音楽ナタリー Power Push - SHE'S
「人と向き合う」ことで新たなフェーズへ 待望のメジャーデビュー作を語る
「次世代を担うピアノロックバンド」として注目度急上昇中のSHE'Sが、6月8日リリースのシングル「Morning Glow」でいよいよメジャーデビューを果たす。結成から5年が過ぎ、ミニアルバム3部作のリリースや初のワンマンツアー「She'll be fine -chapter.0-」の開催などを経て、彼らはどのように成長したのか? 音楽ナタリーでは、メンバー全員にインタビューを実施。新作についてはもちろん、現在の心境も含めて話を聞いた。
さらに先日行われたばかりの「Morning Glow」のミュージックビデオ撮影現場にも密着。楽曲の世界を彩るMVの裏側に迫った。
取材・文 / 田山雄士 撮影 / 西槇太一
みんなに対して歌ってるから、みんなと歌いたい
──まずは、今年3月の初ワンマンツアーについて聞かせてください。
井上竜馬(Vo, Key, G) 前作の「She'll be fine」が「ロックバンドでいたい!」っていう意志表示を込めた1枚でもあったので、ライブも必然的に大きく変わりました。ライブに対しての姿勢をより正せたし、5カ所とも毎回ちゃんと最高を更新できたと思いますね。
服部栞汰(G) お客さんの数も増えてるし、僕らが今まで積み重ねてきたものが実感できました。
井上 楽曲の変化に伴って、ライブでの伝え方も「みんなに対して歌ってるから、みんなと歌いたい」というふうになってきました。伝えてるつもりでも伝わってないことが多い気もしてたので、ステージングはもっと大げさに、暑苦しいくらいでいいんじゃないかなと。
広瀬臣吾(B) ツアー前に「こうしよう」みたいな話をしたわけじゃないけど、全員が自然にその方向へ進んでいったよな?
井上 ライブ中に気付くもんな。横にいる2人(服部、広瀬)が自分よりも前のめりになってたら、負けてられんなとハッとしたり。
木村雅人(Dr) うん、それはわかりやすく見えるようになった。3人のテンションが上がってるときは、僕も一層熱を込めて叩いてますね。
いつものSHE'Sらしく、強気で行けばいい
──今回のシングルのタイトル曲「Morning Glow」は、前作のラスト2曲「遠くまで」「Curtain Call」と地続きにある印象で、すごく美しい流れだと感じました。「みんな」に向けたラスト2曲と同様に、「あなた」に向けた楽曲にすることを強く意識したんですか?
井上 いえ、ごく自然にそうなりました。僕はいつも、無意識に抱いてる純粋な思いをそのまま作品にしてて。できあがったあと、今言っていただいたような流れのよさに気付いたんですけど、自分が正直に歌い続けてきた結果として当たり前のことやなと。曲がらずにここまで来られたからこそ歌えたのが「Morning Glow」ですね。
──じゃあ、メジャーデビュー曲であることも考えすぎず?
井上 1発目やし、明るくてアッパーな曲にしたいというのはありましたけど、そんなに肩の力を入れることもなかったですね。やっぱり「Curtain Call」がこれまでのお客さんにも新しいお客さんにも受け入れられた事実は大きくて、それを踏まえていつものSHE'Sらしく、強気で行けばいいと思った。ストリングスを生で入れて、スケールはデカく、洋楽のメロディっぽさを出して。
広瀬 余計なことを考えず、力まずにできた気がする。
服部 「Morning Glow」は竜馬がデモをある程度作ってきたから、ギターのアプローチもしやすくて。今回の3曲では一番スムーズにできたよな?
広瀬 うん。デモを聴いて「勢いよくやりたいんやろな」ってのがすぐわかったんで、こねくり回さずに衝動を大事にして。
人と向き合うようになって、自分のことも深く見られるようになった
──タイトルの響きから、「Oasisの『Morning Glory』と関係あるの?」とか聞かれそうですね。
井上 そもそもはね、歌詞に出てくる「morning haze」(朝もや)がタイトルやったんですよ。それをもうちょい前向きにしたくて、朝焼けに変えたらこうなりました。でも、Oasis大好きやし「ええか」って(笑)。
──ライブでの伝え方と同じく、歌詞に使う言葉を変えることも多くなってますか?
井上 はい。伝わる表現というのは、より心がけてます。
服部 歌詞のこだわりは強くなってると思いますね。ああでもないこうでもない、って何回も作り直して、スタジオに入るごとに変わってたりするんで。
井上 レコーディングの前日、当日まで悩む。
広瀬 一番時間かけてるの、そこだよな。
井上 「Morning Glow」はサビをまるまる入れ替えたりしてますね。出だしにしても、最初は「夢から目覚めることをいつかは知ってしまう」みたいな感じでもっと抽象性や暗さがあったけど、完成した歌詞はそうじゃなくて「夢から目覚めたところ」というか。その先の具体的な話を書いてるんです。「しまう」ってことは、何かに怯えてるわけじゃないですか。なので、それがわかるように直して。Bメロも「雨上がりのコンクリート」だったのを、太陽が出てるなら情景がちゃんと思い浮かぶ「射す」がふさわしいだろうな、とか。
──「Morning Glow」の「後退も前進も 停滞すらも 全て意味あって 僕は 僕へ辿り着けた」、「日曜日の観覧車」の「もう間違い探しはやめにして その先を見据えよう」も胸に残るラインでした。
井上 歌う対象が大きく変わってきてるんですよね。初期の頃はすごく内省的な詞世界だったけど、今はちゃんと人と向き合うようになって、自分のこともより深く見られるようになったから、そういう言葉がスッと出てくるんだと思います。
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CD収録曲
- Morning Glow
- 日曜日の観覧車
- Time To Dive
DVD収録内容
- Live Footage "She’ll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016"より、東京公演の模様を収めたダイジェストライブムービー(計5曲収録予定)
- SHE'S Major Debut Single「Morning Glow」RELEASE TOUR ~The Everglow -chapter.1-~
- 2016年7月20日(水)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / and more - 2016年7月26日(火)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / 雨のパレード - 2016年7月28日(木)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO
出演者 SHE'S / GLIM SPANKY
SHE'S(シーズ)
井上竜馬(Vo, Key, G)、服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)からなる4人組ピアノロックバンド。2011年に結成して地元大阪を中心に活動を続け、2012年に行われた「閃光ライオット2012」ではファイナリストに選出された。2014年7月に初の全国流通盤となるミニアルバム「WHO IS SHE?」を発表し、2016年5月には2ndミニアルバム「WHERE IS SHE?」をリリース。2016年2月に3枚目のミニアルバム「She'll be fine」を発売し、3月に全国5都市のワンマンツアー「She'll be fine -chapter.0-」を開催した。6月にリリースするシングル「Morning Glow」で、Virgin Musicからメジャーデビューを果たす。