音楽ナタリー PowerPush - the telephones

6枚のアルバムでたどる10年

今年5月で結成10周年を迎えるthe telephonesが、3月18日にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースした。ナタリーではこれを記念して、彼らの発表した6枚のオリジナルフルアルバムを軸に10年間を振り返るインタビューを実施。各アルバムにゆかりのある人物からのコメントを参照しながら、結成からこれまでをたどった。

取材 / 大山卓也 文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介

2005年5月21日 結成

──このインタビューではthe telephonesの結成から今に至るまでのヒストリーをたどっていければと思っています。オフィシャルサイトによると、結成日が2005年5月21日。

the telephones

松本誠治(Dr) 5月21日は現メンバーでの初ライブの日なんですよ。

石毛輝(Vo, G, Syn, Programming) 当時メンバーは21歳と22歳だったのかな。若かったなー(笑)。

──結成当初、the telephonesはどんな音楽をやってたんですか?

岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek) インストすげーやってたよね。石毛は最初タンバリン持ってたし。

石毛 うん。1曲目はいつもインストナンバーだったね。まあインストとタンバリンがどうつながるかわかんないんだけど(笑)。

──ギター弾きながらタンバリンは叩けないですよね?

石毛 ギターはファズとディレイをかけてブワーッとノイズだけ鳴らし続けて、タンバリンを叩いてましたね。

松本 今考えるとその音像の中でタンバリン聞こえんのかって感じ。

長島涼平(B) まあ絵的なパンチ力なんすよね。

石毛 そうそう。At The Drive-Inのセドリック・ビクスラー・ザヴァラがマラカス鳴らしてたのを見て、カッコいいなと思ったんですよね。最初の頃はただカッコいいミュージシャンの真似をするみたいな感覚だった気がします。

1stアルバム「JAPAN」(2008年1月23日発売)

長島 なんとなくやりたい音楽が見えてきたのって、初ライブから1年以上経ってからだよね?

石毛 そうだね。ポストロック寄りのものをやりたいのか、ディスコパンクみたいなものをやりたいのかどっちなんだ?みたいな感じだったんですけど、ディスコ調の「HABANERO」を作ったときに「これだ!」っていう感覚になって。

──そこからは快進撃の始まりですね。

長島 そんなことない(笑)。CDを出すまではライブにお客さんを100人集めたとか、そういうキャリアがまったくなかったんですよ。その頃のお客さんの数なんて10人来たらいいほうで。

石毛 でも対バン受けはよかったような気がする。対バン相手がMCで「the telephonesで踊っちまったよー」みたいなこと言い出したりして。その頃に下北沢ERAでやったライブを1stアルバム「JAPAN」をプロデュースしてくれた白根(賢一)さんが観に来てくれたんですけど、俺らは白根さんの顔を知らなかったからどんな人なんだろうと思ってて。そしたら変な外国人とビール飲んで「ウェーイ!」ってやってる人が白根さんっぽかったんですよ。でもプロデューサーがあんなにノリノリになるはずがないと思って。

長島 俺らはその白根さんっぽい人にライブのあとに「白根さんですか?」って聞いてみたんですけど。「いや、私は名乗るほどのものではない」って言われて。さらに問い詰めたら「加藤です」って言うし(笑)。

松本 その次の日に、白根さんも含めて打ち合わせしましょうってスタッフに言われて待ってたら……。

石毛 案の定来たのはその“加藤さん”。「どもー」みたいに言いながらやってきて(笑)。

──ではここで白根さんから届いたコメントを見てみましょう。

白根賢一(Great3)

白根賢一(Great3)

テレフォンズ、結成10周年おめでとうございます。
下北沢ERAで初めて観たライブを今も鮮明に憶えている。
石毛くんの類い稀なニューウェーブ声と、当時まだ日本では珍しいハードコア・ディスコなバンドの音。
気がつけば僕は最前列で踊り狂っていました。

大きな夢を描きながら、街の小さなスタジオでのレコーディング。
ワンコイン弁当で連日よく深夜まで頑張ったよね。
いつもハイパーなノブくんに「なんでそんなにテンション高いの?」と訊くと「僕はたとえ小さなライヴハウスでも、武道館やアリーナのつもりで演ってるんです。一番遠くにいるお客さんまでパワーが届くように。ミスチルプロデューサーの小林武史さんがそうしたほうがいいって言ってたのを読んだことあるんすよ。だからぼくもね、こうやってこうジュウァーッチェッジェッドゥギャーッガガガフォ~~ッ%☆▼♂♨♡♀◆□★$▲◇£◉…(解読不明)」と熱く語ってくれましたね。 

1stアルバム「JAPAN」(2008年1月23日発売)

そして、いま本当にアリーナ・武道館の景色を見てるんだもんね。
今だから告白します。
the telephonesを思うあまり、TDの時みんなの意見をあまり聞かなかったよね。
「絶対この方がいいよ、後悔させないから」とインチキ詐欺師みたいにまともな説明もしないで、自分のエゴで邁進してしまった嫌な大人だったね、きっと。
今だから言うよ、「本当にごめんね」。出来た作品に後悔は無いけど、己の欲せざる所をしまくっていたなと反省してます。
ファーストアルバムを一緒に作れたことを誇りに思っています。

石毛 この「トラックダウンのときみんなの意見をあんまり聞かなかったよね」っていうのは、確かにそうかも。でも今聞くと白根さんが言ってることがよくわかるから、「そんなことないですよ」ってあとでメールしときます。

──意見がぶつかったりもしたんですか?

