたいな」っていうイメージが増えて。今までライブハウスでやってたときに感じたこととは違う視点から観ることが多かったですね。
Shun 例えば、ライブハウスにたくさんお客さんが入るようになったら地獄のような灼熱の中でやりたい曲が欲しくなるし、出演するフェスのステージが去年よりも大きくなったらそこに合う曲がやりたいし。
Bunta(Dr) あと、フェスのトリを務めたバンドのライブをステージの袖から観させてもらったときに、「すげーっ、ここでこういう曲をやったら、自分たちも盛り上がるんじゃないかな」って思ったりね。
Shun 「ここでこういう音を飛ばしたいな」ってイメージが沸いてくるし。Buntaは特にそういう意識が強くて、こういうビートで飛ばしたいっていうイメージを明確に持ってたから、「DAMN HERO」ではビートをかなり強く主張してると思います。
以前よりもやりたい音楽を曲に落とし込める環境ができた
──今回のアルバムって楽曲の幅がすごく広がっていて、最初に聴き終えたときに「あ、ここまで振り切っちゃうんだ」って思いました。でも、いろんなタイプの曲がありつつも、どこを取ってもTOTALFATの個性が出ているなと。
Shun ツアー中に書いてたのが従来のTOTALFATらしいパンキッシュな曲ばかりで、ツアーが終わる頃になると「もっと遊んでもいいかな」とか「もっとギターがいかつい曲があったほうがいいでしょ」とか「もっとデカイ会場でやれるスケール感の大きい曲をやろうよ」っていうふうに、TOTALFATのレンジを外側にどんどん広げていく作業を重点的にやるようになったんです。デモの段階だと「この曲大丈夫かな?」って思うんだけど、本番のレコーディングでいいものが録れると、やっぱりこの攻めの姿勢は大事だなと思って。すなわちそれが、なんでもありが許されるバンドって部分につながってるのかな。
──10年のキャリアに裏打ちされたものがあるからこそ、どんなスタイルでも自分たちらしさを出せるんでしょうか。
Shun うん。あと、これまでの10年間もメロコアに特化した曲はもちろん多かったんですけど、やっぱりメンバーそれぞれバックボーンも違うし、みんな自分の中でそのときそのときで良いと思える音楽があって、それを自分たちのサウンドに取り込もうとするのはずっとやってきた。だから今回は、その濃度のバランス取りを重点的にやったというのもあります。
Bunta 昔の俺らさ、曲の中でシャウトしまくってた時代もあったじゃん(笑)。その頃から本当にやりたいことをやってきたけど、今もラップをやってみたり、よりメタルな曲をやったりしてる。でも、エンジニアやプロデューサー、いろんな人の力を借りて、以前よりも俺たちのやりたい音楽を曲に落とし込める環境ができたっていうのはすごくデカイし、今回の作品に大きな影響を与えてるんじゃないかなって気がします。
その音楽へのリスペクトと愛する気持ちでやっている
──今回のアルバムでもうひとつ思ったのが、音楽を好きな人が思わずニヤリとしちゃうような、海外のアーティストの楽曲をイメージさせるようなアレンジやフレーズがところどころに入ってることなんです。
Shun ギターのフレーズには特にそういう要素がたくさん詰まってますね。
──4曲目「Ball and Chain」のギターソロなんてまさに。
Kuboty(G) もう、オジー・オズボーン(の「Crazy Train」)っスね。聴いてわかった奴にはニヤッとしてほしいし、知らない人にも響けばいいなと思うし。
──唐突ではなくて、とても自然な形でフィーチャーされてるのもいいですよね。
Shun ちょっと「ウォーリーを探せ」的な要素があったり(笑)。
Kuboty でも、もっと根本の部分ではただやりたくてやってるだけっていうのもあって。その音楽へのリスペクトと愛する気持ちでやらせていただいてます。
──この曲からネタ元にたどり着いて、またそこからTOTALFATのルーツを探っていける楽しみもあると。
Kuboty 4人それぞれいろんなバックグラウンドがあるので、そういう聴き方をしていただけるとうれしいですね。
CD収録曲
- Livin' for The Future
- Sky of California
- Across The Chance
- Ball and Chain
- World of Glory with JOE INOUE (DAMN HERO Ver.)
- Damage
- Highway 3
- Sweet
- Dance On, My Friends
- Longest Dreamer
- Jack is a Punk Rocker
- Revelation
- See You Later, Take Care
- All for You
DVD収録曲
- World of Glory with JOE INOUE (Music Clip)
- Summer Frequence (Music Clip)
- Overdrive (Music Clip)
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、 Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」といった夏フェスに出演し、注目を集めた。2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。