寺島拓篤|ウルトラマンタイガへの熱い思いみなぎる、魂の一作

寺島拓篤が通算10枚目となるニューシングル「Buddy, steady, go!」を8月28日にリリースする。

特撮テレビドラマ「ウルトラマンタイガ」で主人公・タイガの声優を務めている寺島が歌う、同番組のオープニングテーマ「Buddy, steady, go!」。渡部チェルによる力強いサウンドに、ウルトラマンへの深い愛情と、それを観る子供たちへの温かな思いを込めた寺島の歌詞が乗り、その世界をまるでタイガが乗り移ったかのような熱量高いボーカルが彩っていく仕上がりとなっている。

音楽ナタリーでは寺島にインタビューし、本作の制作にまつわるエピソードと、アーティストデビュー7周年を迎えた現在の音楽観について話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 草場雄介

コンペの中で異質だった曲

──ウルトラマンシリーズには昔から親しんでいましたか?

もちろんです。一番記憶に残っているのが「ウルトラマンティガ」ですね。長い空白期間を経て新しく始まったウルトラマンだったので、その後の「ダイナ」「ガイア」も含めてワクワクしながら観ていました。だから今回のお話をいただいたときは本当に信じられなくて。しばらくは現実のこととは思えないような状態だったんですよ。ただ、周囲にいる年上の知り合いに報告するとみんなめっちゃ喜んでくれて。その姿を見て、「あ、ウルトラマンに関わることは本当にすごいことなんだな」と改めて実感でき、ようやく現実のこととして考えられるようになりました(笑)。

──オープニングテーマとなる「Buddy, steady, go!」は、作品世界にマッチした力強く勢いのあるナンバーに仕上がっていますね。

今回、楽曲はコンペで決めさせていただいたんですよ。作曲家さんのお名前を伏せた状態で、純粋に曲の良さで3、4曲に絞り、その中から円谷プロダクションさんに選んでいただきました。で、蓋を開けてみたら渡部チェルさんの曲で、「なるほどね。よくわかっていらっしゃる」という(笑)。

──チェルさんの曲はこれまでも歌われていますからね。名前を見ずともそれを候補の1つに選んでいたところに強い縁を感じます。

たくさんの楽曲があった中で、この曲だけちょっと異質な雰囲気だったんですよ。ほかの楽曲はどれもキラキラした雰囲気で、前作の「ウルトラマンR/B」の主題歌だったオーイシ(マサヨシ)さんの「Hands」の雰囲気を踏襲したもので。僕としても「Hands」がめちゃくちゃ好きだったから「こういう方向性の曲を歌いたいな」っていう気持ちがあるにはあったんです。でも、どうしても外せない熱さ、湧き上がってくるエネルギーみたいなものをこのチェルさんの曲には感じていて。だから円谷プロさんがこの曲を選んでくださったときには妙に納得できたところがあったんですよね。

全力でぶつかって勝負できた

──作詞は寺島さんご自身が手がけられています。ブログに書かれていましたけど、相当なこだわりを詰め込んだそうですね。

寺島拓篤

はい。円谷さんからは「ウルトラマンタイガ」という名前と、今回の変身のキーワードとなる「バディーゴー!」を入れてくださいというオーダーだけいただいていたので、あとは自由に書くことができて。だから僕がタイガという作品から受け取った思いと、それにプラスしてこれまで触れてきたウルトラマンのエッセンスを寺島なりに捧げることにしたんです。まず第一に、タイガはウルトラマンタロウの息子だからある意味エリートではあるんだけど、あくまでもタイガはタイガなんだ、1人の人物として成長していくんだということを描きたかった。そこに加えて、タイガのDNAに刻まれているタロウの要素や、先輩であるニュージェネレーションヒーローズのウルトラマンを連想させるキーワードも盛り込んでいこうと。さらに、僕が子供の頃に読んでいたマンガ「ウルトラマン超闘士激伝」の要素も入れこむことにしたんですよね。

──てんこ盛りじゃないですか(笑)。

うん、だいぶモリモリですね(笑)。しかも、後々指摘されて知ったんですけど、僕が無意識に使った「煌めく未来」というフレーズをタイトルにしたウルトラマンの曲(「キラメク未来~夢の銀河へ~」)が過去にあったらしいんですよ。そんな偶然も含め、ウルトラマンという作品が長きにわたって受け継いできた魂みたいなものを、今回の曲ではちゃんと受け継ぐことはできたのかなと思えて、すごくうれしくなったんですよね。

──コアなウルトラマンファンがニヤリとする要素を盛り込みつつ、子供にもちゃんと理解できるストレートなメッセージソングに仕上げるというバランスも絶妙ですよね。

確かに子供に向けて、ということはすごく意識しました。ウルトラマンは宇宙から飛んでくるイメージがあるけど、子供にとってのヒーローって足が速いやつだったりするじゃないですか(笑)。だから、「用意ドン!」を想起させる「Get set」「Dash」みたいなワードを使ったりしたし、英語を盛り込んだのは「これどういう意味?」と子供が親に聞くことで家族のコミュニケーションが生まれればいいなという願いも込めてます。今回のウルトラマンはタロウとタイガの、親子の話でもあるので。

寺島拓篤とウルトラマンタイガ。

──歌録りに関してはどんな思いで臨みましたか? ものすごく力強いボーカルが響いていますが。

力強さとさわやかさ、その両方をイメージして臨んだんですけど……できたものを聴くと、楽曲に対しての気合いを強く感じますね(笑)。ウルトラマンの曲を歌うということで、ちょっと気負ってたところもあったんだと思います。今後、ライブなんかではもうちょっとリラックスした心持ちで歌ってもいいなと。

──いやでも、ちょっと力みすぎてるくらいのテンションじゃないと歌いこなせない曲でもあると思うんですよ。サウンドにものすごいパワーがあるから、相当なカロリーを必要とするでしょうし。

あー、そうかもしれない。カロリー消費はハンパないですからね(笑)。もしかすると、チェルさんが思うタイガの成長物語を、楽曲のエネルギーとしてぶつけられたのかもしれないですね。そういう意味では、そこに対して全力でぶつかって勝負できたのはよかった。それによって僕もまた成長できたのかもしれないですし。

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寺島拓篤の大切な軸