ORESAMA|変わりながらも続いていく世界で鳴らす音楽

計算して曲を作るのを止めた

──アルバムの1曲目には「Gimmme!」が収録されていますが、2曲目に収録されている「OPEN THE WORLDS」もオープニングに向いている曲だと思うんです。実際に7月のワンマンでは「OPEN THE WORLDS」がライブの冒頭で演奏されていました(参照:ORESAMA、憧れの場所でファンと一緒に「SUMMER NIGHT PARTY」)。アルバム冒頭の流れはどのように決めたんですか?

ORESAMA

ぽん ORESAMAの世界が始まるという意味で、「Gimmme!」が一番適任かなと思ったんです。「おやすみ」というひと言で始まる曲で、弾けるように明るい曲ではないんですが、私たちがライブでいつも表現している「非日常に連れて行く」という役割を担うのはこの曲なのかなと思って。

小島 それに加えて「Gimmme!」が今のところ、僕らにとって最新のタイアップ曲なんですよね。タイアップで発表した僕らのこれまでの曲と、アルバム用に書き下ろした最新の僕らの曲、そこを行ったり来たりする構成にしようと思ったときに、まずはつかみとして最新のタイアップで始めるのはすごく収まりがよかったんです。

──それで言うと、アルバムを聴いた人が「最新のORESAMAの曲」にあたるのは3曲目の「パラレルモーション」です。

小島 新曲の中では最初にできた曲で、僕は「パラレルモーション」を表題曲にするつもりだったんです。以前のインタビューでもお話していたんですが、コロナ禍ですごくライブやセッションに飢えていた時期があって(参照:ORESAMA「Gimmme!」インタビュー)、「パラレルモーション」は生のライブをものすごく意識した曲になったと思います。なぜかと言うと、これまで僕はパソコン上でシンセを鳴らしたり、オーディオファイルを切り刻んで使ったりする手法をやってきたんですけど、この曲は生音のサウンド感にすごくこだわりました。例えばギターとベースの絡みをステージ上の動きを考慮しながら構築したりして。この曲に限らず、今回のアルバムでは全体的に生感を意識したところがありますね。

──この曲に限らず、ベースの音にその影響がよく出ていますよね。

ぽん 最近、小島くんがベーシストになるんじゃないかってくらいベースを弾いてるんですよ。

小島 「Baby Baby Blue」とかは自分でベースを弾いてますね。「とにかく低音は大きく」がモットーというか、ベースが生きると踊りやすいので。

ぽん ベースの存在感が大きくなりつつ、楽器の数はどんどん減ってきた印象があるんですよ。引き算が好きになっている感じ。

小島 最近はあまり計算して曲を作らないようにしていて。僕は計算して作ると音を詰め込みがちになってしまうし、「こうしたらこうなる」というのが目に見えてしまうような気がして。いわゆる音楽理論というものも勉強してきたけど、すぐに必要のないテクニックや余計な知識を詰め込むのはもうやめようと思って。そうすると逆に曲作りに時間がかかっちゃうんですけど、自分自身も楽しんで作れたほうが結果的にいいものができあがるんですよね。

パラレルワールドの“ORESAMAちゃん”

──「パラレルモーション」のミュージックビデオを観ると、映像のテイストがいつもと違いますよね。

ぽん MVのディレクターはいつもお世話になっている佐伯雄一郎さんなんですが、「パラレルモーション」の「パラレル」という言葉を受けて、いつものイメージとは違うORESAMAに挑戦してみようという話になって。今回はイラストレーターのはなぶしさんがデザインした3DCGキャラクターが登場するんです。小さい小島くんがちゃんと現実と同じギターを弾いているし、作り込みが細かくて感動しました。あと個人的には今回、小島くんの演奏シーンがたくさん入っているのもうれしかった。

小島 いつもはだいたいグリーンバックで撮影して、端っこのほうでギター弾いてる役だからね(笑)。今回はセットを組んでいただいて、リラックスできる環境で演奏シーンを撮っていただいたので新鮮でした。セットを組んで撮影したのも、僕が意図していた生感に近くてよかったな。

ぽん それと、去年から今年にかけては配信ライブやYouTubeでのラジオ番組でファンのみんなとつながる機会が多かったから、スマホの中とかテレビ画面の中とか、いろんなところに“並行世界のORESAMA”を描いてもらったんです。小道具の中にいろんなこだわりが詰め込まれているので、じっくり観てもらいたいですね。

小島英也(G)
ぽん(Vo)

みんなの中心でぽんが歌う「Moonlight」

──11曲目「Moonlight」はゴスペルの要素を取り入れた、ORESAMAとしては新機軸の楽曲ですね。

小島 ゴスペルの曲をずっと作ってみたかったのと、ライブでみんなが声を出して歌う光景を思い浮かべながらこの曲を作りました。もちろん今は声を出すことができませんし、マスクを付けてライブを観なきゃいけないような状況が続いていますけど、いつの日かライブで声が出せるようになって、この曲をみんなで歌って楽しめるような日が来ることを願って、この曲を作ったんです。イメージとしては、みんなの歌声の中心にぽんちゃんがいて歌っているような。コーラスを大きすぎるくらいの音量で出しているんですけど、この曲の意図としてはそれが正解なんです。

──基本的にORESAMAは曲先で、あとからぽんさんが歌詞を書いていますよね。楽曲を作りながら小島さんが思い浮かべている光景を、作詞担当のぽんさんには伝えているんですか?

小島 何も伝えません(笑)。

──ということは、ぽんさんは小島さんの意図をサウンドから汲み取るわけですよね?

ぽん はい。でも小島くんがゴスペルをやりたがっていたことは知っていたから、曲を聴いた瞬間「ついにゴスペルの曲がきた!」と思って(笑)。アルバム制作を進めている中で、応援してくれる人たちへの気持ちを表現した歌詞をどこかで書きたいと考えていたので、このゴスペルの曲はそれにピッタリだったんです。私がつらいとき、苦しいときにみんなの温かさが糧になったように、この先の未来でみんながネガティブな気持ちになったときに、この曲がみんなの糧になりますように、という願いを歌詞に込めました。

小島 この曲に限らず、ぽんちゃんが書く詞と僕が曲に込めた思いにそこまで差は生まれないんですよ。それに、意味は2通りあってもいいと思っていて。そういう「パラレル」的な偶然性を僕らはユニットとして楽しんでいるわけですから。