音楽ナタリー PowerPush - 澤野弘之

作曲家と歌い手とアニメとリスナーに捧げる シングル「&Z」とボーカルベスト盤

作曲家・澤野弘之がソロプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]名義のシングル「&Z」と、澤野名義のベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」を2月4日に同時発売する。

「&Z」の表題曲は現在オンエア中のテレビアニメ「アルドノア・ゼロ」第2期のオープニングテーマ。澤野は昨夏放送されていた「アルドノア・ゼロ」第1期のエンディングテーマ「A/Z」「aLIEz」と、同シリーズのサウンドトラックも手がけており、「&Z」は「A/Z」「aLIEz」同様、ボーカリストにmizukiことイツエの瑞葵(Vo)を迎えた1曲となっている。そしてアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」は「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」など、これまでに澤野が手がけたアニメのサウンドトラック群の中から、小林未郁、mizuki、Aimerらが歌うボーカルナンバーを選りすぐったベストアルバムだ。

今回ナタリーではシングルとアルバムのリリースを記念して2つの企画を用意。まずは澤野とmizukiに「&Z」の魅力や、澤野のボーカリスト選定術、レコーディングスタイルなどについて聞き、その澤野のボーカルナンバーの魅力が凝縮されたベストアルバムの聴きどころを澤野自身に解説してもらった。

取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類

 
mixiチェック

澤野弘之×mizukiインタビュー

「この人だ」と思った作曲家と「カッコいい」と思った歌い手

──澤野さんとmizukiさんが共作したのは2014年9月リリースの両A面シングル「A/Z | aLIEz」のときが……。

澤野弘之 初めてですね。

──澤野さんはなぜmizukiさんというボーカリストに白羽の矢を?

左からmizuki、澤野弘之。

澤野 昨年「アルドノア・ゼロ」のエンディングテーマとして「A/Z」と「aLIEz」を作って、そこから「じゃあボーカリストを探そう」ということになって、オーディションとまではいかないんですけど、いろんな方に会わせてもらっていて。その中にmizukiさんもいらっしゃって、資料を見せてもらった上で、実際にお会いして仮歌を歌っていただいたときに「あっ、この人だな」と。

──「あっ、この人だな」と思った理由は?

澤野 うーん……。

mizuki 本当は「この人だ」なんて思ってなかったんじゃないですか?(笑)

澤野 いやいやいや! もちろん適当なことを言ってるわけじゃないんですけど、うまく言葉にできないんですよ。ある意味、直感で選んでますから。だからなんて言えばいいんだろう……? 最初に資料としていただいたmizukiさんの音源っていうのは、当然イツエの楽曲だったんですけど。イツエってバンドの音は、まさに“ロックバンド”のそれなんですけど、mizukiさんのボーカルはいわゆるロックとはまた違くて。もっと伸びやかだし、優しげだったんですよね。そこにこれまでご一緒してきたAimerさんたちとは違う印象を受けたし、あと「じゃあ、逆に彼女が僕のロック寄りの楽曲を思いっきりロックボーカリストらしく、強く歌ったらどうなるんだろう?」っていう期待と面白さを感じたんです。その点においてはAimerさんと似てますね。ロックをほとんど歌ったことのなかった彼女に僕の曲を歌ってもらったらどうなるんだろう?って思って声をかけてますから(参照:Aimer「Midnight Sun」「UnChild」特集)。

──一方、mizukiさんはなぜ澤野さんに資料を送ろうと?

mizuki 実は私が手を挙げたわけではなくて、澤野さんの制作チームの方がイツエのことをご存じだったらしくて。澤野さんがボーカルを探してるっていう話が持ち上がったときに私の名前を出してくださったそうなんです。

──澤野さんから「『A/Z』と『aLIEz』のボーカルに」という話があったときのお気持ちは? 今のお話だとmizukiさんにとっては降って湧いたような話だったわけですよね。

mizuki 聴かせていただいた楽曲がカッコよかったので「ぜひ挑戦してみたい」っていう感じでしたね。

繊細なアー写にビビる歌い手と、歌と音の距離感を考える作曲家

──これまでにイツエ以外で歌うこと、つまり客演の経験は?

mizuki あるバンドのレコーディングにゲストボーカルとして参加したことがあります。

──じゃあ澤野さんとの共演に際しても特に構えることはなかった?

mizuki いや、すごいビビりましたよ。

澤野 何を言ってるんですか。最初の打ち合わせのときから全然ビビってなかったじゃないですか(笑)。

mizuki めちゃくちゃビビってましたよ! ほら、澤野さんのアーティスト写真ってこういう感じじゃないですか。

──「こういう感じ」(笑)。

mizuki すごく繊細そうだったので、難しい方だったらどうしよう?ってドキドキしてました。

澤野弘之

澤野 ああ、確かにアーティスト同士の初対面ってちょっと緊張するものがありますよね。僕もイツエのPVやアーティスト写真でしかmizukiさんのことを見てなかったから「どういう方なんだろう?」って思ってましたし。それにバンドの方には当然「バンドであること」に対するプライドがあるだろうから「他人の歌なんか歌ってられるかよ!」って人だったらどうしよう?とも思ってましたし。

mizuki だったら会いに行ってませんよ(笑)。

──そりゃそうですね(笑)。

澤野 でも「歌うこと」と「演奏すること」の距離感は絶対に僕とは違うはずだから、どういうスタンスで活動している方なんだろう?っていうことは気になってました。まあ結局実際に会ってみて安心することになるんですけど(笑)。

mizuki お互いそうですよね(笑)。

「澤野弘之らしさ」が刻印された楽曲群

──先ほどmizukiさんは澤野さんの楽曲がカッコよかったから参加したとおっしゃってましたけど、そのカッコよさって具体的に言葉にできます?

