the telephonesと台湾のポップパンクバンドPAPUN BANDのコラボ曲「Zan“讚”」が、12月25日に配信リリースされた。
2組は2021年に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行われたイベント「Call Out Music -Take Some Time, Here We Go!-」で斬新な形で初競演。このイベントではthe telephonesが現地でパフォーマンスを行い、会場のスクリーンでPAPUN BANDのパフォーマンス映像が上映された。2組はこのイベントをきっかけに、お互いの音楽性に惹かれすぐに意気投合したという。その後PAPUN BANDが来日した際にさらに交流を深め、今回のコラボレーションが実現。昨年11月にはコラボ曲「LV99勇者」、そして12月に「Zan“讚”」を発表した。
「Zan“讚”」はシンセポップやシンセウェイブのサウンドが印象的な楽曲。歌詞では「落ち込んでいたり、黄昏れていたりしたいときも気持ちだけでも最高でいたい」という思いが表現されている。かねてからサックスの音色を曲に取り入れたいと考えていた石毛輝(Vo, G, Syn)のアイデアで、7ORDERの諸星翔希がサックス奏者として参加した。
音楽ナタリーでは「Zan“讚”」のリリースを記念して、石毛と諸星にインタビュー。2人の関係性や楽曲の制作エピソードを聞いた。
取材・文 / 小松香里撮影 / YOSHIHITO KOBA
朝まで飲んで意気投合
──お二人はかなりの頻度で飲みに行く仲だそうですが、2022年に行われたナタリー主催の7ORDERのライブイベント「7ORDER × ナタリー Happy Jack!」に伴う対談(参照:7ORDER×SHE'S・the telephones|新たな出会いで意気投合!ツーマンライブに向けて語り合う)のあとに飲みに行ったことがきっかけで仲よくなったそうですね。
石毛輝(the telephones) そうですね。僕ら世代のバンドマンは飲みの席で仲よくなることが多くて、その流儀が7ORDERに通用するのかすごくドキドキしていたんです。でも対談したときに「仲よくなれるかも」という予感があって。実際にそうなれたのでよかったです。
諸星翔希(7ORDER) 実は僕たちのほうから対談が始まる前にthe telephonesのマネージャーさんに「対談のあと、飲みに行けないですかね?」と聞いてたんですよ。僕も基本は飲みの席でしか仲よくなれない人間なので。それで飲みに行って、結局何時まで一緒にいましたっけ? 解散したのはほぼ朝でしたよね。
石毛 朝だね。
諸星 朝、みんなで撮った写真があって。ほぼ記憶がないんですけど、僕は最後潰れてました(笑)。
石毛 3、4軒行ったのかな。翔希とノブ(the telephonesの岡本伸明)と(森田)美勇人(ex. 7ORDER)がいたんですが、2人が「絶対酒では負けませんから」とか言い出して、「いやいや、何をおっしゃる。俺たちこそ酒でほぼ負けないバンドなんで」って返したら、翔希たちは2軒目ぐらいで寝てました(笑)。
諸星 しっかりボコボコにされました(笑)。
石毛 翔希を膝枕してた気がします。
諸星 気付いたら謙ちゃん(7ORDERの安井謙太郎)も来てました。タクシーで次の店に移動してるときに美勇人が呼んだらしいです。俺らが呼んだことを覚えてなくて、店に謙ちゃんが来たら「なんで来たの?」と聞いたらしく、「お前が来いって言ったんだよ!」って返された。
石毛 それ、めっちゃ覚えてる(笑)。その日の1週間後にまた飲みましたね。その日はたぶん朝8時ぐらいまで飲んで、うどん食って帰った記憶があります。そう言えば、対バン前に7ORDERのライブを観に行ったんですが、そのとき初めてダンスと生演奏を混ぜる男性グループのライブを観たんです。しかもすごく自然にダンスと生演奏がつながってて、バンドとはまた違うプロフェッショナルを持ってる人たちだなと思ってリスペクトが生まれましたね。7ORDERは歌もダンスも、あとはお芝居とかも、全部に手を抜いてなくてクオリティが高いんですよ。
諸星 僕らはダンスも歌もやるし、ドラマにも出るし、バラエティもやるという、いろいろなところにアンテナを張った生き方をしてきたので、それが当たり前なんですよね。だからこそ逆に音楽1本で勝負してる人に対してのリスペクトがハンパなくあります。ただ同時に劣等感もあって。音楽にフルベットして実際に力を発揮することが僕らはできていないので。
石毛 でも、7ORDERは音楽が疎かになっているわけではなく、音楽的な魅力もありつつ、さらにほかの能力も持ってるんですよ。僕、この前ドラマ(TOKYO MXとBS11が共同制作した「ある日、下北沢で」)に出たんですけど、3行ぐらいのセリフなのにめちゃくちゃ緊張しました。7ORDERのみんながスーパーマンのように思えます。
こんなにさわやかな人がこんなに渋いフレーズを弾くんだ
──PAPUN BANDとのコラボ曲「Zan“讚”」に諸星さんのサックスを入れようと思ったのはどうしてだったんですか?
