叫ばないアルバムを作りたい。ちゃんと歌いたい
岡峰 でも言ったら「ヘッドフォンチルドレン」(2005年リリースの4thアルバム)も苦戦したよね?
菅波 思い出すとそうだね(笑)。
松田 「イキルサイノウ」もさ、栄純が大変で歌詞ができないとかいろいろあったよね。だから「何かをつかんだ」と言いつつも、完全につかんだわけじゃないから、「イキルサイノウ」も「ヘッドフォンチルドレン」も楽にできたアルバムじゃない。
──今まで楽にできたアルバムなんてあるんですか?
菅波 ないですね!
岡峰 しかも「ヘッドフォンチルドレン」は発売日ずらしたんじゃなかったっけ。締め切りに間に合わなくて、半年ぐらい……。
──確かにそれまで毎年アルバムを出していたのに、2004年だけ出てないんですよね。なぜそんなに難航したんですか?
山田将司(Vo) 俺は「叫ばないアルバムを作りたい。ちゃんと歌いたい」みたいな話をしたと思う。「それまでの激しい感じだけだとどうなのか」って言って。
菅波 そうそう。
松田 前と同じことはやりたくない、さらにTHE BACK HORNを進化させたいってときに、どういうやり方があるかって話をして、そういう将司の案も出て。なので曲はそろってたんだけど、「これでいこうぜ」って全員が納得できなかった。
岡峰 激しい曲は早い段階でレコーディングしてたけど、もやっとしたまんま進んでたし。
菅波 「この激しい曲だけで、俺らのアルバムって言えんのかな」って。
松田 叫ぶだけでなく、しっかり歌を届けるような部分を置き去りにしていいのかって、その頃に気付いたんですよね。
テーマの共有によって変化した制作スタイル
──最近はアルバムを作る前に、どういう方向性でいくかミーティングしてるんですよね?
松田 それはホントに最近の話で。「ヘッドフォンチルドレン」を作ってるときはミーティングなんて全然なかった。
菅波 まずはやり始めてから考える。
松田 でも、5thアルバムの「太陽の中の生活」(2006年リリース)を作る頃から、みんなで集まってノートに書き始めて。
──ああ、「ヘッドフォンチルドレン」で懲りたから。
松田 そうそう(笑)。なので、あらかじめテーマを4人で共有してからアルバムを作るようになったんです。
岡峰 いろんなワードを書き出していって、最後にテーマを“生活”にすることになって。
山田 日曜日の喫茶店でね。
岡峰 酒は入れないほうがいいっていう判断で(笑)。
──それで「太陽の中の生活」の制作はスムーズに進んだんですか?
松田 それもいろいろあったんですけど、全員が1つのテーマに向かうことができた。なので「太陽の中の生活」は自分たちとしてはすごく重要なアルバムですね。
菅波 そうそう。
──そのわりに、今回のファン投票では「太陽の中の生活」の収録曲が1曲も選ばれてないですね。
山田 そうなんですよね……。
菅波 ショック!(笑)
──「ヘッドフォンチルドレン」と「THE BACK HORN」の曲は3曲ずつ選ばれてるのに。
菅波 ま、曲単位じゃなくアルバムを通して聴いてくれってことです(笑)。
常に求めていた「THE BACK HORNらしさ」
──セルフタイトルの6thアルバム「THE BACK HORN」(2007年リリース)の制作で覚えていることはありますか?
松田 これも大変だったよね。
菅波 大変だった。この頃まで合宿制作とかやってたよね。
山田 MTRを使い始めた頃だよ、確か。
菅波 プリプロで自分たちでMTRを使って録り始めた頃か。
松田 このアルバムから「自分たちらしさとは何か」ってとこに向き合いだして。「THE BACK HORNらしさ」ってなんだろうってみんなで話して。「どういうメロディがTHE BACK HORNらしいんだろう?」って分析したりいろいろ考えましたね。
──それで当時、THE BACK HORNらしさとは何か結論は出たんですか?
菅波 結論……は出なかったねえ。
松田 いや、「声」になったのかな?
菅波 ああ、そうだったか。「声」とか「美しい名前」が“らしい”曲になったのかな。「太陽の中の生活」を経て、このときまた模索の時期に入っていた気もする。
──「THE BACK HORNらしさ」とは何かを自分たちに問いかけ続けていた。
菅波 うん、それが制作の原動力でもあった気はしますね、確かに。
──でも明確な答えがそのつどあるわけではない?
菅波 ないからまた次に進めるのかな。
松田 あえて言えば曲として生まれるのが1つの答えと言うか。そこに達成感や充実感があると思うんです。
──THE BACK HORNって一球入魂と言うか、1曲作るたびにその時点での自分たちのすべてを注ぎ込むタイプだと思うんです。なのでそのつどの充実感や手応えはめちゃくちゃあるわけですよね?
松田 うん。
菅波 そうすね。
──でも時間が経つと新たな思いが出てきて、「THE BACK HORNらしさ」とは何かを問いかけることになる。
菅波 そうですね。楽なことはないですねえ。
松田 常にコンスタントにアルバムを出して、レコード会社も変わらず激動もなくやってきて、表面上は順調にやってるように見えるかもしれないけど、制作に関してはかなり毎回激動ですね。かと言って、そういう苦労がにじみ出るような音楽にはしたくない。
──「これだけ苦労したんだから聴いてくれよ」なんて、そりゃダサいですよね。
松田 うん。でもこうやって改めて振り返ってみると、そういう裏の苦労を見せずに曲の世界観だけを伝えられてきたのかな、という気がします。
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アルバムを作るごとに気が済む
- THE BACK HORN「BEST THE BACK HORN II」
- 2017年10月18日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
TYPE-A [CD2枚組+DVD]
4860円 / VIZL-1237 -
TYPE-B [CD2枚組]
3456円 / VICL-64842~3
- DISC 1(CD)
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- 覚醒
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- 世界中に花束を
- シリウス
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- 魂のアリバイ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- グローリア
- DISC 2(CD)
-
- ひょうひょうと
- 声
- コバルトブルー
- 赤眼の路上
- 扉
- 枝
- 晩秋
- ジョーカー
- 罠
- 冬のミルク<New Recording>
- 美しい名前
- 何処へ行く
- 上海狂騒曲
- 刃
- 泣いている人<New Recording>
- 無限の荒野<New Recording>
- DISC 3(TYPE-A DVD)
-
- 戦う君よ
- 閉ざされた世界
- シリウス
- 世界中に花束を<New Recording>
- シンフォニア
- バトルイマ
- シンメトリー
- コワレモノ
- ビリーバーズ
- 悪人
- その先へ
- With You
- あなたが待ってる
- 孤独を繋いで
- 泣いている人<New Recording>
<Extra Video>
- 戦う君よ(葛藤編)
- 戦う君よ(狂乱編)
- 戦う君よ(妄執編)
- 戦う君よ(鬱屈編)
- シンフォニア(1cut ver.)
- THE BACK HORN(バックホーン)
- 1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。10月に2枚目のベスト盤となる「BEST THE BACK HORN II」を発表した。