SAKANAMONインタビュー|新作EPテーマは“ライブ”、ギターロックに原点回帰

結成15周年を迎えたSAKANAMONが、3月6日にEP「liverally.ep」をリリースした。

彼らが今回テーマに掲げたのは“ライブ”。リハーサルから帰宅までの情景が「MIC CHECK ONE TWO」「DUAL EFFECT」「すっぽんぽん」「おつかれさま」という4つの新曲で表現されている。

活動初期から同期音源を取り入れて、ライブパフォーマンスの可能性を探ってきたSAKANAMON。そんな彼らが本作でボーカル、ギター、ベース、ドラムのみというシンプルな編成にこだわった理由とは? インタビューを通して「liverally.ep」が体現する引き算の美学に迫る。

取材・文 / 安部孝晴撮影 / 高橋夢萌

3人だけで完結するもの

──だいぶ昔の話ですが、「ストリートファイターズ」(テレビ朝日系で放送されていた音楽番組)でSAKANAMONのライブ映像を観て、当時高校生だった僕は一瞬で心をつかまれました。

藤森元生(Vo, G) ストファイ!? 僕らのメディア初露出ですね(笑)。

──それからあっという間に時が経ち、昨年は結成15周年という節目のタイミングでした。この15年間で、3人の関係性に変化はありましたか?

藤森 変わってないかな? もともと友達から始まっているので、ずっとそんな感じです。

木村浩大(Dr) あんまり一緒に飲まなくなったってことくらいかな(笑)。

森野光晴(B) 3人だけでっていうのは減ったね。

木村 大人になると忙しいね。

──15周年イヤーもすごく忙しそうでしたね。

藤森 遠い昔のように感じるなあ。「HAKKOH」(2022年10月にリリースされた7thアルバム)をリリースするところから始まって、そのあとツアーを2本やって。コロナ禍明けでいつも通りのライブができたからすごく楽しかった。で、なんかこういう感じ(「liverally.ep」)になりました(笑)。

SAKANAMON

SAKANAMON

──「liverally.ep」の構想はツアー中にできあがったんですか?

森野 コンセプトを設けた作品にする、という案はもっと前からありましたね。「HAKKOH」でストリングスの入った曲を作ったから、今度は3人だけで完結するものを作ろう、みたいな話になって。そこから派生して、EPのテーマが“ライブ”になりました。

──確かに音源を聴かせていただいたとき、“バンド水入らず”という印象がありました。「浮遊ギミック」(2011年9月にリリースされた1stミニアルバム)を彷彿とさせる雰囲気もあって、どこか懐かしかったです。

木村 今回は肉体的だよなあ。最近は同期音源を入れることに慣れすぎちゃってたかもね。

藤森 また以前のようなギターロックに戻ってみるのもいいな、というのはずっと思ってたので。今回のEPはそういう感じです。

──本作のレコーディングで特にこだわったことはありますか?

藤森 ……どうだろう、レコーディングのときはわりといつもフラットで。

森野 僕は今回、機材のセッティングをライブのときと同じにしました。全曲通してセッティングを変えないほうが、ライブ感が出るかなと思って。

木村 ドラムに関しては2曲目だけタッチを変えてます。あと心がけたのは、3テイクで終わらせることですかね。3テイク以上は録れないんですよ。パワーが足りなくなって、音量が落ちちゃうので。

──“ライブ”というテーマから生まれた4曲。それぞれ個性豊かですよね。

藤森 「MIC CHECK ONE TWO」だけは、前から寝かせていた曲で。リハーサルについて歌った曲だから、ここからどうにか流れを作れないかなと思いました。この曲をもとにほかの曲を書き下ろしていった感じですかね。

──本作の制作を進めていく中で、“SAKANAMONにとってライブとは”という根源的な問いにも直面したのでは?

