THE BACK HORN|もがきながら歩いてきた20年

俺らやっぱり、曲を作るべきなんじゃないの?

──そして「アサイラム」の翌年、2011年に東日本大震災がありました。この震災も、THE BACK HORNにとって大きな転機となったと思います。

松田 スタジオで曲作りをしてる時期だったんですよね。新しいアルバムに向けて、もがき苦しんでた時期。でも、すげえヘンな曲しかできてなかった記憶がありますね。なんか冴えてねえなあ、と。

菅波 じめーっとした感じの曲ばっかり生まれて(笑)。

松田晋二(Dr)

松田 そんな状態がずっと続いているときに揺れて。「アサイラム」から次のTHE BACK HORNに向かう作業をしてたんですけど、一旦中断しようと。被災地の大変な状況を目の当たりにして、自分たちのことはさて置いて何をすべきか考えた。

菅波 震災直後にライブのリハもやってたんですけど、なんだかふわふわして落ち着かない。中断して自分たちはどうすべきか話し合ったんですけど、光舟が「俺らやっぱり、曲を作るべきなんじゃないの?」と言ったんですよ。

松田 今まで話してきたように、やっぱりTHE BACK HORNは曲を作りながら進んできたバンドだから、とにかく楽曲を作ることでみんなの力になれればと考えて。急遽「世界中に花束を」を録ったんです。

──これはTHE BACK HORNの瞬発力と言うか、いざとなると大爆発してこういうすごい名曲ができるんだなと思いました。

菅波 いやー、ホントいい曲ですよね。自分でもすごい好きな曲です。

松田 もともと自分が作った断片的な歌詞だったり、将司の作ったメロディや歌詞があって。それまでの制作では、それぞれ作ったものを一緒にすることはなかったんです。

菅波 そんな形でやったことはなかったね。

山田 最終的に、俺のメロディとマツの歌詞を一緒にして落とし込んで。

松田 自分としては、全然違うイメージの曲になってけっこう驚きました。

──ヘンな話ですが、震災がなければこういう曲になることもなかった?

菅波 絶対ないですね。光舟のひと言で、楽曲こそが自分たちの生命線なんだって確認できた。もちろん被災地の方々のためにいろんなリアクションの仕方はあるけど、何より音として残すのが俺たちだろうなと。さっきマツが言ってたけど、生まれる曲がその瞬間の俺らの答えなんですよ。あの曲が完成したときは感動がありましたね。でもその感動が大きすぎて、9thアルバムの「リヴスコール」(2012年リリース)の制作は、まあハードルが上がって大変でしたね。制作中に「俺たちこんなもんじゃねえだろ」ってなって(笑)。

──求める楽曲のレベルが高くなったわけですね。

山田将司(Vo)

松田 このときは栄純が言ってましたね、「もっとみんなやるべきだ」って。

山田 使命感に駆られて。

松田 「曲にするべきことがいっぱいあるんだから、それを表現するべきだ」って言ってた。震災から1年が経って、自分たちがどういう音楽を世の中に出すか見られてるだろうし。

──より深みのある表現にならないといけないと。

松田 よりみんなの力になれる音楽を出すべきだってなった。

──自分のためだけでなく人のためにやる、という感覚もあった?

菅波 そうですね、「世界中に花束を」はそういう曲だと思うんです。祈りって言うか。一方で「リヴスコール」は音楽でみんなの力になりたいという気持ちで作りながら、自分たちから新たに出てくるものを聴いてみたいという欲も入り混じって、それが制作のモチベーションになった。結局、自分が面白いと思えるかどうかを突き詰めていくことと、誰かの力になる楽曲がそんなにかけ離れたものでもないということになった。

──つまり両立できた?

菅波 できたと思います。

THE BACK HORNってアイリッシュパンクが合いそうだよね

──10thアルバムの「暁のファンファーレ」(2014年リリース)、11thアルバムの「運命開花」(2015年リリース)は記憶に新しいところだと思います。そして、今回のベスト盤には新曲「グローリア」が収められています。これがまた面白い曲で……。

菅波 面白いですよね!

──バグパイプの音が入ってて、ついにアイリッシュパンクに挑戦みたいな。

菅波 あ、やっぱり思いました?(笑) メロディできた段階で、バグパイプの音が自然に聞こえてきて。これはアイリッシュパンクだなと。

──非常に景気のいい感じで、楽しく聴きました。

菅波 それはうれしいなあ。以前光舟が「THE BACK HORNってアイリッシュパンクが合いそうだよね」って言ってたんですよ。

岡峰光舟(B)

岡峰 そうだっけ?

菅波 そうだよ。それで「それってどういう曲?」って話して。疾走感があって音が壮大で……バグパイプの音ってストーリーが感じられるんですよね。「そういうの俺らっぽくない?」みたいな話をしたんです。

岡峰 The Poguesみたいな、明るいんだけど切なさもあって、どこか陰りのあるサウンドがTHE BACK HORNに通じるところがあるんじゃないかとは思いました。

菅波 これ、歌詞が先行してできてたんですよ。メロディを歌詞に合わせてたら、すげえパンクになった。

THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」
2017年10月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」TYPE-A

TYPE-A [CD2枚組+DVD]
4860円 / VIZL-1237

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THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」TYPE-B

TYPE-B [CD2枚組]
3456円 / VICL-64842~3

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DISC 1(CD)
  1. 覚醒
  2. 戦う君よ
  3. 閉ざされた世界
  4. 世界中に花束を
  5. シリウス
  6. シンフォニア
  7. バトルイマ
  8. シンメトリー
  9. コワレモノ
  10. ビリーバーズ
  11. 悪人
  12. その先へ
  13. 魂のアリバイ
  14. With You
  15. あなたが待ってる
  16. 孤独を繋いで
  17. グローリア
DISC 2(CD)
  1. ひょうひょうと
  2. コバルトブルー
  3. 赤眼の路上
  4. 晩秋
  5. ジョーカー
  6. 冬のミルク<New Recording>
  7. 美しい名前
  8. 何処へ行く
  9. 上海狂騒曲
  10. 泣いている人<New Recording>
  11. 無限の荒野<New Recording>
DISC 3(TYPE-A DVD)
  1. 戦う君よ
  2. 閉ざされた世界
  3. シリウス
  4. 世界中に花束を<New Recording>
  5. シンフォニア
  6. バトルイマ
  7. シンメトリー
  8. コワレモノ
  9. ビリーバーズ
  10. 悪人
  11. その先へ
  12. With You
  13. あなたが待ってる
  14. 孤独を繋いで
  15. 泣いている人<New Recording>

<Extra Video>

  1. 戦う君よ(葛藤編)
  2. 戦う君よ(狂乱編)
  3. 戦う君よ(妄執編)
  4. 戦う君よ(鬱屈編)
  5. シンフォニア(1cut ver.)
THE BACK HORN(バックホーン)
THE BACK HORN
1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。10月に2枚目のベスト盤となる「BEST THE BACK HORN II」を発表した。