投票結果がばらけた背景
──そしてベストアルバムのDISC 2は、「BEST THE BACK HORN」以前の楽曲をファン投票の結果をもとにまとめたものですね。この結果を見てどうでしたか?
松田 ダントツの1位っていう曲がなかったんですよ。いろんな曲に投票がバラけていて、それぞれ思い入れのある曲が違う。でも考えてみれば、THE BACK HORNの曲ってそういうものだと思うんです。
──THE BACK HORNってあからさまな遊びや実験的な曲をやらないですよね。どんな曲でも、全力を尽くしてそのときの自分たちのすべてを注ぎ込む。その結果、お客さんがそれぞれの思い入れを持って聴いている。
松田 そうですね。それがこの投票でも感じられたというか。
岡峰 「上海狂想曲」とか、もともと人気はあると思ってたんですけど、上位に来たのは意外でしたね。あと「枝」とか「扉」なんてライブでも全然やってないのに。でも、そういう曲のほうがレアだし、ファンは思い入れもあるのかなと。
菅波 あと新録で「泣いている人」と「無限の荒野」をやってるんですけど……(どちらも2000年発売のインディーズ時代のアルバム「甦る陽」に収録)。
──聴き比べるとすごく面白いですね。
菅波 面白いですよね!
松田 「無限の荒野」はライブのアンコールとか、盛り上がる曲として演奏してたから、今の演奏で、今のライブ感でもう一度パッケージしたかったんですよ。「泣いている人」は最近ストリングスを入れてライブでやったりして。この2曲は録り直してみたら違う形で届けられるかなと思ったんです。
菅波 「無限の荒野」の新しいバージョンは、だいぶ気持ちいいですよね。ちょっとアレンジ変えたところとか聴いてほしいです。
これでよかったんだ
──20年前の自分たちが作った曲を今演奏するってどういう気分なんですか?
菅波 俺は光舟が弾いてるバージョンが聴きたかったので、やっと今の自分たちがしっくりする形でできたな、という気がします。
松田 インディーズ時代の曲って何かを背負ってない分、飄々としていると言うか。「この曲で何かをしたい」みたいな渦巻く思いが、いい意味でないんですよね。だから演奏してて、そんなに違和感がないんですよ。「晩秋」しかり、「何処へ行く」しかり(いずれも1999年リリースのインディーズ時代のミニアルバム「何処へ行く」に収録)。
──なるほど。歌っている山田さんはどうなんですか?
山田 インディーズの頃は、渦巻いている感情は今とは違うけど濃かったから、ムダに叫び散らしてるかな。それが味だったし、もう二度と出せない感覚で。「無限の荒野」はずーっとライブでやってきてたから、今思ってる感じでやればいいかなと思って歌い直しました。
──「泣いている人」はどうですか?
山田 これもたまにライブで歌ってるので、「無限の荒野」を録り直したのと同じ感じでしたね。でも、「どうかあなたが幸せでありますように」っていうメッセージを、どういう気持ちでどこへ向かって響かせるかが昔よりも明確になった。
──この歌は街角で泣いている人がいて、その人に向けて歌ったものなんですか?
山田 どうだったかな……もう忘れちゃったけど(笑)。オリジナルバージョンを録り直す前に聴いたんですけど。すげえ叫んでるんですよね。でもあのときは、その歌い方が自分にはしっくり来てたわけで。でも今は、叫ばない歌い方のほうがグッとくるし。
──込めてる思いみたいなものはどうですか?
山田 込めてる思いは……今のほうが重みがありますね。
松田 インディーズ時代ってすごく無邪気だったんですよ。自分たちが何を訴えるかとかじゃなく、バンドやる楽しさとか憧れとか楽曲を作る喜びだけがあった。「THE BACK HORNとは何か」とか、「自分たちの使命は」とか考えてない。だからこそライブで演奏するときに、今の思いを自然に乗せられるんです。でも、今の自分たちからは間違いなく生まれない。まあ、今くらいの演奏力で当時レコーディングできてたら、とは思いますけど。
──今ぐらい演奏がうまくなって、経験を積んだ状態で20歳ぐらいに戻れれば。
松田 そう思うことはあります。でもそれがいいとは限らないわけで。
菅波 ホントにそう。俺らのことだから、何かにつまずいては超え、何かにつまづいては超え……みたいなのをもう1回やることになるだろうし。
岡峰 そんなの絶対イヤだ(笑)。
菅波 どうせまた同じ失敗を繰り返すに決まってるから、これでよかったんだと思います。
- THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」
- 2017年10月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
TYPE-A [CD2枚組+DVD]
4860円 / VIZL-1237 -
TYPE-B [CD2枚組]
3456円 / VICL-64842~3
- DISC 1(CD)
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- 覚醒
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- 世界中に花束を
- シリウス
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- 魂のアリバイ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- グローリア
- DISC 2(CD)
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- ひょうひょうと
- 声
- コバルトブルー
- 赤眼の路上
- 扉
- 枝
- 晩秋
- ジョーカー
- 罠
- 冬のミルク<New Recording>
- 美しい名前
- 何処へ行く
- 上海狂騒曲
- 刃
- 泣いている人<New Recording>
- 無限の荒野<New Recording>
- DISC 3(TYPE-A DVD)
-
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- シリウス
- 世界中に花束を<New Recording>
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- 泣いている人<New Recording>
<Extra Video>
- 戦う君よ(葛藤編)
- 戦う君よ(狂乱編)
- 戦う君よ(妄執編)
- 戦う君よ(鬱屈編)
- シンフォニア(1cut ver.)
- THE BACK HORN(バックホーン)
- 1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。10月に2枚目のベスト盤となる「BEST THE BACK HORN II」を発表した。