中島愛「ラブリー・タイム・トラベル」 PR

中島愛|あふれる愛を詰め込んだこだわりカバー集

“同志”tofubeatsに委ねた自身のルーツ

──2曲目の「青いスタスィオン」は先ほどから名前が挙がっている、中島さんにとって重要なルーツである河合その子さんの楽曲です。今回選曲された7曲の中でも特に歌謡曲のテイストが強い楽曲ですね。アレンジを担当したのはtofubeatsさんですが、なぜこの組み合わせを?

中島愛

tofubeatsさんとはいつかご一緒したいと思っていたんです。tofubeatsさんも昔からハードオフでかなり掘って(中古CDなどをくまなく探す行為)いらっしゃると聞いていたので。ほぼ同年代で、まったく違う場所で同じ動きをしていた人だという勝手な仲間意識がずっとあって(笑)。

──自分の世代ではない音楽を、レコード屋やCDショップのみならずブックオフやハードオフまで探し回っていたディガーとして。

はい。私にとってはスターなのでおいそれと仲間だなんて言えませんけど、きっと同じ気持ちを持った方だと思っていて。そんな方に、自分がとても思い入れのある曲をアレンジしてもらいたかったんです。カバーアルバムの話が上がったとき、真っ先に「青いスタスィオン」だけは歌いたいって決めてたんですね。その子さんから受けた衝撃が私の歌謡曲好きにはっきりとつながる入り口なので。かつ(後藤)次利さんの曲がよかった。“思い入れ枠”じゃないですけど、その温度感はトーフさんならきっとわかってくれるはずって。トーフさんには「サウンドも歌い方も、原曲の持ち味をふんだんに取り入れたいと思っています」と伝えました。

──トーフさんとは直接お話をして進めたんですか?

打ち合わせとレコーディングで2度お話しました。でも歌については「きっと『青いスタスィオン』については中島さんのほうがおわかりだと思うので」とのことだったので、自分でディレクションしました(笑)。

「フェアライト期の船山さん」を2019年にカバーするならば

中島愛

──安田成美さんの「透明なオレンジ」は作詞が松本隆さんで、作曲は南佳孝さん。オリジナルの編曲は船山基紀さんでした。

安田さんは私、ニュアンスの天才だと思っていて。聴き始めたのは一昨年からなので、今回選んだ曲の中では比較的新しい出会いなんですよ。超ルーツのあとは、最新のホットな曲。

──1984年の曲ですけどね(笑)。

あはは(笑)。松本隆さんのインタビューを読んでいたら、けっこう安田さんワークスに言及されていて、ちゃんと知りたくなって聴き始めたんです。最初の印象はやっぱり細野晴臣さん作曲の「風の谷のナウシカ」が強かったんですけど、船山さんのアレンジが気になって。アレンジと、安田さんの女優としての歌の魅力というんですかね。それが一番炸裂しているのがこの曲で、特に好きになったんです。船山さんも尊敬しているアレンジャーさんなので絶対に1曲は入れたくて。

──船山さんアレンジの曲をカバーするうえで、フジファブリックの金澤ダイスケさんに編曲をお願いしたのはなぜですか?

当時の最先端の機材を使っていた船山さんのアレンジを、2019年の作品としてカバーするなら誰がいいかなと考えたら、シンセの使い手である金澤さんしか浮かばなくて。

──金澤さんにお願いするのは中島さんのオリジナル楽曲「サタデー・ナイト・クエスチョン」以来ですね(参照:中島愛「サタデー・ナイト・クエスチョン」インタビュー)。

あのときにレコーディングを見学させていただいて、その場で音色を作っている姿を間近で見て、すごく感動したんです。金澤さんだったら、きっと新しい解釈のシンセサウンドで作ってくれるはず!と思って、「船山サウンドをこうやってほしいんですよ!」「フェアライト期の船山さんが……」「金澤さんしかいないんです!」と熱意を伝えました。「生音とデジタル、どっちに寄せたい?」「うーん、半々!」みたいな私の幼稚な回答もすぐ理解してくださいました(笑)。

めっちゃわかってるラスマスさん

──今井美樹さんの「雨にキッスの花束を」はCD時代、1990年の楽曲で、テレビアニメ「YAWARA!」のオープニングテーマとしてもおなじみです。ほかにカバーも複数存在しますし、今回の選曲の中ではもっとも広く知られている1曲かもしれません。

中島愛

この曲を選んだのにはいろんな理由がありまして。私の父が今井さんの大ファンで、家には今井さんのアルバムがひと通りそろっていたので、子供の頃から今井さんの音楽には慣れ親しんでいたんですね。中でも私は「雨にキッスの花束を」が入っている「retour」(1990年発売)というアルバムが大好きで。実は「retour」の中にほかにもカバーしたい曲、好きな曲はあったんですけど、選曲には少しキャッチーさも欲しい。そんなふうに考えていたとき、ラスマスさんに出会ったきっかけもアニメだし、自分の根っこの1つにもアニメがあるし、この曲がピッタリなんじゃないかなって。ラスマスさんが「星間飛行」のカバーをしてくださった「プラチナ・ジャズ」(参照:ランカ「星間飛行」北欧ジャズカバー映像が再生29万回)のCDの帯に寄稿したことが私とラスマスさんの出会いなので、「Kimono Beat」とは違う方向で、かつアニソンでもう1曲お願いできないかなと思ったときに「雨にキッスの花束を」が浮かんだんです。

──高音を抑えた、すごく上品なハウスアレンジになりましたね。

中島愛

そうなんですよ。すごく上品。私がこだわったところと言えば……やっぱりあのセリフだけは削りたくなかった(笑)。

──この曲の肝ですよね。セリフの録音は歌と比べていかがでしたか? 苦労しました?

アニメのキャラクターとしてセリフを言うのは全然大丈夫なんですけど、自分自身としてセリフを言うのって本当に大変なんですよ(笑)。セリフは3パターンぐらい録って、歌もセリフもこちらでセレクトしたうえで一旦スウェーデンのラスマスさんにミックスのために送りました。……これは絶対聴き間違いじゃないと思うんですけど、「もう離れないから」の部分はこちらでセレクトしたのとは違うバージョンをラスマスさんは選んでるんです。ちょっとふてくされたみたいな言い方のものを。もっとさらっと言うほうを選んでいたはずなんですけど、「これは絶対ラスマスさんのこだわりだな」と思ったので、そのままにしました(笑)。

──それはラスマスが意味のわからない日本語のニュアンスを音だけで嗅ぎ取った、ということなんでしょうかね。

そうなんだと思います。しかもセリフの位置がちょっとずらしてあったりして。「うわ、ラスマスさん、めっちゃわかってる!」みたいな(笑)。「伝わってるな」と感じました。