リーガルリリーが9月25日に1stシングル「ハナヒカリ」をリリースした。映画「惡の華」の主題歌「ハナヒカリ」と挿入歌「魔女」を収めた本作。幻想的なサウンドが漂う「ハナヒカリ」は、映画のエンディングを美しく幻想的に彩っている。「魔女」は2016年リリースの「the Post」に収録されていた楽曲で、今回映画の挿入歌として新たに再録された。
音楽ナタリーでは、昨年に海(B)が加入し、現体制初のリリースとなる本作について、3人に話を聞いた。
取材・文 / 中川麻梨花 撮影 / 吉川然
「それな!」で終わらない関係
──今年の7月で結成から5年が経ちましたね。
たかはしほのか(Vo, G) そっか、もう5年も経ったんだ。
ゆきやま(Dr) そうだねえ。
──去年ベーシストとして海さんがバンドに加入されて、今年は「SXSW」(毎年3月にアメリカ・テキサス州オースティンで開催されている世界最大規模のフェスティバル)にも出演されました。そしてこのタイミングで初の映画タイアップとなる1stシングルをリリースするということで、バンドとしてとても充実している状態に見えますが、中にいる3人としては、今バンドの空気感や状態をどういうふうに感じていますか?
たかはし うん、すごくいい状態です。どういうバンドにしていきたいかとか、メンバーの間でいろんなことを話し合う機会が多くなりました。リーガルリリーに命を吹き込んでいく方法に、“言葉”が加わったみたいな感じ。
ゆきやま 海ちゃんってしゃべるのが上手なんですよ。だから海ちゃんが入ってくれたことで言葉にしやすくなったような気がする。前だったら別に聞かなくてもいいかと思っていたようなちょっとしたことも、「これどうする?」って気軽に言えるようになった。ピッチャーがどんな球を投げても、海ちゃんが取ってくれるから。
──海さんはキャッチャー的なポジションなんですね。
海(B) ははは(笑)。
たかはし 誰かが気持ちを伝えるのに適切な言葉が見つからなくても、「この人は何を言いたかったんだろう?」としっかり考えて、みんなで導き出していく。どんなにくだらない話でも、そういうことをしています。
海 それがすごく楽しいんです。こういう感じの人たち、今まで周りにいなかったから。同世代の友達と話していて、「それな!」って言葉で終わらせられちゃうと、「『それな!』ってなんだよ!」と思っちゃって……。
たかはし 私も高校のとき、「それな!」って言葉に違和感があったし、つらかった。
海 この2人はそういうのがなくって、ちゃんと話せる人です。
もし違うバンドが「惡の華」の主題歌をやってたら、多分嫉妬してた
──そんないい状態のところに「惡の華」の主題歌の話が来ました。ほのかさんはもともと高校生のときに原作のマンガを読んでいて、お好きだったんですよね?
たかはし はい。
──当時ほのかさんの心にこの作品のどういった部分が刺さったんでしょうか?
たかはし もう高校生じゃないので、そのときの感情はわからないんですけど、なんだろう……切なかったから好きだった。すごくキュンキュンしたなあ、あのマンガは。あと、主人公・春日くんの高校生編のビジュアルが好きすぎて、恋しちゃって大変でした(笑)。
ゆきやま ずっとその話してるよね(笑)。
──井口昇監督のTwitterには、リーガルリリーの楽曲の素晴らしさに惚れ込んでオファーしたことが書かれていました。
本日解禁されましたが、「惡の華」の主題歌と挿入歌をリーガルリリーさんに担当して頂きました!楽曲の素晴らしさに惚れ込んでのオファーでしたが、皆さんも「惡の華」を高校時代に愛読していたらそうで深い縁を感じました!しかも書き下ろして頂いた主題歌が鳥肌立つくらい感動する曲です! https://t.co/EQa9v7rf2y
— 井口、「惡の華」公開を機に活動を幅広く、昇! (@igunobo) 2019年7月5日
たかはし 「魔女」を聴いて「惡の華」に合うと思ってくれたみたいなんです。それで、「主題歌も作ってください」と言ってもらえて。
──オファーがきたときの心境はいかがでしたか?
たかはし それはもう、「リーガルしかないでしょ」って!
──すんなり受け入れられたと。
たかはし ……いや、今はこんな強気なこと言ってるけど、最初は「えー! 嘘でしょ!? どうしよどうしよ!」って慌てふためいてました(笑)。
海 私はちょうど大学のテスト期間だったんですけど、この話がきたときにテストとかどうでもよくなっちゃった。
たかはし 生活がどうでもよくなっちゃうくらいうれしかったよね。もし違うバンドが「惡の華」の主題歌をやってたら、多分嫉妬してたと思う。
リーガルリリーのサウンドはバリバリ意図的
──挿入歌の「魔女」は映画の中でも、それまで抑え込んでいた登場人物のドロドロの感情が爆発するような重要な場面に使われていますが、そのシーンに「全部壊したいよ。」と歌うこの曲の衝動性がまさにぴったり一致していて。リーガルリリーの数ある曲の中でも、「魔女」をこのシーンで使いたいという決め打ちの相談だったんですよね?
たかはし そうです。
ゆきやま 仮の映像にすでに「魔女」が入ってたもんね。
──「the Post」に収録されている「魔女」は、生々しい感情が思いっきり前に出るような切迫感のある歌になっていますが、今回挿入歌として再録した「魔女」は1曲の中での展開や音作りが、より綿密に計算して練られているように思います。今回挿入歌として「魔女」を再録するにあたって、映画サイドから何かオーダーはあったんですか?
たかはし それが、まったくなかったんです(笑)。主題歌の「ハナヒカリ」も。
ゆきやま お任せって感じだったよね。
──オーダーがない中で、どういうイメージで新しい「魔女」を構築していったんでしょう?
たかはし 音作りに関しては主題歌の「ハナヒカリ」と挿入歌の「魔女」に関連性を持たせたいなと思っていました。「ハナヒカリ」をドリームポップみたいなものにしたいと思っていたので、「魔女」のほうもリバーブとか入れたら面白いかなと思って。
──「ハナヒカリ」と「魔女」がどちらも浮遊感のある仕上がりになっているのは、意図的なことだったんですね。
たかはし はい。あんまり話したことないけど、実はリーガルリリーってサウンドに関してはバリバリ意図的なんですよ。意図的に、しっかり理由を込めて音を作っています。スネアの音とかもけっこうこだわりましたね。サビ前に「タッタッタッ」という印象的な音を入れたり。
ゆきやま いくつか違うタイプの音を作って、どれがいいか考えました。
海 ベースもドリームポップになじむ音にしたいなと思って、歪み具合とか気を使いましたね。
たかはし 全体的にめちゃめちゃ明るいサウンドにしようと思ったんです。原作者の押見(修造)さんが描いてくれた、仲村さんのジャケット絵のままの音のイメージです。
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しっかり歌詞が聞こえるように