石毛 この曲のジャンルはシンセウェイブで、その大本である80'sの曲には渋いサックスの音が入ってることが多いんです。僕は10年以上前からそういう音楽が好きで、これまではサックスの代わりにギターソロを入れることが多かったのですが、満を持してサックスを入れてみようと。翔希とは去年ヤクルトさんの企画動画(「諸星翔希(7ORDER) with 石毛輝(the telephones) Special Live & Talk Session 【7LAB】」)でセッションしたんですが、1対1でコラボしてみて「やっぱり翔希のサックスいいな」と思ったので呼んだのもあります。しかも翔希はPAPUN BANDとも仲がいいので。レコーディングでは、翔希が奏でる音を聴いたときに「こんなさわやかな見た目の人がこんなに渋くていいフレーズを弾くんだ」という驚きがありました。
諸星 PAPUNは輝くんに紹介していただきました。PAPUNの来日公演の打ち上げに、なぜか僕も行ったんですよ。
石毛 PAPUNは今まで2回来日してるのかな。
──石毛さんは2回とも来日公演の打ち上げに行ってるそうですね。
石毛 翔希も2回とも行ってますね(笑)。来日の打ち上げのときに、さっき話した謙ちゃんを呼んだときのようなノリで翔希に「何してんの?」と電話したんです。
諸星 「ランニングしてます!」と答えたら、「duo(渋谷duo MUSIC EXCHANGE)でPAPUNのライブやってるよ」と言われたので「行きます!」と。
石毛 結局ライブは間に合わなかったんですけど、飲みに来て。めちゃくちゃ飲まされてたね。
諸星 そうですね。飲んでるとき、PAPUN BANDのボーカルの閃亮(Shiny)に「日本の古着屋を知りたい。モロ、明日空いてないの?」って言われて。ちょうど空いてたので、翌日下北と三茶の古着屋を一緒に回って仲よくなりました。
「ツインビー」からインスパイア
──諸星さんはサックス奏者として「Zan“讚”」への参加オファーを受けたときはどう思いましたか?
諸星 マジでうれしかったです。デモを聴いたら「ここにサックスが入るんだろうな」という間奏部分があって、デモを流しながらいろいろ試行錯誤して1週間くらいでイメージを固めました。レコーディングは2時間くらいで終わって、すぐ飲みに行きましたが(笑)。
石毛 もうちょっと時間がかかるかと思ったんですけど、7テイクくらい録ったものが全部よくて。それで終わりましたね。翔希とは共通して好きな音楽がたくさんあるからか、自然に自分の求めているサウンドを表現してくれました。
諸星 僕、輝くんのDJは何度も聴いてますけど、選曲がすごく好みなんですよね。音楽の趣味は合うと思います。
──「Zan“讚”」のサウンドのインスパイア元はゲームの「ツインビー」だとか。
石毛 そうですね。11月にリリースしたPAPUNがメインで作った曲「LV99勇者」が「ドラクエ」っぽかったから、同じくゲームを元にした曲にしたいなと思って。自分がちゃんとプレイしていたゲームを参照するのがいいんじゃないかと思って「ツインビー」にしました。
諸星 最初に「Zan“讚”」のデモを聴いたとき、サビがめちゃくちゃいいなと思って。SMAPの「Amazing Discovery」のようなノスタルジックな印象を受けました。
──最初はしっとりしたサックスの音で、その後はどんどんバンドとのアグレッシブな掛け合いが展開されていきますよね。
石毛 そうですね。順番としては、翔希のサックスのあとに閃亮のボーカルを録ったんです。2人は何も打合せしてないのに、ボーカルとサックスの音色を重ねたらいい感じに絡み合って。3人とも共通の好きな音楽がたくさんあるから、何も言わずわかり合えた気がします。
諸星 最初は掛け合いのところに閃亮の声が入ると思ってなかったので、そのバージョンを聴いたときは驚きました。
石毛 閃亮、直感型のミュージシャンだから予想がつかない(笑)。
諸星 間奏部分がより印象的になっていたのでうれしかったです。
石毛 一番聴かせるパートになったかな。
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長い付き合いの友達のような閃亮