藤森 そういうことも考えました。ツアーをすると結局いつも「ライブって楽しいな」というところに行き着くので、やっぱりそれを伝えたいなと。「DUAL EFFECT」は特にそうかな。この曲ではライブのリアルタイム性に着目していて。例えば「分かち合ったって事が 良かった 楽しかった これが何かって 音楽って奴だ」という歌詞は、ステージで歌われたらお客さんがその場で共感できる言葉だと思うんですよ。

藤森元生(Vo, G)

藤森元生(Vo, G)

──そうですね。ライブハウスの熱気の中で聴きたい歌詞です。

藤森 最近1人でしゃべるお仕事(「Artistspoken」を使用した音声配信)もしていて、自分の曲について解説すると改めて思うんですが、演奏している様子をリアルタイムで実況していくような曲、実はけっこう多くて。最近で言うと「光の中へ」(2023年5月にリリースされた「ぼっち・ざ・ろっく!」の劇中バンド・結束バンドの楽曲)の「生まれたよ一つ 新しい世界が」っていう歌詞もそう。演奏中の気持ちをその場で歌ってる。

木村 メタ思考っぽいのかな。

藤森 うん。そういうのが好きなんだなって改めて気付きましたね。

確定的に投げかける

──バンド結成から15年が経って、作詞方法に変化はありましたか?

藤森 やっぱり言えることは増えてきましたね。

木村 確かに、昔は「音楽って奴だ」とか絶対言わなかったよね。

藤森 そうだね。確定的に投げかけるのってすごく勇気がいるから。昔はやっぱり、おこがましいかなとか思っちゃってましたね。誰が言ってんだって。それをこう、自信を持って言えるようになったのは、やっぱり15年のキャリアのおかげなのかな(笑)。

──「おつかれさま」の歌詞もそうですよね。サビの最後で「言わせてよ」と投げかけたあと、ストレートに「おつかれさま」という言葉が来る。ちゃんと言うんだ!と思いました(笑)。SAKANAMONってこういうとき言わないイメージがあったんです。

藤森 なるほど、わかります(笑)。

──「矢文」(2019年8月にリリースされた楽曲)とかも「貴女が」で終わるし。

藤森 言わないですよね。

──それが今回ははっきり言っていて。

藤森木村 大人になったんですよ(笑)。

藤森 15周年のときに……あの、えっと、なんだっけ……。サブスクじゃなくて……フライアゲインじゃなくて……。

木村 どうした急に、めちゃくちゃだな(笑)。

木村浩大(Dr)

木村浩大(Dr)

藤森 あの、お金もらうやつ……。

森野 クラファンね(笑)。

藤森 クラファン! そう、クラファンでいっぱい、あの、いいアルバムを作らせていただいて。

森野 今、「いっぱいお金もらって」って言いそうになったでしょ(笑)。

木村 ひどいひどい(笑)。

藤森 クラファンを経て、素直に「ありがとう」とか、やっぱり伝えるべきだなと思って。そういうところからどんどんタガが外れてるというか、大人になってますね。

木村 言わなきゃわからないことも多いからね。

藤森 もういい歳なので、「おつかれさま」くらいは言わせてください!

一同 (笑)。

──事前にいただいた資料によると、「おつかれさま」の歌詞は藤森さんから森野さんと木村さんに向けて書かれたものらしいですね。

森野 初めて知ったんだけど(笑)。

藤森 あ、いや! これはね……。

森野 これはあえて誇張して書いてる?(笑)

藤森 いや……あの、誇張してます。

木村 おい(笑)。

森野 俺らのことだけじゃないよね?

藤森 そう、2人だけじゃないよ。ただ、単純に2人がすごく疲れてそうだったから。それがこの曲を作るきっかけになってたりはする。

森野 そうだったんだ。初耳だな(笑)。

──一緒にいて「疲れてそうだな」と思う場面があったんですか(笑)。

藤森 SAKANAMONの周り、みんな疲れてるから癒されたらいいなと思って。

森野 なんか気を使わせちゃって、すいませんね(笑)。