寺島拓篤が8月25日にニューシングル「Reincarnate」をリリースした。
寺島にとって約2年ぶりのシングルの表題曲は、テレビアニメ「転生したらスライムだった件 第2期」第2部のエンディング主題歌。雨上がりに光が差していく美しい光景が浮かぶような、ドラマティックな1曲だ。カップリングにはゲームアプリ「転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚」の主題歌「ファントムライツ」、そして夏のラブソング「sweet mirage」が収録される。
また9月22日には、昨年12月に行われた寺島初のオンラインライブの模様を余すことなく収めたライブBlu-ray「TAKUMA TERASHIMA ONLINE LIVE 2020 4th STAGE ~ASSEMBLE~」の発売も決定。ライブ本編にリハーサルや当日のメイキング映像も加えた、ファン必見の内容となっている。
音楽ナタリーではこれらのリリースを記念して寺島にインタビューを行い、作品に込めた思いをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 星野耕作
「転スラ」との出会い
──今年の6月6日でアーティストデビューから丸9年が経ちましたね。
音楽活動に関しては自分から「あれやろう」「これやろう」と能動的に動くタイプではないので、気付いたら9年経っていたというのが正直なところではありますね。とはいえ、いよいよ10年という節目が見えていると考えれば、それはもう本当にすごいことで。純粋にありがたいなと思います。
──ここまでの活動で、アーティストとしてどんなものを築いてこられたと思います?
自覚的ではないにせよ、築いてこれたものはきっとあるんだろうなとは思いますね。1つ感じるのは、いろんなタイミングがうまく重なり合ったことで生まれた楽曲は結果としてすごくいいものになるんだなということ。その最たるものが自分にとってはアニメ「転スラ」(「転生したらスライムだった件」)との出会いだと思うんです。デビュー以来、作詞をずっとやってきた中で、タイアップに向いている自分の性質がはっきり出たのが「転スラ」との出会いで生まれた楽曲(「Nameless Story」「メグルモノ」)だったような気がするんですよね。主観では「もっとうまくできたかもな」と思う部分はありますけど、一歩引いて客観的に見てみれば、作品から受け取ったものが自分の性質とうまく噛み合ったことを感じることができるというか。それによって生まれる商品価値みたいな部分は今後スタッフも含めて、より意識していけたらいいなと思うところではありますね。
──寺島さんの紡ぐ歌詞は、作品に対しての寄り添い方がハンパないですからね。それは「転スラ」だけに限らず、すべてのタイアップ曲に言えることだと思うのですが。
そうですね。初めてアニメタイアップをやらせていただいた「sunlight avenue」(テレビアニメ「SERVAMP-サーヴァンプ-」エンディング主題歌)のときと比べれば、活動を重ねてきたことで1歩も2歩も踏み込んだモノ作りの思考が生まれているような気がします。自分としてはそういうやり方が普通だと思っているんですけど、どうやらそうではないのかもしれないと思い始めてるところもあったりして(笑)。そういう意味では歌詞の部分に注目してもらえれば、「あ、寺島っぽいな」という一貫性を感じてもらえるようにはなってきているのかもしれないです。
そろそろ花を咲かせてみてもいいのかな
──そんな寺島さんから約2年ぶりのニューシングルが届きました。表題曲の「Reincarnate」は、ご自身にとって大事な作品である「転生したらスライムだった件 第2期」第2部のエンディング主題歌として作られたものですね。
第2期の第2部で描かれるエピソードにマッチした曲を、というオーダーをいただきました。曲に関してはスタッフにお任せしていたんですけど、上がってきたものがとても素敵な仕上がりだったので、僕もすごく気に入りましたね。これまでの「転スラ」エンディング曲はわりと元気で明るい、抜けのいいテイストだったんですけど、今回はちょっと暗めに切なく始まって、そこから光に向かっていくような流れになっているところがいいなって。
──作詞はもちろん寺島さんが手がけています。
曲のイメージを踏まえたうえで、どんな歌詞を書くのがいいのか、かなり頭をひねらせました。原作を何度も読み返し、何を軸にして、どこの視点で書くかをじっくり考えていって。過去の「Nameless Story」と「メグルモノ」の2曲では、いつか芽吹き、花が咲くことをイメージしながら種を撒いているようなことをちょっとずつ書いていたんですよ。なので、今回はそろそろ花を咲かせてみてもいいのかなと。今回のシーズンでは主人公のリムル自身にも、取り巻く仲間たちにも大きな変化があるんですけど、それによって描かれるのがとても素敵な世界なので、それを花に例えながら言葉選びをしていった感じですね。全体的には、その世界を一番客観的に見ていたであろうリムルのユニークスキル・大賢者からの視点でまとめていきました。最初はまあまあ悩みましたけど、大賢者視点で書くことを決めてからはわりとスムーズに書くことができたと思います。
──言葉選びでこだわった部分はありますか?
