メンバー全員が音楽大学卒業という経歴を持つバンド、マカロニえんぴつが12月6日に初のフルアルバム「CHOSYOKU」をリリースした。疾走感のある四つ打ちサウンドが特徴的だった彼らだが、本作は従来よりテンポを落としたナンバーが多め。ブルースやシティポップなどさまざまなジャンルが、マカロニえんぴつ流のロックナンバーとして昇華されている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、メンバー4人にインタビューを実施。Shibuya eggmanのmurffin discs内レーベル・TALTOへの移籍やサティ(Dr)脱退といった2017年のトピックを振り返りながら、はっとり(Vo, G)が「改めて『音楽って楽しい』と心から思えた」と言う1stフルアルバムができた理由を探った。さらに特集後半には、バンド仲間や関係者が「CHOSYOKU」のリリースに寄せたコメントを掲載する。
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 草場雄介
murffin discsに入って音楽に対する気持ちが変わった
──今回の1stフルアルバム「CHOSYOKU」も含め、murffin discsに入ってからのマカロニえんぴつはいっそうポップで耳なじみのいい楽曲をリリースしている印象があります。
はっとり(Vo, G) murffin discsに入ってから、音楽に対する気持ちが変わったのが大きいかもしれません。それが曲に出ているのかも。
──音楽に対する気持ちが変わった?
はっとり 前の事務所にいたときは、先輩の背中を見る機会があまりなかったんです。でもmurffin discsはレーベルイベントを開催していることもあり、所属バンド同士の交流が多い。そういったイベントでSUPER BEAVERやsumikaといった先輩バンドの圧倒的なステージを観て、音楽に対する向き合い方が変わりました。ライブに臨む覚悟もすごいんですけど、ステージを降りても俺たちみたいな新入りのバンドにすごいよくしてくれて、同じ目線で話してくれるんです。すごい先輩を目の当たりにして自分たちの実力の及ばなさを実感したし、「なんのために音楽をやっているのか」という原点に立ち戻りました。
田辺由明(G, Cho) murffin discsに入ってから、アーティスト精神の部分での刺激は相当受けてるよね。
長谷川大喜(Key, Cho) 俺らのほかに8バンドいるから、楽曲面でもいいとこ取りができると言うか……吸収できることが多いですね。
高野賢也(B, Cho) 距離が近いから、いろんなアーティストの色を参考にできていいよね。自分たちだけでは見えなかったものが、よく見えるようになってきたと言うか。
──ほかのバンドのいいところを積極的に吸収しようという姿勢は以前から?
はっとり はい。変なこだわりは音をつまらなくするし、いろんなものを取り入れたほうが絶対面白いと思っていて。「こういうジャンルをやりたい」「こういう曲をたくさん作りたい」みたいなことは一回も言ったことがないですけど、「とりあえず面白いことをやろうよ」っていうのは結成当時からメンバー間で共有してます。だからほかのバンドのいいところを取り入れるっていうのは当たり前の感覚だし、それぞれが積極的にいろんな曲を聴いてきたと思います。
マカロニえんぴつを組んでからJ-ROCKを聴いた
──ちなみに皆さんは音楽大学在学中に結成されたバンドですが、それぞれ入学時に目指していたミュージシャン像はどんなものだったんですか?
高野 大学で見つけようかと思って。
長谷川 僕はエレクトーンをやってたので、エレクトーンプレイヤーになりたいなと。
田辺 僕はハードロックやヘヴィメタルが大好きだったので、もう完全にそっちを貫こうと思ってました。
──皆さんは、はっとりさんの“友達がいなそう”という独断と偏見によって集められたそうですね。
高野 はい(笑)。僕ははっとりから声をかけられたとき、曲も聴かずに「いいよ、やろう」って答えて。そのあとにはっとりが作った曲を聴いて、今までやったことがないし聴いたことがない音楽だけど面白いなと思いました。
はっとり 「アルデンテ」(2015年1月発売の1stミニアルバム)に入ってる「なんだったっけ」っていう曲のデモを聴かせてましたね。
田辺 僕、当時はハードロックっぽい服装をしてたし髪が長くて、本当に友達があんまりできなかったんですよ。だから声をかけられてうれしかったです。
長谷川 僕はせっかく音大に来たし、声をかけられたからとりあえずやってみようと思いました。組んでからも「全然よくわかんねえわ」って3年ぐらい思ってたけど。
はっとり 長っ(笑)。
──「結成当初からいろんな曲を聴いてきた」ということですが、声をかけられてから具体的にどんな曲を聴いていったんですか?
