アルバムを作るごとに気が済む
──海外なら3年に1枚とか、5年に1枚しか出さないバンドもいるのに、そういう格闘をほぼ毎年毎作やってるのがすごいです。
菅波 確かに(笑)。4人共、アルバムを作るうえでの“筋肉”は鍛えられてると思います。さっき「煮詰まったアルバムは、最初の2枚だけ」って言ったけど、今話してたら毎回煮詰まってたんだなって。毎回、前作を超えなきゃいけない作品を作り続けていくうちに、すごく鍛えられたと思いますね。
──しかも誰に言われるでもなく、曲は作り続けている?
菅波 うん。
──たまには休みたいと思いませんか?
松田 ほかにやることないから……。
菅波 わはははは!(笑)
松田 生きがいって言うかね。
菅波 そう、音楽が生きがいだね。
──じゃあオフのときは何をやってるんですか?
松田 何もないですよ。でも話しながらちょっと思ったんですけど、「THE BACK HORN」までの10年間は激動だったけど、それからの10年間はちょっと緩やかだったかな。「THE BACK HORNらしさ」を探してた10年から、「自分たちは自分たちとして歌っていれば、何か伝わるものがあるんだ」って実感が得られたんです。
──「THE BACK HORNらしさ」を探してた前半の10年間から、それがある程度確立されたという手応えを得られたのがこの10年ということ?
松田 なんとなくそういう気がします。どういうふうにやってもTHE BACK HORNになるって言うか。それに伴って、ここ5作のアルバムはバンドと言うかライブを意識したり、ロックな方向になってる。
山田 ライブを意識して曲作りを始めたのが7thアルバムの「パルス」(2009年リリース)ぐらいじゃないかな。それまではあまり意識してなかった気がする。「THE BACK HORN」とかは、レコーディングでしっかり世界観を作って……みたいな作品性の部分を意識してた気がしますね。
菅波 確かにそうだね。
──では「パルス」はどんなレコーディングだったんですか?
岡峰 「『THE BACK HORN』みたいにバラエティに富ませることはあまり考えず、全編同じ世界観の曲が集まっても全然いいじゃないか」という話になって。なのでちょっと暗めで激しい曲が集まってるんですよね。
山田 毎回何かしら前作の反動があるよね。思い出すと、「駆け抜けていけるようなアルバムを作ろう」って言って「パルス」を作った気がする。
──アルバムを作るごとに徹底的にやりきっちゃうから、その方向は気が済んじゃうというのがあるのかも?
菅波 確かに(笑)。
山田 「気が済んだ」って言い方はいいですね(笑)。
松田 それで何年か経つと1周してもとに戻ったりもして。
個性を打ち出し、らしさを成立させる
──では8thアルバムの「アサイラム」(2010年リリース)はどうだったんですか?
松田 これは前作の路線のバンド感をさらに強力に出していくことと、各々の個性を出していくことの両方を追求したアルバムですね。歌詞も全員がそれぞれ書いて。「4人の個性を強く出しながら、いかにTHE BACK HORNらしさを成立させていくか」という挑戦でもあった気がします。
菅波 「アサイラム」の制作もかなり大変だったな。「戦う君よ」のメロディとかアレンジとか、もう永久に決まらないんじゃないかってぐらい。みんなでスタジオに入って、ちょっとやっては「これも違う」「あれも違う」って。
松田 夏でね。外はすげえいい天気なのに、俺らずっと室内にこもりまくって。「パルス」とか最初のベスト盤「BEST THE BACK HORN」を出したあと、リスナーの層が広がったと思うんですよ。武道館もやったりして。出してきた作品がちょっとずつみんなに受け入れられてきたという実感があった。「パルス」のリリースツアーもいろんなところを回って、全国52公演かな? それで精神的にも肉体的にもやりきった感があって。
菅波 そのおかげで「アサイラム」はTHE BACK HORN史上でもっともパワフルなアルバムに仕上がったと思います。すごく苦労した記憶があるけど、最終的に「パルス」のツアーで鍛えられたライブ感が注ぎ込まれたアルバムになった。
──作り終えたときに、自分たちがロックバンドとしてワンステップ上に行けた実感が得られたんじゃないですか?
菅波 言われてみれば確かにそうですね。「すげえのできたな」って手応えはありました。
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俺らやっぱり、曲を作るべきなんじゃないの?
- THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」
- 2017年10月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
TYPE-A [CD2枚組+DVD]
4860円 / VIZL-1237 -
TYPE-B [CD2枚組]
3456円 / VICL-64842~3
- DISC 1(CD)
-
- 覚醒
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- 世界中に花束を
- シリウス
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- 魂のアリバイ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- グローリア
- DISC 2(CD)
-
- ひょうひょうと
- 声
- コバルトブルー
- 赤眼の路上
- 扉
- 枝
- 晩秋
- ジョーカー
- 罠
- 冬のミルク<New Recording>
- 美しい名前
- 何処へ行く
- 上海狂騒曲
- 刃
- 泣いている人<New Recording>
- 無限の荒野<New Recording>
- DISC 3(TYPE-A DVD)
-
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- シリウス
- 世界中に花束を<New Recording>
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- 泣いている人<New Recording>
<Extra Video>
- 戦う君よ(葛藤編)
- 戦う君よ(狂乱編)
- 戦う君よ(妄執編)
- 戦う君よ(鬱屈編)
- シンフォニア(1cut ver.)
- THE BACK HORN(バックホーン)
- 1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。10月に2枚目のベスト盤となる「BEST THE BACK HORN II」を発表した。