スカート|メジャーの中で変わった環境と変わらない音

スカートが10月31日にニューシングル「遠い春」をリリースした。昨年10月にアルバム「20/20」でメジャーデビューを果たしたスカートのメジャー第1弾シングルとなった今作には、映画「高崎グラフィティ。」の主題歌に使用された表題曲「遠い春」のほか、新曲「いるのにいない」、インディーズ時代からファンの間で人気の高い「返信」の再録バージョン、テレビ東京で放送中のドラマ「忘却のサチコ」のオープニングテーマである「忘却のサチコ」が収められている。

音楽ナタリーでは澤部渡にインタビューを実施し、シングルの収録曲4曲のほか、タイアップ曲の提供やテレビ番組への出演などが続いているメジャーデビュー以降の活動に対する思いを聞いた。

取材 / 臼杵成晃 文 / 近藤隼人 撮影 / 後藤倫人

まだこんな音楽を作っている人がいたんだ

──昨年10月にアルバム「20/20」でメジャーデビューして以降、地方のラジオ番組に出演するなどメディアへの露出が多くなりましたね。

最初は自分でCDを出して、そのあとカクバリズムから1stシングルを、去年ポニーキャニオンから1stアルバムをリリースして。不思議なものでデビューを3回経験しているんですよ。その都度少しずつ外に広がっていく感覚があったんですけど、特にメジャーデビューしてからはメディアへの露出が多くなって人と接する機会がわかりやすく増えましたね。

──こんなふうに見られていたんだという新鮮なリアクションもありました?

「まだこんな音楽を作っている人がいたんだ」という受け止め方をされることが多かったですね。届かないところには届いていないものなんだなと痛感しました。

──テレビ番組への出演でも着実に成果を残していますよね。AbemaTV「バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく」の企画「高校生フォークソングGP」では審査員を務めていて、ほかのコメンテーターには言えない音楽的なことを的確に話しながらも、専門的になりすぎずキャッチーなことを言っているように思います。

それは環境だと思いますよ。周りの人がやりやすくしてくれているし、僕自身が音楽の理論をちゃんとわかっていないところもあるから専門的になりすぎないんじゃないですかね。

──そういったテレビ番組出演も含め、自身の存在が世間に広まっていることに対して戸惑いはないんですか?

ないですね。まだ自分の中での実感や周りの反響がフィードバックしきっていないと言うか、ちょっとディレイがあるのかもしれません。でもこの間地元のスーパーで買い物をしていたら、若い店員に「『日村がゆく』観てます!」って言われて「来るとこまで来たな」と思いました(笑)。

澤部渡

メジャー1stシングルとして地味すぎないか

──音楽的なところでは何かが大きく変わったわけではなく、誠実に1つひとつを積み重ねながらメジャーで活動している印象があります。「メジャーだからこうしなきゃ」というような思いはない?

ありませんね。「20/20」のときに「メジャーに行くならもっとキャッチーな曲を書かなきゃまずいんじゃないの?」という話も出たんですけど、ポニーキャニオンが「いや、この11曲でいきましょう」と言ってくれて。今回のシングルでも同じような話があって、本当は夏頃にリリースするつもりでいたんですよ。事務所の社長(カクバリズム代表・角張渉氏)も「夏なんだからもっとパーカッシブに派手な感じでいこうよ」みたいなことを言っていたんですが(笑)、そんな中で頼まれ仕事がどんどん来て。

──映画やドラマの主題歌や劇伴を担当するだとか、今年は派手なニュースが多かったですね。

そういう仕事をやっていくうちに、自ずと自分に求められているものがなんなのかが見えてきて。別に派手な曲を求められてはいないんだなと感じたんですよね。そんな中、映画「高崎グラフィティ。」の主題歌の「遠い春」という曲ができたときに、この曲がシングル曲でもいいんじゃないかと思えてきたんですよ。ただ、やっぱり地味すぎないかという気もしたんですけど(笑)。

──この地味なビートの曲をメジャー1stシングルとして出すのがなかなか面白いところです。

フォークロック調で。いまだに少し心配どころなんですけどもね(笑)。ポニーキャニオンさんの懐が深すぎます。