楽曲という形だけで捉えてほしくない

──さて今回ミニアルバム「WHO IS SHE?」がリリースとなります。自分たちの作品がリスナーにどう受け止められたらうれしいなっていうのはありますか？

「WHO IS SHE?」は今の僕らにできる全部を詰め込んでいて、7曲すべて違う要素が入っているので楽しんでもらえたらと思います。ただ、単純に楽曲っていう形だけで捉えてほしくないっていうのはありますね。

──というと？

作品というだけで完結せずに受け取った人それぞれの中で意味合いが変わって、何か考えるきっかけのようなものになればいいなって。僕が曲を作るときに見ていたシーンがあったとしても、聴いた人には違うシーンが浮かぶというか、それぞれの受け取り方で変化していってほしいなと。曲を垂れ流しにして「なんかメロディがいいからいいな」っていうだけじゃなくて、考えるきっかけになればいいなって思います。

──楽曲が、聴いた人のなんらかのモチベーションになるようその人の中で変化してほしい？

はい。最近の若い世代って悩んでる子すごく多いと思うんです、学校での悩みとかよく聞くし。なので音楽がその子の日常を考えるきっかけになればなって思いますね。僕もバンドを始めてから自分と向き合う時間が増えて、自問自答を繰り返すようになって。それは苦しいんですけどつらくはないっていうか……よく「今を生きろ」って言葉を見るじゃないですか。それが過去を顧みないで生きるっていうふうに捉えられがちなんですけど、僕はこれまでのことを受け入れて「じゃあ今どう生きれるんやろ」って昇華してから生きていけてる、前を向けてるんです。

音楽は1つのツールでしかない

──実際にライブをしたり楽曲を聴いたファンから、井上さんが期待したリアクションを得たことはありましたか？

はい。ライブが終わって物販のところにいたら、ライブを観た人が来てその人の話を聞かせてくれたりとか。「カッコよかったです」とか言ってもらえるのもいいんですけど、「こういう曲を聴いて、自分にもこういうことがあって、こう思いました」ってその人の話を聞けたりしたとき僕は音楽をやってきてよかったなって思いますね。

──それでアーティストとしての達成感を得られると。

ですね。もちろんそれがすべてじゃなくて、CD買ってくれる、ライブに来てくれるっていうのもうれしいですけど。実は、僕はアーティストってそんな崇高なものかなあ、もっと身近でいいんじゃない？っていつも思ってて。ほかの人は違うかもしれないけど、自分はステージに上がってもいち人間のつもりやし。音楽は1つのツールでしかないっていう気持ちがあるんです。いち人間として音楽に食われず、井上竜馬として何か救うことができたらって思ってます。だからこそ僕は人から話しかけてもらえるっていうのがうれしいんですよね。アーティストも放課後や仕事帰りに「お茶していかない？」みたいな身近な存在でいいんじゃないかなって思いますね。

「ピアノロックバンドです」と言い続けたい

──今回はバンドとして初の全国流通盤をリリースし、これからどんどんファンを広げていくことになると思います。初めてSHE’Sに触れる人たちになんて自己紹介していきますか？

シンプルに「ピアノロックバンドです」っていう感じですね。といってもBen Folds Fiveとかほかのバンドを聴いてきた人からしたら「ピアノロックじゃないやん」て思うかもしれないですけど。でも自分たちは今生きているものを昇華しながら自分なりのピアノロックをやってるので、「ピアノロックバンドです」を言い続けながらそれを僕らが作っていけばいいんちゃうかなあと思います。そしていつか今の人たちがピアノロックバンド＝SHE'Sって連想してくれたらってうれしいですね。

──アルバムのオープニングナンバー「Voice」とか、音源を聴いてまず「うわーこういう音デカい会場で聴きたいなー！」ってすごく思ったんですけど、今後バンドの活動規模を大きくしていきたいっていう目標はありますか？

もちろんあります。U2やColdplayのライブ映像を観て「すげーっ！」て思いますし、自分たちもそれを目標にしていて。ただ大きくなってからライブハウスツアーもしたいですね。自分が地元のライブハウスのコミュニティで育ってきたんで、ツアーで地元のバンドマンと一緒にやって、バンドマンが僕らを見てスゲーって思ってくれるというか。ほんまにやりたくても現実を見て辞める就職を選ぶみたいな人も多いと思うんですけど、バンドをやめてしまう人も多いんです。でも僕は音楽をやるっていうのが現実じゃないとは思ってないんで。

──「WHO IS SHE?」をリリースしたあと、10月には東阪でワンマンライブが待ってますね。次バンドとしてやりたいことは？

ライブイベントをやりたいですね。これまで同世代のバンドでやったりはしたんですけど、上の世代も下も巻き込んだ意味のあるイベントをやりたいなと。今はワンマンに必死過ぎて鮮明にイメージできてませんが（笑）。