寺島拓篤|4thアルバムで突き詰めた自分のスタイル

ボカロ曲っぽいものをやってみたかった

──ZAQさんから提供を受けた「カクシンボ」もかなりアッパーな楽曲ですよね。サウンドのイメージは寺島さんからリクエストしたものなんですか?

そうですね。ZAQさんはなんでもできちゃう方なので、じゃあ何をやってもらおうかなと考えたときに、まずはライブで1つになれる曲がいいなと思ったんです。去年の「おれパラ」ではクラップで会場の皆さんと一緒に盛り上がれたりしたので、個人でもクラップを盛り込んだ曲を作りたいなと。あともう1つは、以前からずっと考えていたことだったんですけど、ボカロ曲っぽいものをやってみたいなと思ったんですよ。

──確かにこの曲はかなりボカロ曲っぽいですよね。カオスな雰囲気があります。

ボカロ曲ってもともと、人間が歌うために設計されてはいないじゃないですか。人間の限界を超えたところにある面白さが魅力でもあるという。この曲では、そこをしっかり踏まえたうえで、ギリギリ人間でも歌えるラインを攻めてくれているんですよね。さすがZAQさんだなと思いました。

──ラップパートもカッコいい仕上がりになっていますね。

寺島拓篤

去年の「おれパラ」で僕が歌った「MONSTER」をZAQさんは会場で聴いてくださっていたみたいで。「ラップ、めちゃめちゃカッコいいじゃないですか! ラップパート入れていいですか?」と言われて実現した感じですね(笑)。いただいたデモにはシンセメロが入っていましたけど、「無視していいですよ」とおっしゃっていただけたので、フロウに関しては僕が考えさせていただきました。言葉を詰め込んでいく過程は楽しかったんですけど、実際歌うとなったらめちゃくちゃ大変で。自分で自分の首を絞めることになってしまったという(笑)。ちなみにこの曲の歌詞も、“隠しごと”がテーマになっている僕の好きな作品をイメージしつつ、ラブソングとして書いていった感じです。

ラジオ愛を炸裂させた曲

──「ハートチューニング」は新しい寺島さんの表情を感じられる面白い1曲だと思います。

曲の雰囲気としては1stアルバム「NEW GAME」に入っていた「フレンド」に比較的近い感じではあるけど、でも今までになかった新鮮なサウンド感ではありますよね。歌詞は僕のラジオ愛を炸裂させた感じで。

──ラジオ愛聴者であればニヤリとするフレーズが満載ですよね。

そうそう。僕も含めて、パーソナリティが当たり前のように発信している言葉たちをそのまま使ったりしていますからね。普段の作詞ではセンテンスを短めに構成しているんですけど、この曲はあえて長めにすることでラジオの雰囲気を感じてもらえるようにしています。あと、FMのパーソナリティはバイリンガルの方が多いじゃないですか。なので、それをイメージして冒頭の「グッモーニン」を極端に英語っぽい発音で歌ってみたりとか(笑)。曲を聴くことで、1本のラジオ番組を聴いた感覚になってほしかったので、最後には提供クレジットも入れましたしね。

──「皆様の愛情の提供でお送りいたしました!」という。

それです! あとこの曲の作詞では、僕と同じくラジオを愛している鈴村健一さんが書く歌詞をイメージしていたところも実はあって。すずさんが持っている言葉で伝える力は本当にすごいと常々思っているので、僕なりの解釈で参考にさせていただきました。

寺島拓篤

勇気を与えられる1曲になったら

──「光の在処」は寺島さんが挑戦した新たなタイプの楽曲になりますね。BiSHなどの曲を手がけるSCRAMBLESが作曲とアレンジで参加しています。

これを機にBiSHさんの曲をいろいろ聴かせていただいたんですけど、どれも言葉では言い表せないエモさがあるなと感じたんですよ。理屈じゃない部分で、心にグッと刺さってくるというか。今回いただいた楽曲もまたそういった魅力を持った素晴らしいサウンドだったので、これにどんな歌詞を乗せようかということはかなり考えましたね。

──ほかの曲と比べて言葉数がかなり少ないですよね。

そうなんですよ。だから使う言葉を厳選していく作業がものすごく難しかったですね。この詞では、僕の好きなあるマンガの主人公にその周囲にいる登場人物が、さらには僕自身がかけてあげたい言葉というのをイメージしました。人間が自分の中に自信を見出すためには、周りからの評価が必要だったりする。でも、そこで見出した自信はもともと自分の中に息づいていたものだとも思うんですよ。だから、この曲では「大丈夫。君は自分1人でも立てて、しっかり歩んでいけるんだよ」というメッセージを伝えたいなって。僕も含め、自信を持てない人たちに勇気を与えられる1曲になったらうれしいですね。

──ボーカルでも新しい表情が見えていますよね。

キーがすごく高かったんですよ(笑)。そのことによって、今まで自分でやれてなかったけど憧れていた歌い方が、ほんの少し形になったかなという気はしています。胸に刺さるエモさを意識して歌いましたね。