映画「惡の華」 PR

「惡の華」伊藤健太郎×玉城ティナ×秋田汐梨×飯豊まりえ|魂を“身長150cm”に、役者として一歩前に進めた作品

押見修造の同名マンガを井口昇が映画化した「惡の華」が、9月27日に公開される。本作は、内向的な文学少年・春日高男と、彼につきまとうクラスの変わり者・仲村佐和の奇妙な“共犯関係”を描く青春ドラマ。「惡の華」は2013年にテレビアニメ化、2016年に舞台版の上演も行われたが、このたび初めて“高校生編”も映像化される。

映画ナタリーでは、春日役の伊藤健太郎、仲村役の玉城ティナ、中学時代の春日に体操着を盗まれるクラスのマドンナ・佐伯奈々子役の秋田汐梨、高校生編で春日と交流を深める常磐文役の飯豊まりえによる座談会をセッティングした。すると取材の場には井口も姿を現し、急遽5名でインタビューを行う運びに。撮影を経て、すっかり気心が知れた様子の彼らが明かす舞台裏とは?

なお、コミックナタリーでは押見と井口の対談が公開中だ。

取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 曽我美芽

“出会ってしまった”女の子(玉城)

──コミックナタリーの特集で、井口昇監督はキャストの方々について「キャラクターに対する理解が深かった」とお話されていました(参照:「惡の華」押見修造×井口昇インタビュー)。皆さんけっこうチャレンジングな役だったのではと思いますが、どのようにアプローチしていったのでしょうか。

「惡の華」より、玉城ティナ演じる仲村佐和(左)と伊藤健太郎扮する春日高男(右)。

伊藤健太郎 僕自身と春日は共通点が限りなくゼロに近いんです。だからすごく難しいけれど、演じきったあとは絶対に役者として一歩前に進める作品になるなと思っていました。中学生の役ということもあって、撮影期間は禁酒したり、監督のリクエストで全身の毛を剃ったり、ずっと猫背でいたり。全力で春日に近付けようとしていたので、けっこうしんどいときもありました(笑)。

玉城ティナ えらい!

伊藤健太郎

伊藤 それとロケ地に滞在している期間が長かったから、その土地に閉じ込められている感覚があったのも演じるうえではよかったなと。映画の冒頭でも語られるようにシャッターが閉まっていて、人が少ない街なんです。

──玉城さんはいかがですか? 本編を拝見したときは、玉城さんのささやかなしぐさからも仲村らしさを感じられてぐっときました。

玉城 そう言っていただけて光栄です! 原作ファンの方々が仲村に対して特別な感情を抱いているのを知っていたので、その期待に応えなければとプレッシャーがありました。しぐさや姿勢、ビジュアルを近付けるのはもちろん、彼女の理解者でいようと思って。仲村と一緒に生きているような気持ちを保ちながら撮影していました。

秋田汐梨 私は撮影が物語の流れに沿った順撮りだったのと、監督に細かくご指導いただいたおかげで感情を乗せやすかったです。伊藤さんや玉城さんとのシーンではお二人が全力でぶつかってきてくださったので、それを受けて感情を爆発させることができました。

飯豊まりえ 私は正直に言うと、脚本を読んだ段階ではキャラクター全員に共感できなかったんです。どうやって自分の中に落とし込もうかと悩んで、監督に「私にできますか?」と相談したこともありました。高校時代の春日と常磐のシーンは、この作品にとっての報いだなと感じたので、春日が殻を破るために背中を押す存在になれたらと思って演じました。

玉城ティナ

玉城 私はキャラクターが自分と遠いところにいる存在だとは思わなかった。このメンバーの中では珍しいタイプかも?

飯豊 ティナは仲村役がぴったりだなと思ってたよ。仲村はすごく魅力的な女の子なんですよね。自分のペースに持っていくのも上手だし。

──仲村には、誰もが思春期に出会いたい女の子なのでは?と思うような不思議な魅力がありましたね。

飯豊 そうですよね。私も会いたかったなあ。忘れられなくなっちゃいそう。

玉城 仲村と出会ったら春日みたいになっちゃうけどね(笑)。「忘れられない」「出会ってしまった」は、私の中ではすごく大事なキーワードだったんです。仲村はそういう女の子なんだという気持ちを忘れないように意識しながら演じていました。

飯豊 すごく素敵だった!

魂を身長150cmに(伊藤)

──本作の細かい表現1つひとつから、井口監督の原作に対する愛を感じました。キャストの皆さんが監督から受けた演出で、印象的なものはありますか?

