音楽ナタリー PowerPush - SHE'S

井上竜馬が描き続ける“彼女”の姿

素の自分を歌いたい

──今作には別の「君」が存在していて、その人との実体験に基づいた話を歌詞にしていると。ただリード曲の「Leave Me」をはじめ、「WHO IS SHE?」収録曲の印象として感じたのは「別れ」でしたが。

【MV】SHE'S/ Leave Me

そうですね。前の作品(2ndデモ音源「VOICE FROM DISTANCE」)からずっとなんですけど、前に付き合っていた人のことを歌ってるのが多いなと自分でも思います。7曲のうちの5曲がそのことですし。

──自分の実体験を歌詞に投影する、っていうスタイルはバンド初期から?

以前は何か作品を観て、それについての歌詞を書いたりとかもしていたんですけど、それは自分にフィットしなかったんです。歌ってる自分とシンクロしないというか、素の部分が薄くなるように感じて。だから単純に自分のことを歌ったほうがわかりやすいやろって思ってシフトチェンジしました。

──率直な気持ちを歌詞で、ありのまま表現したいと考えてるんですね。

そうですね。あと僕は「俺はこれをこうだと思うんだぜ。だからお前もこうしろ」「共感してくれ!」ってバーンと意見を発することは歌っていなくて。

──いわゆるメッセージソングみたいに、直接的な呼びかけをしたくない?

はい。自分が苦手っていうところもあるんですけど、生きてる中で意見が変わっていくのは必然やと思うし、変わってしまったときに歌えなくなるのがイヤやなって。だからそうならないよう自分が感じたことやこういうことがありましたって話を、変な言い方ですが曖昧にして歌ってます。

──歌詞にはフワッとした感情描写もありつつ、「キッチンに立って 箸を持つ」など具体的なシーンが浮かぶ表現もありますよね。

わかりやすく、かつみんなが自由に受け止めてもらえるように言葉選びをしようって心がけてますね。歌詞をまわりくどいものにはしたくないんです。わかりにくい言葉を並べて「世界観スゲーなー」でまとめられたくないっていうか。

キャッチーじゃなくてもいい

──続いて作曲面についてお伺いしたいんですが、SHE'Sの楽曲はどうやって作られるんでしょうか?

これも自分の体験や思い出がきっかけで、最近だと一人旅をした旅先で作ったりします。その場の雰囲気に合わせて「これは森の中だから黄緑……いやもっと霞んだ感じかな」ってぼやっと色をイメージして作り、ためてたフレーズを自分の中であとから構築していく感じです。それでサビや大まかな構成をまず僕が作ってメンバーに「こういう感じやねんけどどうする?」「俺はこう思ってるんやけどどう?」って話したり、アレンジを任せたりする感じですね。初期はもっとキャッチーでシンプルなサウンドだったんですけど、最近は徐々に自分らしさやSHE'Sらしさを考えるようになっています。

──自分らしさやSHE'Sらしさ、とは具体的にどういったものになるでしょうか?

井上竜馬(Vo, Key, G)

僕は浄化されるような音に惹かれているんで、それを追求したいなと。あと、バンドとしては楽曲にドラマ性を持たせるというか、すうっと聴けてしまってあっさり曲が終わるのを避けたいっていうか。実験的なことをやろうとは思っていないんですけど、定番というか王道の構成の中にもドラマチックな展開を持たせたいと思っています。

──別れをテーマにした歌詞があったとしたら単純に悲しい曲ができるのかなと思うんですが、「Photograph」など今作だとすがすがしさを感じる楽曲もあったので意外だなあと感じました。

前作に関しては悲しいものを悲しいままに、すごく暗く作っていたんですが……今回はその1人の忘れられない人について歌っていながらも、その人に対しての気持ちがそれだけじゃなくなったというか。

──そこは心情の変化が反映されていると。

ええ。スッキリしたとかではないんですけど、感謝というか、元気でいてくれたらいいなとかそういう気持ちみたいなのも生まれてきたので。それもあって暗いものを出したくないなと思って曲を書いているので、あからさまな別れのみっていうだけでなく、別れを経て自分は今こうだっていう気持ちで表現しています。

──アーティストとしては曲を作るだけでなく、ライブなど繰り返しパフォーマンスしていくことにもなると思うんですけど、パーソナルな部分をさらけ出し続けていくって……わりとヘビーな作業ですよね。

そうですね。歌うときに完全に思う相手ができてしまっていて、歌詞の情景描写も思い返しながら歌うんですけど、確かにヘビーっちゃヘビーです(笑)。ただ感情を入れやすいから変にきばらんでいい、すぐ歌詞に入り込んでいけるんでわかりやすくできていいとは思います。

SHE'Sワンマンライブ
  • 2014年10月4日(土)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2014年10月12日(日)東京都 TSUTAYA O-Crest
SHE'S(シーズ)

SHE'S

井上竜馬(Vo, Key, G)、服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)からなる4人組ピアノロックバンド。2011年の結成から地元大阪を中心に活動を続け、2012年に行われた「閃光ライオット2012」ではファイナリストに選出されている。2014年7月23日に初の全国流通盤となるミニアルバム「WHO IS SHE?」をリリース。10月には東京および大阪でワンマンライブを実施する。