田辺 僕はハードロックやヘヴィメタルにはめっちゃ詳しいけど、ほかの音楽は全然知らなかったんです。だから最初は勉強がてらTSUTAYAに行って、ジャパニーズロックのCDをたくさん借りてました。
はっとり 「日本の曲も聴いてみるかあ」みたいな(笑)。
長谷川 ちょっと中二病っぽい(笑)。
田辺 決して中二病ではないです(笑)。murffin discsに入ってから、さらにいろんなタイプのJ-ROCKを聴いてます。2000年代初頭と今じゃ、ロキノン系のサウンドも全然違うし。
長谷川 僕も田辺くんと一緒で偏ってました。もともとジャズばっかり聴いていたから、このバンドを始めるまで歌モノの要素が自分の中に皆無だった。それで少しずつJ-ROCKやJ-POPを聴いていって……最近やっと消化できたような気がします。
メンバー全員が殻を破って意見するようになってきた
──邦楽を聴いて消化できたことが、今作の曲作りにも反映されているんでしょうか?
長谷川 それもありますけど、ここに来て自分たちのもともと持ってるものが生かされてると思います。僕だったらジャズとか。
はっとり 最近、曲作りが面白くなってきたよね。今までは俺がアレンジして、ほぼ完成したものをみんなで合わせることが多かったから。
長谷川 murffin discsに入って初めてリリースした「s.i.n」(2017年2月リリースの3rdミニアルバム)あたりから、ほかのメンバーも殻を破って意見するようになった気がする。
はっとり みんないろんなものを観たり聴いたりして、手札が増えてきたよね。特にギターは自分が弾く楽器でもあるから、田辺が弾くリフに関してもこれまでは「こうじゃなきゃダメ」って押し付けてた部分があった。でも最近はギターソロとか絶対田辺に考えてもらってます。
──なぜ皆さんは、曲作りの中ではっとりさんに意見するようになったんでしょう?
高野 やっぱりmurffin discsに入って、いろんなバンドに刺激を受けたことが大きいと思います。
はっとり 今の事務所に入る前の俺たちは、今1つ“バンド感”を自分たちで感じられなかったんです。今はいろんなバンドに刺激を受けて、各メンバーが自分のポジションとかやるべきことを自覚していると言うか。その意識が意見交換をすることにつながったのかなって。
高野 それまではほかのバンドとの交流もあんまりなかったよね。
はっとり 打ち上げとかも苦手だったからね。でも今は「打ち上げに出てなんぼでしょ」っていう気持ちがあります。対バン形式のイベントだと、本番中は楽屋でもなんとなくみんなピリピリしてて。バンドマンは人見知りが多いし、変なライバル心もあるし。でも“打ち上げマジック”っていうのがあって、打ち上げで急にしゃべれるようになるんですよ。ボクシングが終わったあとの選手同士の握手のように、お互いを認め合うと言うか。
長谷川 同じパート同士で「いいライブだったよ」って言い合う(笑)。
はっとり そうやってほかのバンドと関わることが増えたことも、“バンド感”を感じることができた要因だと思います。
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今の心境がダイレクトに詰まった“別れ”のアルバム
- マカロニえんぴつ「CHOSYOKU」
- 2017年12月6日発売 / TALTO / murffin discs
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[CD] 2700円
TLTO-007
- 収録曲
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- ミスター・ブルースカイ
- 夏恋センセイション
- MAR-Z
- girl my friend
- MUSIC
- クールな女
- 夕色
- 眺めがいいね
- 洗濯機と君とラヂオ
- イランイラン
- 春の嵐
- 「マカロックツアーvol.5 ~朝食抜いたら超SHOCK篇~」
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- 2018年3月30日(金)宮城県 enn 3rd
出演者 マカロニえんぴつ / パノラマパナマタウン / and more - 2018年4月1日(日)北海道 SOUND CRUE
出演者 マカロニえんぴつ / パノラマパナマタウン / and more - 2018年4月6日(金)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
出演者 マカロニえんぴつ / and more - 2018年4月7日(土)愛知県 CLUB ROCK'N'ROLL(ワンマンライブ)
出演者 マカロニえんぴつ - 2018年4月8日(日)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
出演者 マカロニえんぴつ / and more - 2018年4月12日(木)香川県 高松TOONICE
出演者 マカロニえんぴつ / and more - 2018年4月14日(土)福岡県 Queblick
出演者 マカロニえんぴつ / and more - 2018年4月15日(日)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE(ワンマンライブ)
出演者 マカロニえんぴつ - 2018年4月19日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO(ワンマンライブ)
出演者 マカロニえんぴつ
- 2018年3月30日(金)宮城県 enn 3rd
- マカロニえんぴつ
- 2012年はっとり(Vo, G)、高野賢也(B, Cho)、田辺由明(G, Cho)、長谷川大喜(Key, Cho)からなるロックバンド。メンバー全員が音楽大学を卒業している。2015年1月に1stミニアルバム「アルデンテ」、同年12月に2ndアルバム「エイチビー」をリリースした。2017年2月にShibuya eggmanのmurffin discs内レーベル・TALTOに移籍し、3rdミニアルバム「s.i.n」を発売。8月には1stシングル「夏恋センセイション」をリリースした。同月オリジナルメンバーであったドラマーが脱退し、現在はサポートメンバーを迎えて活動している。同年12月にバンドにとって初となるフルアルバム「CHOSYOKU」が発売された。