SAKANAMONが1月17日にニューアルバム「・・・」(テンテンテン)をリリースした。
2017年11月に結成10周年を迎えたSAKANAMON。今回のアルバムはこれを記念して制作されたもので、バンドのこれまでの歩みをストレートに表現したオープニングナンバー「ロックバンド」のほか、外国人に付きまとわれるストーリーを描いた「DAVID」、ゲストボーカリストであるタカハシマイ(Czecho No Republic)とせんせい(東京カランコロン)が藤森元生(Vo, G)を取り合うという妄想ソング「SYULOVER」など、SAKANAMONらしいユーモアあふれるナンバーが多数収録されている。
音楽ナタリーではメンバー3人にインタビューを実施し、10周年を迎えた今だからこそ完成したという作品について話を聞いた。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 草場雄介
運命のようにできあがった「ロックバンド」
──「・・・」は結成10周年を意識しながら制作したのでしょうか?
藤森元生(Vo, G) 一応そうですね。前作の「cue」(2017年5月リリースのミニアルバム)をリリースしてから、“次は10周年”というのを常に意識しながら曲作りをしていました。
──制作にあたって、メンバー間で相談したことは何かありましたか?
藤森 あまりないですね。「アルバム作りますよ! 10周年だから10曲入りにしよう!」って。それぐらいです。
森野光晴(B) 制作はけっこういつも通りだったよね。ただオープニングナンバーでリード曲の「ロックバンド」が10周年を迎えた今の思いを歌った曲で。この曲があることで、10周年のアルバムとして締まってるんじゃないかなと。
──「ロックバンド」は、バンドを続ける楽しさと苦しさが詰まったような歌詞と、エモーショナルなサウンドが印象的です。この曲はアーティスト支援プラットフォームWIZYを利用して制作されるドキュメンタリー映画「SAKANAMON THE MOVIE ~ サカナモンは、なぜ売れないのか ~」の主題歌ですが、映画のことも考えながら曲作りをしたのですか?(参照:10周年SAKANAMONがアルバム発売、映画「サカナモンは、なぜ売れないのか」制作も)
藤森 いや、映画の話が来る前に曲はできてました。ホントにたまたま、僕たちのドキュメンタリー映画に合いそうな楽曲に仕上がっていたんです。別にこんな10周年っぽい曲を書けとも言われてないし、僕が勝手に「1曲ぐらいこういう曲があったほうがいいな」と思って作っただけなので。それから映画を作ることが決まったときに、映画のテーマにぴったりだから主題歌にしよう、アルバムのリード曲にもいいねって。すべてが偶然と言うか……言い方を変えれば運命ってやつですかね?(笑)
食うし、寝るし、バンドやるし
──この曲の歌詞を書くにあたって、どんなことを考えましたか?
藤森 なぜSAKANAMONは10年続いたのか、なぜこんなに続けているのか、なぜやめなかったのかとか。そういうのを考えるのは初めてのことでした。
──今までは考えたことがなかったんですか?
藤森 はい。なんでバンドを続けてるのか、そういうことは全然意識してなかったんです(笑)。意識しなかったからうまくやって来れたのではという説もあります。
木村浩大(Dr) そう、なんか続けるのが当たり前みたいになってたよね。食うし、寝るし、バンドやるし、みたいな感じで、人生の中に普通に組み込まれてた。
森野 SAKANAMONっていうのがまず生活の中心にあるので。意識してないからこそ、やめるっていう選択肢はまずなかったですし。
──本当に自然に続けて来たんですね。だからこそ「なんでこのバンドを続けてきたんだろう」なんて思うこともなかった。
藤森 それもいろんな説があるんですけど……一番は僕がバカだということですかね。
木村 藤森バカ説ね。
藤森 メンバー2人が考えてることとか、ほとんど聞いたことないし。
木村 俺はさっき言った通りだから。別に、バンド以外に特にやることもなかったし……って俺もバカ説あるな、これ。
藤森 あはは(笑)。でもそういうスタンスでいられることってすげえいいと思うんですよ。だって、嫌になったらやめるだけだし!
