3年弱の休止期間を経て、2016年12月に音楽活動を再開した中島愛。今年2月には復帰第1弾シングル「ワタシノセカイ」を発表し、“シンガー中島愛”の健在ぶりをアピールした。10月25日に発売された復帰第2弾シングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」はフジファブリックと全面的にタッグを組んで制作されたロックナンバーで、楽曲提供のみならず演奏もフジファブリックが担当した。またカップリングには、ボンジュール鈴木とTomgggのコンビによる「はぐれた小鳥と夜明けの空」を収録。いずれも初顔合わせのコラボレーションとなった新曲2曲で、中島はシンガーとしてまた新たな一面を覗かせている。
活動再開からまもなく1年が経過する今、まめぐはどのような心境で音楽と向き合っているのか。今回のインタビューでは新作の話を中心に、この1年で感じた思いを語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 草場雄介
充実の日々
──ブログやTwitterなどを拝見していると「充実した生活を送っているなあ」という印象ですが、実際のところ、音楽活動を再開してからの生活はいかがですか?
充実しています。それはもう、想像以上の日々で。前回お話したあとぐらいかな、ちょうどこの夏から秋にかけて出演するイベントへのお誘いを立て続けにいただいたんです。夏には、「アニサマ」(「Animelo Summer Live 2017 -THE CARD-」)にも呼んでいただきましたし、去年のレコードの特集(参照:「いい音で音楽を」特集 座談会 レコードを愛する女性たち)でもアピールさせていただいたのが実って、作編曲家の大村雅朗さんについてお話する機会にも恵まれたり。
──DOMMUNEの番組ですね(参照:中島愛&辛島美登里がDOMMUNE初登場、作編曲家・大村雅朗を語る)。マニアックなテーマもさることながら「まめぐがDOMMUNEに!」という驚きもありました。
そうなんですよ! 私、DOMMUNEに出ちゃいました(笑)。以前から「こんなことがあったらいいな」と想像していたことがいろいろあったけど、こんなにいくつも実現するとはまったく思っていなかったです。
──楽しみあり不安あり、といったところからの再スタートだったと思うんですけど、不安はすっかり晴れましたか?
どうでしょう(笑)。再スタートしたときの不安と、今感じているいい意味での緊張感とでは、また種類が変わったなとは思いますけど。先行きが見えない、どうがんばっていけばいいかわからないという不安はなくなったけど、次は「今の自分に何ができるんだろう」というプレッシャーに変わって。不安は抱えつつも楽しくやっています。
──ライブで歌ったりレコーディングをしたりするときの感覚は、活動休止前と今とで違うところはありますか?
ワンマンライブを振り返ると(参照:中島愛「涙ちょちょぎれ」再始動ワンマンで歴史を総括し次のステップへ)、今の私のライブにどんな方が来てくださるのか、実際フタを開けてみるまで想像できなくて。昔から観てくれている方もいれば、以前から知ってはいたけどライブは初めての方、あるいは休止中に私のことを知って初めて足を運んでくださった方もいらっしゃったと思うんです。
──そうですね。「お帰り!」という気持ちで観ていた方もいれば、「まさか本物のまめぐを観る日が来るとは」という後追いの方もいたのではないかと。「噂に聞いていた伝説のアーティストが復活」みたいな。
いやいや(笑)。でも、お休みしていた間にも私の歌をキャッチしてくれていた人が確実にいてくれてたんだなあと。そういういろんな方々が、わざわざチケットを取って足を運んでくれたという熱量に感動しましたし、その熱量が感じられたことは、今の私にとって大きな糧になりました。イベントに呼ばれたときも、昔とは違って「なぜ私がここに呼ばれたのかな」とより深く考えるようになったかもしれません。「星間飛行」(「ランカ・リー=中島愛」名義による中島のデビュー曲。テレビアニメ「マクロスF」の挿入歌で、2008年6月にシングルリリースされた)から9年経って、今は「マクロスF」がリアルタイムではなかった若い世代の方にも「こんないい曲を歌わせてもらっているんだよ」と紹介する……使命感と言うと大げさですけど、イベントに出るときは「この曲のよさを伝えなければ」という気持ちになりますね。
──今(取材は10月上旬に実施)は「星間飛行」の作詞を手がけた松本隆さんのイベント「風街ガーデンであひませう 2017」への出演を目前に控えている状況で(参照:松本隆作品を豪華アーティストが披露する「風街ガーデンであひませう」開催)、その翌日には活動休止中に親交を深めたNegiccoが主催するフェス「NEGi FES 2017」(参照:Negicco初の新潟開催「ネギフェス」秋空の下で夢のコラボ続々)もあります。
そうなんですよね……。緊張してますけど、楽しみです。
──活動再開から1年でいろんな伏線が回収されている印象です。
はい。「2、3年ぐらいで叶うといいな」と思っていたことが一気に実現しちゃいました。
デモを聴いた瞬間に「わっ、本物のフジファブリックだ!」
──前回のインタビューでは「今は2度目のデビューで“新人キャンペーン中”」とおっしゃってましたけど、前作「ワタシノセカイ」はカップリング曲も含め“ここからリスタート”というニュアンスを汲んだ作品だったので、今作が“新人キャンペーン”期間を経ての、本当の意味での新たな一歩という感じもありますね。フジファブリックをはじめとする新たなアーティストとの出会いもあったり。
はい。活動を再開するにあたり、新しいスタッフとお仕事していく中で、普段から「最近はどんな音楽を聴いてる?」だとか「今は何が好き?」だとか、そういう話をこまめにするようにしていて。私と同世代のスタッフもいるんですけど、その方が学生時代からフジファブリックさんのファンなんです。私は「若者のすべて」や「徒然モノクローム」のようなシングル曲は聴いていたけど、アルバムまでは手を伸ばしたことはなかったんです。それで去年の暮れに過去のアルバムをひと通り聴いてみたら、遅まきながらすごくハマってしまって。「なんで私は今までフジファブリックをもっと聴いていなかったんだろう」と後悔するほどド真ん中で。そのスタッフに感想を伝えたら、「アニメのタイアップが秋に1つ決まっているんだけど、楽曲提供をお願いしてみませんか?」と言われたので「ぜひ!」と。
──なるほど。
ほかのスタッフはクラブミュージックに精通していたりして。身近な人たちから積極的にいろんないい音楽を教えてもらっていて、それも今の私の大きな糧になっています。人との出会いが新しく音楽を連れてきてくれて、それが実を結んで……とてもいい流れですよね。
──「サタデー・ナイト・クエスチョン」はイントロからモロにフジファブリックの世界観で。
私もデモを聴いた瞬間に「わっ、本物のフジファブリックだ!」と驚きました(笑)。
──この曲はテレビアニメ「ネト充のススメ」のオープニングテーマですが、楽曲のテイストについては中島さんサイドからフジファブリックへどのぐらい具体的な指示を?
