映画の登場人物と、リーガルリリーの成長の過程を表した2曲
──「ハナヒカリ」は「魔女」のような10代の激情を爆発させるような曲ではなくて、メロディも内容も今の21歳のほのかさんが書いた曲になっていると思いますが、ゆきやまさんと海さんはどう感じましたか?
ゆきやま 超初期の「魔女」とこうして並ぶと、めちゃめちゃ人の成長を感じるなって。
たかはし ははは(笑)。
ゆきやま 1つの映画の中で「わー!」って爆発するようなシーンに「魔女」、最後のエンディングに「ハナヒカリ」が使われてるのが、すごくいいなと思います。
海 私も同じことを思ったんだよね。これは春日くんの中学生から高校生への成長でもあるし、多分リーガルリリーの成長の過程でもあるのかなと思って。
たかはし 確かに!
──全体的に幻想的なサウンドで、楽曲の展開に合わせて音を引いたり足したり、とても美しい形になっていますね。
ゆきやま 楽曲の前半と後半の対比はすごく考えました。どうやったら前半を綺麗に見せられるかとか。
──空白を意識した穏やかな1番のAメロ、Bメロを経て、サビで一気に盛り上がるという。
海 1番のサビまではベースが入らないので、ライブでもけっこう長めに待ちますね。でも、曲と向き合ったときに、要らないものをそぎ落とすことも大切だと思って。ベーシストとしてのスキルを披露するといったことは一切考えずに、この曲にこの音が本当に必要なのかということをすごく考えました。
──その曲が一番よくなるように、1曲の中で緩急を付けた展開ができるのはリーガルリリーの強みであり、1つの哲学かもしれませんね。
海 うん、そう思います。
たかはし 今思い出したんですけど、楽曲の展開は「魔女」みたいにしようと思ったんです。「魔女」もいきなりサビで盛り上がるじゃないですか。「ハナヒカリ」も同じようにしようと思って、「魔女」と同じコードを使ってるんですよ。
ゆきやま そうだったんだ!
たかはし カポの位置は違うんですけど、同じ押さえ方でやってるんです。面白いんじゃないかなと思って。そういうふうに実験しながら、曲を作っていますね。
初めて作った曲が「ハナヒカリ」でよかった
──昨年加入した海さんにとっては「ハナヒカリ」が初めて制作に一から参加した曲ですか?
海 そうです。それまでもともとある曲のアレンジしかしてなかったので、この曲が初めてでした。私はベースラインを作るということをまだよくわかってないかもしれないけど、「ハナヒカリ」のメロディを聴いたときに、「絶対これだ!」みたいなベースラインが思い浮かんで。「この音があったら最高だな」というのがわかって、自然と導かれたというか。初めて作った曲が「ハナヒカリ」でよかったなと思います。
たかはし 「惡の華」の劇伴音楽を作ってる人に「この曲、ベースがいいね」と言われて、すごいうれしかったよね。初めて海ちゃんと作った曲を、映画の音楽のプロに「いいね」と言ってもらえたという。
──2番のAメロの途中から入るベースのフレーズがとてもいいなと。
海 私もそう思います(笑)。
たかはし テッテッテー♪(ベースのフレーズを歌う)
海 ここもメロディを聴いたときに、欲しいと思った音を入れたというか。全体的に潔さは出してます。Aメロの途中から入れたほうがカッコいいと思ったし。
──あと、全体的にドラムの音がきれいだなと思ったんですが。
ゆきやま そうそう。今回から一緒にやってるドラムのテックの人がいるんですけど、その人とどんな感じがいいかなと考えていきましたね。ドシッとした音にしたら、「ハナヒカリ」の幻想的な感じに合うかなと思って、そういった雰囲気を伝えて一緒に作りました。実は今回タムを使ってないんですよ。
──そうなんですか?
ゆきやま はい。いつもはだいたい入れてるんですけど。
たかはし フロアは使ってるでしょ?
ゆきやま うん。でも、アウトロの「タンタンタン♪」というところくらい。全体的にシンプルにしようという意図はありました。
そろそろ羽化するか!
──リーガルリリーは空間系、モジュレーション系エフェクトの使い方がいつも素晴らしいと思っているんですが、この曲でも絶妙なサウンドで幻想的な世界観を生み出していますね。
たかはし そもそも私がリバーブにハマったきっかけは、高校生のときにギターの下手さを隠すためだったんですけどね(笑)。下手すぎてこれは人に聴かせられないなと思ってたんですけど、当時みんなリバーブを使っているのを見て、「これを使えば下手でもいけるじゃん!」と思ってやってました。でも、最近シューゲイザーをすごく好きになって、意味のある使い方をできるようになって。リバーブの長さとかノイズとか、すごく大切なんだなと思いました。
──間奏のギターソロも音がずっしりとしていて印象的です。
たかはし あー! 私、ジョン・フルシアンテというギタリストがすごく好きなんです。その人はレコ―ディング本番までソロを作らないで、2テイクで決めるらしいんですよ。
ゆきやま・海 へえー!
たかはし だから私もギターソロは前もって作らないんです。レコ―ディングでぶっつけ本番みたいな感じ。ギターソロってあんまり考えすぎるとよくないと思っているので。
──歌詞、メロディ、音の全部が合わさって、「惡の華」のエンディングを美しく彩っていると思います。
ゆきやま 試写を観て、最初のギターが入るところですごいドキッとしたよね?
たかはし うんうん。最初は普通に弾いてたんですけど、「ここ、一発目から音外してみようぜ」ということになって、「テレレーン♪」みたいな不協和音っぽい感じになったんですよ。どうしようか迷ったけど、実際観て、よかったなと思った。
海 ちょっと陰りのある感じが、映像と合っててすごくよかった。
──11月から「羽化する」というワンマンツアーが始まりますが、このタイミングでこのタイトルを付けた意図を教えてもらってもいいですか?
たかはし・ゆきやま それは……(海のほうを見る)。
──海さんの案なんですね。
海 はい(笑)。私が正式加入したときに「やっと3人で生まれたね」みたいな、卵から孵化する感じがあったんです。それから1年間、準備してるという気持ちはなかったけど、ライブを重ねたり、3人の関係性も深まっていく中で、今思うとそれが蛹になって、何かをする前段階だったのかなと思って。「よし、じゃあそろそろ羽化するか!」みたいな感じで、「羽化する」と付けました。きれいな羽根だといいよねえ。
ゆきやま 蛾とかじゃないといいな……。
たかはし 何の蝶がいい?
海 アゲハチョウはちょっと違うよね。
たかはし モンシロチョウとかいいかも!
海 かわいいよね。
たかはし じゃあ、モンシロチョウに羽化します!(笑)
ツアー情報
- リーガルリリーpresents「羽化する」
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- 2019年11月22日(金)愛知県 CLUB UPSET
- 2019年12月3日(火)大阪府 umeda TRAD
- 2019年12月10日(火)東京都 LIQUIDROOM