顔ジャケを出すのは勝負を懸けるとき
──今回のシングルは、盤の形がジャケットになっているという珍しい仕様です。ジャケットに対しては以前からこだわりが強いですよね。
顔ジャケのCDを出したほうがいいとよく言われますが、僕の顔が写ったジャケットにしちゃうと音楽と比較して誤解が生まれてしまうと言うか、センチメンタルな曲を歌うおじさんには見えないじゃないですか(笑)。それをよりいい方向に転がすためにこういう工夫したジャケットにしています。
──音楽の持っている本質をジャケットで伝えようと思ったら、自分の顔ではないと(笑)。
もっと認知されてきたら違うんでしょうけどね(笑)。
──もともとマンガをアイデンティティの1つとして自分の中に持っている人が、音楽を表現するうえでイラストを使うのはすごく納得できます。
今回はデザイナーの森(敬太)さんが「いい絵描きさんがいるから作品を見てみてよ」って山崎(由紀子)さんを紹介してくれたんです。今までのマンガっぽいジャケットとだいぶ毛色が違うんですけど、シングルでは実験的なことをやろうと思っていて。森さんがいいと思ったことに付いて行く形でしたが、1度「静かな夜がいい」(2016年11月発表のシングル)でやったようなことを踏襲しました。これまでは自分の世界を表現するために好きなマンガ家さんに声を掛けていたんですけど、それって実は閉じこもっていることなんじゃないかと思うようになって、「20/20」や「静かな夜がいい」のジャケットを描いていただいた久野(遥子)さんもマンガ家と言うよりイラストレーターという認識だったんです。今はしっかりとした理由付けがない限りマンガっぽいジャケットには戻れないのかもしれないと思っていて、悩んでいるところです。
──とは言え、ここで顔ジャケを出すのも違うと(笑)。
顔ジャケを出すのは勝負を懸けるときだと思うので、リスナーの方は楽しみにしていてほしいですね(笑)。
変わらないことに挑んでいる
──メジャーデビューして変わっていないところもあれば、変わったところもあると思うんですけど、そういう自分の中の揺れ動きについてはどう捉えています?
僕としてはとにかく変わりたくないんですよ。諸先輩方がどんどん変わってカッコいいアルバムを作っていった後ろ姿を見ているので、自分はそれに続いちゃいかんだろうという気持ちがどっかにあって。でも変わらないことのほうが難しいということが少しずつわかってきて、今は変わらないことに挑んでいるつもりです。どうしても変わっていくことはあると思うんですけど、バンドに飽きたから打ち込みの音楽をやるようなことはしたくなくて。楽器の響きを大事にして音楽を作り続けたいですね。
──来年正月には主題歌と挿入歌も書き下ろした映画「そらのレストラン」が公開されるなど今後もタイアップが続きますが、次のアルバムを作ることは考えているんですか?
考えてます! でも頼まれ仕事が本当に多くて、この1年自分の曲を作る時間がほとんどなくて。既発曲を含め7、8曲は溜まってきてるんですけど、マジでヤバいんですよ。
──今まではもっとハイペースでした?
もともと曲を書くのが早いほうでもないんですけど、今は時間がなくて焦ってますね。
──タイアップとかは関係なく、作りたい曲がまだまだあるんですか?
それがまだあるんですよね。自分でもびっくりしてるんですけど。30歳になってようやく働き盛りになったのかもしれないです(笑)。メジャーデビューして今までの夏休み人生を精算する作業に追われている気がします(笑)。
──アルバムに対するこだわりもあります?
はい。シングルじゃ難しいけど、アルバムになら入れられるだろうという曲があるんですよね。アルバムの流れでしか聴かせられないと言うか。本当はそういう曲をシングルで出せたらいいんですけど、まだアルバムで実験していってる感じです。
──ちなみに、今一番楽しいことってなんですか?
昔の延長で活動させてもらっていることですかね。バンドメンバーと遠征してライブして帰ってくるっていう、今までやっていたことがちょっとずつ規模が大きくなっているのがすごく楽しくて。あとレコーディングも楽しいですね。昔みたいにライブで磨いてレコーディングするという流れではなくなってきたんですけど、みんながちょっとずつうまくなって、何度もスタジオに入らなくてもいいテイクを録れるようになってきたことがうれしいんです。
──11月から12月にかけて開催されるシングルのリリースツアーもいつもと変わりなく?
そうですね。バンドメンバーが慣れてきたのもあるんですけど、とにかく最近ライブで調子がいいことが多くて、すごくいい時期に入ってきたんじゃないかなと思っているんです。今回のツアーではシングル曲以外は自由に選曲できるということもあって楽しみにしています。アルバムに向けて書き溜めている曲も試していこうと思っています。
- ライブ情報
Major 1st Single「遠い春」リリースツアー“far spring tour 2018” -
- 2018年11月18日(日) 宮城県 enn 2nd
- 2018年11月25日(日) 北海道 札幌KRAPS HALL
- 2018年12月2日(日) 福岡県 INSA
- 2018年12月14日(金) 大阪府 Shangri-La
- 2018年12月16日(日) 愛知県 Tokuzo
- 2018年12月19日(水) 東京都 東京キネマ倶楽部
- スカート「遠い春」
- 2018年10月31日発売 / ポニーキャニオン
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初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / PCCA-04696 -
通常盤 [CD]
1296円 / PCCA-04697
- CD収録曲
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- 遠い春
- いるのにいない
- 返信
- 忘却のサチコ
- 初回限定盤DVD収録内容
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“eight matchboxes, seventy one cigarettes” at Shibuya CLUB QUATTRO 03.10.'18
- さよなら!さよなら!
- 視界良好
- ハル
- だれかれ
- 月光密造の夜
- CALL
- 魔女
- 回想
- ガール
- スカート
- シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。昭和音楽大学卒業時よりスカート名義での音楽活動を始め、2010年12月に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」をリリースした。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2014年12月にはアナログ12inchシングル「シリウス」をカクバリズムより発表。2016年4月にはカクバリズムよりオリジナルアルバム「CALL」、11月には初のCDシングル「静かな夜がいい」を発売した。2017年10月にポニーキャニオンよりメジャーデビューアルバム「20/20」、2018年10月に表題曲が映画「高崎グラフィティ。」の主題歌に使用されたメジャー第1弾シングル「遠い春」をリリース。澤部はスカートでの活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴ほか多数のアーティストのライブでサポートを務める。またトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴withゴロニャンずには正式メンバーとして所属している。
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