まずは「ネト充のススメ」という作品の印象や世界観に沿ったもの、というのが大前提としてあって。かつ“中島愛の復帰第2弾シングル”になるので、新しい一歩を踏み出せる楽曲にしたいということはお伝えしました。フジファブリックさんもこれまでいろんなアニメのタイアップ曲をやられているので、“「ネト充のススメ」のタイアップ”と“中島愛の復帰第2弾”を2本の柱に、あとは基本的にはお任せで。
──独特なリフの構築、キャッチーで歯切れのいいメロディはまさにフジファブリックの真骨頂なんですけど、同時に中島さんの新たな定番に加わりそうなフィット感もあって。
私もそう思います。
──ブログによると、中島さんは楽器のレコーディングにも立ち会っているんですよね(参照:サタデー・ナイト・クエスチョン | 中島 愛 Official Website)。
はい。プリプロと楽器のレコーディングをどちらもスタジオで見学させていただきました。スタジオミュージシャンの方のレコーディングは何度も拝見していたんですけど、1つのバンドさんとがっちり組んで制作するのは初めてだったので、メンバー同士のやりとりで制作が進んでいく過程を肌で感じられたのは、すごくレアな経験でした。復帰してからは特に「ソロで歌うってどういうことなんだろう」と深く考えるようになって。と言うのも、最近はアニメでもグループものを扱う作品が多くて、1人で物事を考えたり、スタッフと対峙して意見を言ったりする私との違いみたいなことをよく考えていたんです。フジファブリックさんを見ていると、バンドにはそれぞれの役割や立ち位置があって、それぞれからにじみ出る人柄が音楽性にも反映されていることがよくわかって。ほどよい緊張感があって、それぞれ尊重しあっていて……個々の人柄や心のバランスがいい状態で保たれているのが、いいバンドなんだなと思いました。感動しちゃいましたね。仲間がいるとはこういうことなんだなって。
──ソロ歴9年にして「バンドっていいな」と。
はい(笑)。バンドでしか作れない音楽というのが確実にあるんだなっていう。ただただ感動ですね。
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楽器を持つと解き放たれるフジファブリックのおだやかな狂気
- 中島愛「サタデー・ナイト・クエスチョン」
- 2017年10月25日発売 / FlyingDog
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[CD]
1404円 / VTCL-35261
- 収録曲
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- サタデー・ナイト・クエスチョン
[作詞:加藤慎一 / 作曲:山内総一郎 / 編曲:フジファブリック] - はぐれた小鳥と夜明けの空
[作詞:ボンジュール鈴木 / 作曲:ボンジュール鈴木、Tomggg / 編曲:Tomggg] - サタデー・ナイト・クエスチョン -Instrumental-
- はぐれた小鳥と夜明けの空 -Instrumental-
- サタデー・ナイト・クエスチョン
- TVアニメ「ネト充のススメ」OP&EDスペシャルイベント
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2017年11月18日(土)神奈川県 ラゾーナ川崎プラザ 2Fルーファ広場 グランドステージ
START 14:00出演者中島愛 / 相坂優歌
内容ミニライブ&特典会(ハイタッチ&スタッフによる特典お渡し)
- ファンクラブイベント「あなたと愛と」
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2017年12月2日(土)東京都 ラフォーレミュージアム原宿
[昼の部]OPEN 13:30 / START 14:30
[夜の部]OPEN 17:00 / START 18:00
- 中島愛(ナカジマメグミ)
- 6月5日生まれ、ふたご座のA型。アニメ「マクロスF(フロンティア)」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開を発表。2017年2月には復帰第1弾となるシングル「ワタシノセカイ」をリリースし、6月には東京・ステラボールでワンマンライブ「Megumi Nakajima Live 2017 "Love for you"」を開催した。10月には復帰第2弾となるニューシングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」をリリース。表題曲はテレビアニメ「ネト充のススメ」のオープニングテーマに採用された。