伊藤 「身長150cmのような芝居をしてほしい」は、なかなかなオーダーだなと(笑)。猫背にしてみたり、いろいろ悩みながら演じましたが、やっぱり見た目よりも心が大事なんですよね。魂を身長150cmに近付けるよう意識していました。

井口昇 健太郎さんには、中学生の何も知らない愛くるしさを出してほしいともお願いしましたね。彼は春日を演じるために筋肉も落としてくれました。

玉城 私は仲村の気持ちを理解できた場面が多かったのですが、初めて弱さを見せる泣きの芝居は難しかったです。自分の中では鍵をかけて遠くにしまっておいた気持ちだったので、それを持ってきてこじ開ける作業に時間がかかりました。あの場面の撮影では、監督と2人で2回くらいお話しさせてもらいましたね。

井口 いろいろ話せてよかったです。

秋田汐梨

伊藤 すごいしゃべってるなあと思いながらその様子を見てたよ。どんな話をしていたの?

玉城 内緒です。嘘をつかずに自分の気持ちを話したし、監督の言葉も素直に入ってきました。それでああいうお芝居ができたのかなと思うと、監督には感謝の気持ちでいっぱいです。

井口 ありがとうございます。秋田さんとは、デートの場面でバッグの持ち方について話しましたよね。要望を伝えたら「そうは持たないです」と言われてしまって、「俺の中のこういう女の子はこんなふうに持つから!」と返したり(笑)。

飯豊 監督、そういうこだわりがけっこうありますよね?

伊藤 そういえば、高校生になった春日が佐伯と街ですれ違うシーンをよく覚えています。あの場面の、佐伯の携帯の奪い方! “佐伯は人の携帯を勝手に奪うのか、奪わないのか問題”があって、何度かやり直ししましたよね。

井口 そうだ、そんな議論もありました。あそこまでパッと取ってしまっていいのか?とも考えたけど、勝手に取り上げるほうにしたんだよね。

「惡の華」より、秋田汐梨演じる佐伯奈々子。

秋田 難しいシーンでは、私がよりイメージしやすくなるように、監督が動きを見せてくださることもあって、皆さんが「よかったよ」と言ってくださる演技ができたと思います。自分の中から出てくるものだけで芝居をしていたら、たぶん監督の納得のいくお芝居にはならなかったんだろうな。

井口 いやいや。喫茶店で春日と佐伯が食事をするシーンで、佐伯が「がっかりした」と言うところがあるんです。あの場面では「秋田さんの一番嫌いな女の人の感じで言ってみて」とお願いして、どうなるかな?と見守ったらああいうふうになった。なるほど! 秋田さんはそう言うか!と感心しましたね。

秋田 原作マンガの佐伯の表情が印象的だったので、あれを再現しようと思って演じました。

飯豊 私は、嘘でしょ?と思うような要求が毎回ありました。常磐が小説のプロットを書いたノートを春日に取られるシーンで「見せるけど笑ったら殺すからね」と言うのですが、そこでプンッとしてとお願いされて……(笑)。

玉城 あれ、超かわいいよ! 私大好き。

「惡の華」より、飯豊まりえ演じる常磐文。

飯豊 「マジで航海してます。」というドラマを井口監督とシーズン2までやったのですが、当時からそういう細かい表現のオーダーがすごく多かったんです。だから、またこの恥ずかしいのをやらなきゃいけないの!?という気持ちでした。

玉城 照れが入っているのがかわいいんじゃない?

井口 そうそうそう、まさにそれ! 照れずに演じられてしまったら逆に寂しいんですよ。ちょっと照れているくらいがいい。

飯豊まりえ

飯豊 でもあの描写は原作にはないです(笑)。女の子のキュートなしぐさを監督はすごく大事にしてくださるので、かわいいって言ってもらえてよかった。

玉城 本当にかわいかった。「殺すからね!」と言うセリフとか、真似したくなったもん。

井口 玉城さんと飯豊さんの役柄は、「にゃはは」と笑うのが共通項なんですよね。その「にゃはは」を近付けるために、電話で言い方を教えてもらったんでしたっけ?

飯豊 テレビ電話で「にゃはは」を見せてもらおうとしたけど、つながらなかったんですよ。でも、ティナのシーンは撮影の前にギリギリ見せてもらうことができました。伊藤さんの目の前で「にゃはは」と笑ってみて「それは違う」「もっと!」と教えてもらいつつ練習しましたね。

伊藤 タブレットで映像を観ながら何回もやったよね。