石毛 僕はけっこう言ってた気がします。でも当時は知識がないから「なんか違うんすよ」とか「ここもっとギャッて感じで」みたいにしか言えなかったな。ドラムとかも最後のサビを盛り上げたくて、「バーンッ」て鳴らしたかったのに、白根さんが「ここはハイハットを閉じてやったほういいよ」って言ってきて。

松本 俺もハイハットとかにガムテをバリバリ貼られて「え?」って思ってたな。

石毛 俺たちはその頃、“爆音最高”って思ってたんですよね。でも今聴いてみると、すごく満足いくものになってるから、そのときに俺らを説得してくれたことを感謝しています。そういえばちょうど1週間くらい前にみんなで曲作りをしてて「ここで“いかない”ことがカッコよさだよね。白根さんが言ってたことが今だったらわかるね」っていう会話をしたばっかりだ。

UK.PROJECTに入るまで

石毛 「JAPAN」を出す前の2008年の1月15日に9mm Parabellum Bulletと凛として時雨と渋谷O-EASTでスリーマンをやったんですよ。時雨がトップバッターで、2番手が俺たちだった。

岡本 で、「JAPAN」が出てすぐにLIQUIDROOMでサカナクションと……。

長島 APOGEEね。

岡本 そうだ。その日はけっこうお客さんが入ってたんですよ。全部で6、700人くらいかな? やっぱりサカナもAPOGEEもすげーんだなと思いながら、俺らがステージに出たらお客さんたちがみんなめっちゃ盛り上がってくれて、びっくりしたよね。その頃からちょっとずつ俺らを知ってる人が増えてきたのかな。

──そのあたりでUK.PROJECT代表取締役社長の遠藤幸一さんに出会うんですかね?

石毛 そうですね。2008年の2月22日だ。片平実の「Getting Better」に出たときに、初めて会いました。でもその頃ってほかの事務所の方からも声をかけていただいていて、自分たちの中でほぼ決まりの状態だったんですよね。

岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)

岡本 当時から仲良くしてくれていたRX-RECORDSの人に所属事務所をどうしようとか、いろいろ相談してたら「うちの社長そういうの詳しいから今度相談してみな」って、遠藤さんをライブに連れてきてくれて。

長島 で、そのライブが終わったあと一緒に飲みに行って、いろいろ話したよね。帰り際くらいに石毛さんが「で、結局何が言いたいんですか?」みたいなことを遠藤さんに問いただしたら、遠藤さんは「よかったら一緒にやらないか?」って誘ってくれて。

石毛 俺は当時全部疑ってたんですよ。大人を信じてなかった。

──声をかけてきた事務所がたくさんあった中でthe telephonesがUK.PROJECTと一緒にやることにした決め手ってあったんですか?

石毛 遠藤さんは唯一手書きの文章くれた人だったんですよね。俺らは条件じゃなくて、一番信頼できる人と仕事をしたかったので、あの手紙をみんなで読んで決めました。

ベストアルバム「BEST HIT the telephones」 / 2015年3月18日発売 / 3024円 / Virgin Music / TYCT-69078
ベストアルバム「BEST HIT the telephones」
収録曲
  1. happiness,happiness,happiness
  2. sick rocks
  3. FREE THROW
  4. Love & DISCO
  5. Monkey Discooooooo
  6. Urban Disco
  7. HABANERO
  8. A.B.C.DISCO
  9. kiss me, love me, kiss me
  10. I Hate DISCOOOOOOO!!!
  11. Yeah Yeah Yeah
  12. A A U U O O O
  13. D.E.N.W.A
  14. Odoru~朝が来ても~
  15. Keep Your DISCO!!!
  16. It’s Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)
  17. Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
  18. Hyper Jump
  19. Say DISCO
the telephones(テレフォンズ)

the telephones

2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn, Programming)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパン(現:ユニバーサルミュージック)と契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビューを果たした。2011年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」を開催した。その後もコンスタントに新作をリリースし、2013年7月には初となる東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ、9月にはPOLYSICSと合同で初のヨーロッパツアーを敢行するなど、ワールドワイドに活動を展開する。結成10周年を迎える2015年3月にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースし、同年5月21日に東京・日本武道館で単独ライブを開催。また同年をもって無期限で活動を休止する。

武道館 DE DISCO!!! ~SUPER DISCO Hits 10!!! the telephones 10th Anniversary~

2015年5月21日(木)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30