寺島拓篤|4thアルバムで突き詰めた自分のスタイル

寺島拓篤が3月25日に4thアルバム「ASSEMBLE」をリリースする。

約3年ぶりのアルバムとなるこの作品には、テレビアニメ「転生したらスライムだった件」オープニング主題歌「Nameless Story」「メグルモノ」や、「ウルトラマンタイガ」オープニングテーマ「Buddy, steady, go!」といったシングル曲に、アルバム恒例のインストや新録曲を加えた全12曲が収録されている。

アーティストとしての果敢なトライアルがうかがえる本作は、どのように作り上げられたのか? 新録曲についての制作エピソードを寺島本人にたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)

今まであまり触れてこなかったような曲たち

──3年ぶりのアルバムは非常に濃密で、パワフルな内容になりましたね。

おっしゃる通りですね。今回は圧倒的なパワーを持ったタイアップ曲がすでに3曲もあったので、それに負けない強いアルバム曲を用意していったんです。当然、全体的に濃い作品になるであろうことは想像していたんですけど、実際仕上がったものを聴いたときは自分でもびっくりしましたね。1曲1曲のパワーがすごいから全部聴くと疲れちゃうかもしれないなって、ちょっと心配しているんですけど(笑)。

──新録曲のセレクトは寺島さんご自身によるものですか?

寺島拓篤

「今回はこんな曲が欲しいです」という僕からの要望は言わせていただいたうえで、基本はディレクターにお任せしました。今回からメインで担当してくださることになったディレクターも、僕にやらせてみたい音楽性をいろいろ考えてくれる方なので、どんなものが上がってくるかを楽しみにしつつ。結果、今まであまり触れてこなかった音、カラーを持つ曲がけっこうそろった気がしますね。自分なりに挑戦だったなと特に感じたのはコンペで決めた「光の在処」かな。

──では逆に、寺島さん自らが欲したサウンド感が反映されたもので言うと?

ZAQさんに作っていただいた「カクシンボ」と、アルバムの最後に入っている「僕らの奇跡」は僕の中にあるイメージを明確に具現化していただいた感じでした。

──その2曲を筆頭に、今回はライブの光景を想起させる曲も多いですよね。それはアルバムリリース後に控えたツアーを見据えてのことだったんでしょうか?

そうですね。ひさしぶりのツアーが決まったうえでの制作だったので、自然と意識していたところはあったと思います。アルバムタイトルに関しても、そこが関係してくるというか。「ASSEMBLE」には“結集する”という意味があるので、「タイアップ曲が3曲も集まったよ」「それに負けない強い曲を集めたよ」という思いに加えて、「ひさしぶりにライブをやるからみんな集まれ!」という気持ちも込めました。

何度折れても立ち上がる精神に惹かれた

──アルバムはインストの「overture Ⅳ」に誘われる形で、実質的な1曲目となる「UNBREAKABLE」で幕を開けます。リード曲らしい、ハイテンションなダンスチューンですね。

これはもともと、シングル「Buddy, steady, go!」のカップリングだった「MONSTER」を、去年の「おれパラ」(「Lantis Presents Original Entertainment Paradise -おれパラ- 2019 ~WA!!!!~」)でダンスしながら歌ったことがきっかけでできた曲なんですよ。ライブでのパフォーマンスの評判もよかったし、僕もひさしぶりにミュージックビデオでダンスを踊ってみたいなと思ったので、じゃあ今回のリード曲はダンスナンバーでいこうと。曲自体はコンペで選びましたね。聴いた瞬間に気持ちを持っていかれるイントロの強さが決め手でした。

──歌詞はどんなイメージで書いていきましたか?

僕はいつも自分の好きなマンガやアニメのいろんなキャラクターをモチーフに歌詞を書いているんですけど、この曲を聴いたときに大好きなある作品のキャラクターがパッと浮かんだんですよ。むちゃくちゃ強いんだけど、いわゆる主人公キャラじゃないから絶対に負けないわけでもない。ただ、何度折れても立ち上がる壊れない精神を持っている。そのしぶとさみたいな部分に僕は惹かれていたので、この曲ではそれを表現してみようと思いました。

──そこにはアーティストデビュー8年目を迎える寺島さんの新たな決意も込められているように感じたのですが、どうでしょう?

寺島拓篤

そうやって聴いていただいたことはすごくありがたいんですけど、自分のことは驚くほど入ってないんですよね(笑)。今回自分が書いた歌詞の中で、この「UNBREAKABLE」と「深海より」は物語性やキャラクター性みたいな表現をより色濃く出した内容になっているので。これはもう僕の作家性ってことなんだと思うんですけどね。

──なるほど。とは言え、寺島さんの中にも“UNBREAKABLE(=壊れない)”精神はあるはずですよね、きっと。

あー、言われてみれば確かにありますね、うん。例えばシーンのど真ん中で輝いている人を見たときに、「ああ、カッコいいな」って憧れる気持ちはありつつも、同時に「自分はそういうタイプじゃないよな」と冷静に思えるところもあって。憧れることはあっても、「なんで俺にはできないんだ」と腐ってしまうことはないんです。それよりは今の自分の状況や役割を受け止め、その中で輝くことがオンリーワンになれる生き方なのかなと僕は思うんです。ベタっちゃベタな考え方ではあるけど(笑)。そんな部分が無意識にキャラクターと共鳴したことで、今回の歌詞が書けたところもあったのかもしれないですね。

──歌に関しては、そのキャラクターになり切ってレコーディングに臨んだ感じですか?

いや、そこもまた複雑なところで。僕が声優として演じているキャラではないので、あくまでその人をイメージして歌うに留まるというか。あとはいかにサウンドに寄り添うかを大事に表現していく感じですね。この曲は、強さの中に鋭さや繊細さみたいなものを感じることができたので、ゴリゴリに攻めていくだけじゃない表現をするように意識はしました。

──「UNBREAKABLE」のMVでは寺島さんの華麗なダンスに注目ですね。

ダンサーチームといろんな話をしながら振り入れやリハをする時間が楽しかったですね。最初はホントにくじけるかと思うくらい難しかったんですけど(笑)、それこそ“UNBREAKABLE”な精神で1つひとつ攻略していき、完成形にどんどん近づいていくのがうれしかったです。とはいえ、編集して使うことが前提になる撮影では自分が思う完璧なダンスまでは到達できなかった悔しさもあるので、ライブではしっかりフルサイズの完成形をお見せできたらいいなと思っています。