音楽ナタリー PowerPush - 澤野弘之
多忙極める作曲家が届ける 2曲+55曲の“好きな楽曲たち”
澤野弘之がボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]名義の両A面シングル「X.U. | scaPEGoat」と、澤野名義で手がけた任天堂WiiU用ゲームソフト「XenobladeX」のサントラ盤を5月20日にリリースした。
SawanoHiroyuki[nZk]「X.U. | scaPEGoat」の2つの表題曲はいずれもテレビアニメ「終わりのセラフ」のテーマソングに採用されている。オープニングテーマ「X.U.」はボーカリストに新人Gemieを迎えたダンサブルなデジロックチューン。一方、エンディングテーマ「scaPEGoat」は、ニューカマーバンドSurvive Said The Prophetのボーカリスト・Yoshとともに作り上げた、退廃的でどこかルーズなロックナンバーとなっている。そして同時発売の「XenobladeX」のオリジナルサウンドトラックは、11のボーカル曲や劇中曲のリアレンジバージョンなどを含む55曲を4枚組CDにパッケージした大ボリュームの1作だ。
今回音楽ナタリーでは両作のリリースを記念して澤野のインタビューを実施。シングルとサントラ盤の聴きどころ、制作秘話を聞くとともに、作曲家・澤野弘之が愛される訳を探った。
取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類
今も好きなことをやらせてもらってるだけ
──前回音楽ナタリーで澤野さんを取材させていただいたのが、アニメ「アルドノア・ゼロ」のオープニングテーマ「&Z」のリリース時でした(参照:澤野弘之「&Z」&「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」特集)。
そうですね。3カ月前。
──そしてその3カ月後となる今、「終わりのセラフ」のオープニングテーマとエンディングテーマが収録された両A面シングル「X.U. | scaPEGoat」をリリースする。さらに澤野さんは現在その「終わりのセラフ」や任天堂WiiU用ゲームソフト「XenobladeX」、それからNHK連続テレビ小説「まれ」の劇伴も担当なさっています。
めちゃくちゃ光栄なことですよね。
──ご自身で分析するに、作曲家・澤野弘之はなぜ映像の世界で愛されるんでしょう?
愛されてるのかなあ(笑)。僕がどうこうっていうよりも、むしろこれまでに携わらせていただいた映像作品のおかげなんじゃないですかね。「アルドノア・ゼロ」もそうだし「進撃の巨人」や「機動戦士ガンダムUC」や「医龍」もそうなんですけど、それぞれ皆さんが注目している大きなタイトルじゃないですか。そういう作品を観た業界の方が僕の名前を知ってオファーをくださったっていうことが連続したおかげで、今の僕があると思っているので。「進撃の巨人」の劇伴の話にしても、その前に「ギルティクラウン」という作品で劇伴を担当したからいただいたものだと思いますし。どちらも荒木(哲郎)監督の作品なので。だから光栄なんですよね。誰かが僕の音楽を「いいね」と思って必要としてくれているわけですから。
──その「僕の音楽」の特徴って具体的には?
「これが『僕の音楽です』なんてことはおこがましくて思ってないんですけど、例えば劇伴なのにボーカル曲を入れたりするのはそうなのかな?っていう気はしています。セリフと歌声がカブっちゃうから劇中にボーカル曲が入ることを嫌う人もいるんですけど、それでもボーカル曲が入ることで相乗効果があると思ってくれる制作スタッフやリスナーの方がいてくれることも間違いなくて。ボーカル曲を劇伴に使うこと自体は僕オリジナルのアイデアではないんだけど、自分の楽曲に歌が重要なものであることは事実ですね。まあ「単純に好きだから」っていうのがボーカル曲を作る一番の理由だったりはするんですけど(笑)。
「&Z」とは違う、[nZk]3枚目ならではのシングル曲
──澤野さんは取材のたび、そう繰り返していますけど、今回のシングル曲の1つ「X.U.」もやっぱり好きなように作った感じですか? アニメの制作サイドから「デジタル感の強いダンスミュージックで」っていうオファーがあるわけでは……。
曲についての細かな話は特になかったですね。「終わりのセラフ」のオープニング曲とエンディング曲を担当させてもらえることになって「オープニングはやっぱりアップテンポな曲のほうがいいかな」っていうところからイメージを膨らませただけというか。「前回の『&Z』もアニメのオープニングでアップテンポだったけど、あの曲はバンドサウンドだったから、今回はよりデジタル感を強くして違いを出せればいいかな」とか「SawanoHiroyuki[nZk]としては3枚目のシングルだからちょっと違うテイストにしたいな」って考えてみた感じ。言ってしまえば、曲を作った日の気分で、こういうアプローチになりました(笑)。
──それってやっぱりすごいことですよね。ノリで作ってるっぽいのに「終わりのセラフ」のオープニングテーマとしてちゃんと機能しているわけですから。
劇伴やテーマソングを作ってるときにアニメのことが頭にないわけじゃないですから。それはホントに無意識的なことだから、どう「終わりのセラフ」を意識しているのかは言葉で説明しにくいし、好きなように作っているのも全然ウソではないんだけど、やっぱりアニメのことは念頭にあって。それが曲にも作用しているってことなんでしょうね。
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- SawanoHiroyuki[nZk] ニューシングル「X.U. | scaPEGoat」 / 2015年5月20日発売 / DefSTAR Records
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / DFCL-2133~4
- 通常盤 [CD] / 1350円 / DFCL-2132
澤野弘之(サワノヒロユキ)
1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズや、「アルドノアゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、そのほか、アーティストへの楽曲提供、編曲を手がけるなど、精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いた新プロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品として、「機動戦士ガンダムUC」シリーズの楽曲も共作したAimerとの、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表し、オリコン週間アルバムランキングトップ10入りを果たす。また同年夏にはイツエの瑞葵(Vo)がmizuki名義で歌うSawanoHiroyuki[nZk]名義のシングルにして「アルドノア・ゼロ」第1期のエンディングテーマ「A/Z | aLIEz」を、2015年2月には同じくmizukiを迎えたSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。さらに春には、NHK連続テレビ小説「まれ」やWiiU用ゲーム「XenobladeX」のサウンドトラック、テレビアニメ「終わりのセラフ」の音楽プロデュースも担当。「終わりのセラフ」のオープニングテーマとエンディングテーマをパッケージしたシングル「X.U. | scaPEGoat」と「XenobladeX」を5月にリリースした。