澤野 ほらっ、今度はmizukiさんが言葉を探す番ですよ!

mizuki あはははは(笑)。でも好き嫌いの話を言葉にするのってホントに難しいですね。例えば「A/Z」は明るくてダンサブルで、「aLIEz」はシリアスでタイト。実はちょっと違うタイプの2曲なんですけど、でもどっちの音にもちゃんと澤野さんのセンスが感じられて。あと澤野さんはよく歌詞にこだわってはいないっておっしゃるんですけど……。

mizuki

──Aimerさんとの対談でもそうおっしゃってました。

mizuki でも音と同じようにどの詞にも私が思う澤野さんらしさが散りばめられているんですよね。で、その澤野さんらしさが、カッコいいんですよね。……澤野さんは私を呼んだ理由をちゃんと言葉にしてくださったのに、全然具体的な言葉にできてなくて本当に申し訳ないんですけど(笑)。

──でも確かに、今回「&Z」と同時発売される澤野さんのボーカルベストを聴いても、作風は年代やタイアップ先のアニメによって違うのに、どの曲も一貫した澤野さんらしい手つきを感じました。ただ、だからこそ澤野さんが歌詞を気にしてないっていうのがすごく不思議で。

mizuki たぶんまったく気にしてないわけではないはずなんですよ。絶対にこだわってはいらっしゃるはずなんだけど……。シャイなんですかね?(笑)

Contents Index
澤野弘之×mizukiインタビュー
澤野弘之インタビュー
SawanoHiroyuki[nZk] ニューシングル「&Z」 / 2015年2月4日発売 / DefSTAR Records
期間生産限定盤 [CD+DVD] 1620円 / DFCL-2108~9
通常盤 [CD] 1350円 / DFCL-2107
CD収録曲
  1. &Z
  2. 0.vers
  3. No differences [nZk ver.]
  4. aLIEz [mZk ver.]
  5. &Z(TV size)
  6. &Z(TV size -English ver.-)
  7. &Z(instrumental)
期間生産限定盤DVD収録内容
  • 「aLIEz」MUSIC VIDEO(アルドノア・ゼロ ver.)
澤野弘之 ベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」2015年2月4日発売 / 3500円 / DefSTAR Records / DFCL-2106
「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」
収録曲
  1. βios / Mika Kobayashi
    (アニメ「ギルティクラウン」より)
  2. The Reluctant Heroes / mpi
    (アニメ「進撃の巨人」より)
  3. Battle Scars / David Whitaker
    (アニメ「青の祓魔師」より)
  4. Wild War Dance / Aimee Blackshleger
    (アニメ「戦国BASARA弐」より)
  5. Blumenkranz / Cyua
    (アニメ「キルラキル」より)
  6. EGO / Mika Kobayashi
    (アニメ「機動戦士ガンダムUC」より)
  7. Hill Of Sorrow / mpi
    (アニメ「ギルティクラウン」より)
  8. Me & Creed / Mika Kobayashi
    (アニメ「青の祓魔師」より)
  9. Till I Die / CASG
    (アニメ「キルラキル」より)
  10. Ready to Go / David Whitaker
    (アニメ「ギルティクラウン」より)
  11. Light your heart up / Aimee Blackshleger
    (アニメ「キルラキル」より)
  12. friends / mpi
    (アニメ「ギルティクラウン」より)
  13. Rë∀L / Cyua
    (アニメ「ギルティクラウン」より)
  14. Call me later / Mika Kobayashi
    (アニメ「青の祓魔師」より)
  15. Suck your blood / mpi & Benjamin Anderson
    (アニメ「キルラキル」より)
  16. DOA / Aimee Blackshleger
    (アニメ「進撃の巨人」より)
  17. Before my body is dry / Mika Kobayashi & David Whitaker
    (アニメ「キルラキル」より)
  18. RE:I AM / Aimer
    (アニメ「機動戦士ガンダムUC」より)
  19. A/Z / SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
    (アニメ「アルドノア・ゼロ」より)
澤野弘之(サワノヒロユキ)
澤野弘之

1980年東京都生まれの作曲家、編曲家。幼少期よりピアノに親しみ、10代のうちに坪井伸親に師事。現在はテレビドラマ「医龍」シリーズや、アニメ「アルドノアゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなどの劇伴を手がけるかたわら、室屋光一郎らとのプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]も始動させ、積極的にライブ活動を展開している。2014年6月には「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌「RE:I AM」と、「同episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌「StarRingChild」を歌ったAimerとのコラボレーションアルバム「UnChild」を発表した。また2014年夏放送のテレビアニメ「アルドノア・ゼロ」ではイツエの瑞葵(Vo)がmizuki名義で歌うSawanoHiroyuki[nZk]名義のシングルにして「アルドノア・ゼロ」第1期のエンディングテーマ「A/Z | aLIEz」を発表。さらに2015年2月には同じくmizukiを迎えたSawanoHiroyuki[nZk]の新作にして、「アルドノア・ゼロ」第2期オープニングテーマ「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。なお同年春から放送のNHK連続テレビ小説「まれ」のサウンドトラックと、テレビアニメ「終わりのセラフ」の音楽プロデュースを手がけることも決定している。