木村 嫌になったらやめるって……お前、本当にガキか! すごいな!(笑)
藤森 でも2人に「やめたい」って言おうと思ったことが今までなかったっていうことだからね。すごいことだよ。
10周年で起きた初めての衝突で大爆発
森野 あとは、3人がお互いあんまり興味ない説もあるよね。
木村 ああ。
森野 けっこうみんなマイペースだし、我関せずな部分があって。それぞれのテリトリーがあるから、そこを侵さないようにずっとやってきたのが衝突しない要因だったんじゃないかな。だからケンカもしないし、解散の危機みたいなものも全然なかったんですけど、10年近く経つとちょっとずつズレが出てきて。去年から今年にかけて「1回足並みをそろえたほうがいいね」って、初めて話し合いをしたんです。レーベル移籍のタイミングでもあったから、そこでちゃんと3人で「売れたいね」っていうのも意識し始めたかもしれない。10周年だし盛り上げたいねって。
──それまで我関せずのスタンスでいた3人が、去年から今年にかけて衝突したということですか?
木村 そうですね。メンバーと長いこと一緒にいるし、ライブにおいても音楽においても感覚が共有できてるし、なんか安心してた部分があったんでしょうね。でも話してみたら、いつの間にか考えがずいぶんズレてしまっていて。
藤森 みんな気い遣いだから、それぞれ不満を持ってても言わないようにしてきたしね。
──あんまり踏み込んで面倒なことになるのが嫌だった?
藤森 そうですね。衝突するのが嫌でした。
森野 衝突するのが嫌で避けていたら、大爆発しちゃったんです。普段から衝突してるバンドだったら、何か起きても慣れてるから大丈夫なのかもしれないけど。
木村 電車と電車が正面からぶつかったぐらいの感じになっちゃったもんね(笑)。あのとき1カ月ぐらいしゃべらなかったよ、元生と。
──じゃあ相当な大ゲンカだったんですね。
木村 大ゲンカと言うか……冷戦? この人を信用しちゃいけないと思っちゃいました。
藤森 それに対して俺は「もう嫌になったらいつでもやめていいからねー」みたいなスタンスで。
木村 そう。最低だなー、この人は何も考えてないんだなーって。
藤森 バカ説を改めて立証したね(笑)。
──そこからどうやって関係を持ち直したんですか?
藤森 居酒屋で話し合いました。
木村 飲みながらね。
森野 今さらながら、話し合うことは大事だなと思いましたよ。10周年を目前にして。「わかっててくれてるだろう」って思うべきじゃないし、ちゃんと気持ちの足並みをそろえなきゃいけない。
木村 俺もそう思った。1個1個ちゃんと考えようって。
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「サカナモンは、なぜ売れないのか」は、お客さんがよく言う言葉
- SAKANAMON「・・・」
- 2018年1月17日発売 / TALTO
-
[CD]
2800円 / TLTO-008
- 収録曲
-
- ロックバンド
- STOPPER STEPPER
- 乙女のKANJOU
- DAVID
- SYULOVER
- 凡庸リアライズ
- テヲフル(・・・MIX)
- 反照
- ケーキ売りの女の子
- DAPPI
ライブ情報
- SAKANAMON結成10周年
「・・・」リリース記念ワンマンツアー “延々々” -
- 2018年4月5日(木)香川県 高松TOONICE
- 2018年4月6日(金)広島県 CAVE-BE
- 2018年4月7日(土)福岡県 INSA
- 2018年4月13日(金)宮城県 enn 2nd
- 2018年4月15日(日)北海道 DUCE
- 2018年4月20日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2018年4月21日(土)大阪府 BananaHall
- 2018年4月26日(木)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2018年4月27日(金)石川県 vanvanV4
- 2018年5月19日(土)東京都 Zepp Tokyo
- SAKANAMON(サカナモン)
- 専門学校の同級生だった藤森元生(Vo, G)と森野光晴(B)によって2007年12月に結成された。バンド名には「聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい」という思いが込められている。2009年に木村浩大(Dr)が加入し現在の編成に。2010年9月に1stミニアルバム「浮遊ギミック」を発表し、同年12月にビクターエンタテインメントより1stアルバム「na」でメジャーデビューした。2015年4月に3rdアルバム「あくたもくた」を発売。同作のリリースツアーの最終公演を、過去最大規模の会場である東京・Zepp DiverCity TOKYOで行い大成功に収める。2017年5月には東京・Shibuya eggmanのレーベルであるmurffin discs内のロックレーベルTALTOに移籍し、ミニアルバム「cue」を発表。同年11月に結成10周年を迎え、2018年1月にニューアルバム「・・・」(テンテンテン)をリリースした。