ナタリー PowerPush - ショーン・レノン×Cornelius
攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears
日米同世代アーティストが描く“サイボーグの愛”
Cornelius Interview コーネリアス 小山田圭吾 インタビュー
「攻殻」の世界観を理解しているショーンにお任せで
──ショーンさんの起用は小山田さんが声をかけたのがきっかけだとお聞きしましたが、その経緯を具体的に教えてもらえますか?
オノ・ヨーコさんのライブでロンドンに行ったときに「最近何やってんの?」とかしゃべってて、「『攻殻機動隊』の音楽をやってるんだ」って話をしたら、彼は以前から「攻殻」のファンだったって言ってたから、ちょうどいいかなって。最初のsalyu × salyuも(参照:「攻殻」ED曲でsalyu × salyu、坂本慎太郎、Cornelius再び)、Salyuが「攻殻」ファンだってところから始まったんですよ。「攻殻」知ってて、好きな人というのがいいかなって(笑)。
──ショーンさんと一緒に「攻殻」の楽曲を作る上で、どのようにアイデアを固めていきましたか?
ショーンとは元から音楽的に重なる部分も多いし、特別に意識することはなかったですね。ショーンに寄せたというわけじゃないけど、彼のソロにはメロウで少し悲しげなラブソングみたいな作風があるので、その方向で作ると今回の「攻殻」には合うかなと思ってました。
──楽曲制作の作業は日本とニューヨークでネットを介して?
うん、一切顔を合わせずに。オケを聴いてもらって、歌詞と歌を乗せてもらって。
──歌詞の方向性についてはお任せですか?
今回はラブストーリーの側面があるので、こちらからはラブソングにしてほしいというリクエストはしました。ショーンはきっと僕より「攻殻」の世界観を理解しているので(笑)、まあお任せで大丈夫かなと。
──今回もビデオクリップが制作されましたが(参照:Cornelius×ショーン×辻川幸一郎「攻殻」EDテーマPV完成)、前の2曲とは違って今作は人間が出てこない、SF度の強い仕上がりになっています。ロボットなんだけど、「攻殻」のサイバーな雰囲気とは違うレトロなロボット感で。
ショーンはニューヨークにいて出演は物理的に難しいから、じゃあどういう映像にしようかと辻川(幸一郎)くんに考えてもらって。映像の中にCGで出てくるのは、ショーンが昔僕の誕生日に描いてくれた絵の中のキャラクターなんですよ。そういうのは僕からリクエストして。
──スイッチとかフレームの感じはいい具合にレトロなんだけど、ロボットに接続されたコードが抜ける演出で見える端子がUSBだったりするのがいいSF感だなと(笑)。
そうだね(笑)。ワイヤーフレームはちょっと80年代っぽいし、スイッチは60年代っぽいけど、今の技術じゃないとできないことで。この手の部分は辻川くんが自分の手で演技してるんです。手術用の手袋かなんかを着けて、ちょっと特殊メイクをして。
同じ時代に活動し共感し合う2人
──今回ショーンさんにはメールでいくつかの質問に答えてもらったのですが、「攻殻」以外にもいろんな日本のアニメを観ていたそうで。
そうそう。子供の頃からよく日本に来てたらしくて、テレビもけっこう観てたみたい。「ウルトラマンタロウ」がすごく好きなんだって。本名がショーン・タロー・レノンだから思い入れが強いって(笑)。
──小山田さん自身の音楽についての印象を聞いたところ、ご自身の1stアルバム「Into The Sun」と同時期に出た「FANTASMA」でファンになったと。
海外で「FANTASMA」が発売されたのが同じ時期で、最初に海外でライブをやったとき……テキサスだったんですけど、同じタイミングでライブをやってて、僕も観に行ったんです。ライブにはサポートでチボ・マットの本田ゆかさんも入っていたし、ショーンはBuffalo Daughterとも仲がよかったから、その頃に知り合って。ジャケットも似たようなオレンジ色で、雑誌のレビューでもよく並んで載ってたんです。
──今回の楽曲制作について聞いたところ、ショーンさんは「多彩なギタリストとしての顔を初めて知りました」と答えていて。確かに最近はYMOのサポートだったり、ギタリストとしての音楽活動の比重も大きいですよね。
ギターを弾くのはすごく楽しくて、ここ数年はずっとギターばっかり弾いてて。単純に楽しいんですよ。自分が中心となってやるのはけっこう大変というか、ほかのこともやんなきゃいけないから(笑)。本当はギター弾いてるだけのほうが楽しいんです。昔はそんな機会あまりなかったんだけど、たまたまYMOの人たちに誘われたりしたので、やるようになって。
──YMOとかオノ・ヨーコさんのようなレジェンドたち、おおげさに言えば歴史上の人物みたいな人たちの横でギターを弾くのってどういう気分なんだろうって個人的にすごく気になってたんですけど(笑)。
あははは(笑)。不思議ですよね。後ろから全体を観てて「あれ……なんだろうこれは」とはたまに思う(笑)。
──あとショーンさんは小山田さんの楽曲について「タイミングを考えることが興味深かった」とおっしゃっていて。
よくショーンに言われるんだけど、ヨーコさんのレコーディングのときとかも「リズムの組み合わせが面白い」って。たぶん歌の入るタイミングとか打点とか、そういうことだと思うんですけど。
──「Heart Grenade」のメロディや譜割は基本的にそのまま?
うん、そのまま。リズムとメロディの組み合わせが難しくて大変だったって言ってた。ショーンと共演する機会は多かったけど、2人で一緒に曲を作ったことはなくて。今回それが実現できたのはうれしかったですね。同じ時代に活動していて、いろんな場所に誘ってくれたり、いろんな世界を見せてくれたショーンと、彼がずっと好きだったアニメ作品で一緒に曲を作ることができてよかったなって。
──お互いがソングライターだから、今回は小山田さんが作・編曲でショーンさんが作詞と歌という組み合わせでしたけど、次の機会には別のパターンもありですよね。
そうだね。今回は「攻殻機動隊」の世界に合わせて作ったけど、もっと生っぽいものもできるだろうし、いろんな形があるんじゃないかなと思います。
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Cornelius(コーネリアス)
小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「SENSUOUS」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。