今回は、あんまり聴き慣れないけど知っている言葉を入れることで、聴いてくださる方の耳に残るかなという狙いがあって。テレビサイズから作っていく中で最初に「殺風景」という言葉を使ってみたところすごくキレイにハマったので、その流れで「金輪際」という言葉を使ってみたりもして。自分でも今まで使ってこなかったし、こういった言葉が入った歌詞をあまり見たことがなかったので、面白いかなって思ったんですよね。
──Bメロに促音を持ったワードをたくさん盛り込んでいるのも印象的でした。それによっていいリズムが生まれていますよね。
そうですね。そこはもうサウンドに寄り添うことでポンポンとハマっていきました。作曲家さんが乗せてくれているシンセメロに音楽的な意図が感じられたので、そこに抗うことなく、リズム感やグルーヴ感を大事にしながら感じたままの言葉をワーッと乗せていった感じです。
──そこはある種、パズル的な感覚が求められるところなんでしょうね。
そうそう。そこがすごく面白いところでもあって。直感的に見つけた言葉がうまい具合にハマっていくのは本当に楽しいんですよ。まあ、最後の2、3ピースになるとなかなか言葉が見つからなくなってしんどくなったりもするんですけど(笑)。今回も1番のBメロはスムーズに進んだので、すごく気持ちよかったです。
自分ってこういう歌い方もできるんだ
──作曲とアレンジは、「転生したらスライムだった件 第2期」第1部のエンディング主題歌「STORYSEEKER」をSTEREO DIVE FOUNDATIONとして担当していたR・O・Nさんによるものですね。
実はこの「Reincarnate」と「STORYSEEKER」のサウンドにはリンクするギミックが仕掛けられていて。最初に聴いたときはびっくりしましたね。シリーズ化している「転スラ」の流れをちゃんと汲んでくださるR・O・Nさんは本当にさすがだなと。どちらもご自身が作曲・アレンジされているからこそだとは思いますけど、そもそもクリエイターとしての器が大きくないとこういうことってなかなかできないと思うんですよね。個別の曲ではあるけど、小さなつながりがあることでその存在感や価値が変わってくることに気付けたのがうれしかったです。曲同士が音のギミックでつながっていくというのも、すごく「転スラ」っぽくて、ふさわしいなと思います。
──寺島さんも「Nameless Story」と「メグルモノ」を踏まえて今回の歌詞を書いたわけですから、そこは同様ですよね。
確かにそうかもしれないですね。シリーズものであるからこそ、楽曲においても連続性を大事にしたい気持ちが強いというか。それってシリーズの中で複数の楽曲を担当させてもらえるからこそできることなので、本当にありがたいことですし。
──「Reincarnate」はサウンドのドラマティックな展開に合わせたボーカルもすごく素敵でした。レコーディングはいかがでしたか?
いやー、難しかったです(笑)。きれいなメロディにきれいな声を乗せるのが自分はすごく苦手なので、レコーディングはスタッフと相談しながら、かなり考えてやりましたね。音の輪郭をどうはっきりさせるかとか、強弱をどうつけるのかとか、普段とは違ったやり方をいろいろ試したりもして。結果的には、「あ、自分ってこういう歌い方もできるんだ」という可能性を感じることもできたので、すごく充実した面白い経験になりました。実は今回、2曲目の「ファントムライツ」の歌を先に録っていたんですよ。そこで歌い方についてかなり悩み、考え抜いたうえで「Reincarnate」のレコーディングに臨めたのもよかったのかもしれないですね。
次のページ »
「メグルモノ」っぽいけど、全然違う曲