森七菜|新海誠監督に作詞を直談判、「背伸び」で見せたさらなる音楽活動への意欲

鍵っ子・森七菜の背伸び

──“背伸び”という言葉に対して、森さんはどんなイメージを持っていますか?

背伸びしてる人を見ると、恥ずかしいようなむずがゆいような気持ちになるんですけど、応援したくなるというか、つい手を差し伸べたくなるんですよね。

──「背伸び」の歌詞では、描かれている主人公が背伸びをすることで「誰かの星になる」と歌っています。新海監督が森さんにこのメッセージを託しているのは素敵だなと思いました。

困難を乗り越える力というか、そういうパワーを与える存在になることが“星になる”ってことなんだと私は解釈しました。

──実年齢よりちょっと大人っぽい振る舞いというか、「背伸びしちゃったな」というエピソードがあれば教えてください。

小学生時代に多かったかもしれないです。お母さんの口紅を塗ってみたり、ハイヒールを履いてみたり。でも口紅は明らかに似合わないから、お母さんに「唇赤くない?」と心配されちゃいましたね。あと当時は鍵っ子の自分に誇りを持っていたので、友達の前で鍵をジャラジャラ見せびらかしてました。「自分で鍵開けるんだ」って言いながら(笑)。

──(笑)。鍵っ子の縛られてない感じはなんだかカッコよかったですよね。ちなみに学校ではどんな生徒でした?

中学生のときは委員会活動をがんばってました。給食委員会の委員長をやっていて、その活動で毎日のように学校中を走り回って、ほかの給食委員の子の面倒を見たり。そういう些細なことが楽しかったですね。でも高校時代は女優のお仕事を始めていたので、「森七菜が暴れてたぞ!」と噂になっちゃうのが恐くて、大人しく過ごすようにしてました(笑)。クラスの子たちと仲よくできたのは、周りがありのままの私を受け入れてくれたからだと思います。

──忙しいながらも学生生活を謳歌されていたんですね。そのほか「背伸び」の歌詞について触れると、「君の髪には夏の星の匂い」という表現は新海監督ならではですよね。「夏の匂い」はなんとなくわかりますが、「夏の星の匂い」という表現は珍しいし、詩的な描写だなと。

私もここの歌詞は気に入っています。あと「あまやかな息 なめらかな指 風はらむ髪」というBメロの部分。“僕”が“君”をどれだけ愛おしく思ってるかが伝わるフレーズで、すごく好きですね。「町角の影 踊り場の声 真夜中の雨」と描写を畳みかける2番のBメロもよくて、想像力を掻き立てられました。

──Bメロはカット割りのイメージがあって、そこも監督ならではですね。セリフっぽい歌詞で言えば「もういっそね 思い出ぜんぶ消してしまおう 景色を描き直そう」のところ。歌い方は優しいけど、なかなか大胆な表現ですよね。

(笑)。新海さんの映画でたまにある毒っぽい要素がいいですよね。

いつかはアルバムを

──「深海」「背伸び」と2曲連続で穏やかなバラード作品となりました。曲のバリエーションが少しずつ増えるにつれ、アーティスト“森七菜”の方向性も見えてきましたね。

確かにそうですね。「スマイル」(ホフディランの原曲を2020年7月にカバーし配信リリース)という明るい曲をリリースしたあと、「深海」「背伸び」のような切ないバラードも発表できて、いろんな表現を感じてもらえるのはとてもうれしいです。自分としてもいい経験になりました。「背伸び」もたくさんの人に聴いてもらえるんじゃないかとワクワクしてます。まだライブの経験はないんですけど、フェスに出てみたくて。そういう場に合うような曲にも挑戦したいですね。バンドの演奏で「スマイル」を歌ったら気持ちよさそうだなって。

森七菜

──このまま楽曲リリースがコンスタントに続けば、そろそろアルバムも視野に入っているのかなと思いますが、いかがでしょう。そもそもアルバムというものになじみはありますか?

サブスク世代なのでアルバムを買ったことはないんですけど、収録曲に一貫するテーマがあったりするアルバムならではの表現は素敵だなと思います。私もいつかリリースしてみたいですね。

──これから先の音楽人生がどうなっていくのか楽しみです。ちなみに憧れているアーティストはいますか?

たくさんいます。好奇心旺盛なので、いろんな人の力をお借りしながら、歌手活動もがんばりたいです(笑)。自分に似合うものを探し続けたいと思います。

森七菜

──ちなみに最近一番楽しかったことは?

やっぱりお芝居をしているときがめちゃくちゃ楽しいですね。ある作品の撮影に向けて何時間か立稽古をやって体力的にはしんどかったんですけど、あっという間でした。改めて演じることが好きだなと実感しましたね。

──天職ですね。

好きなお仕事をさせてもらえるのは、とてもありがたいことです。

森七菜
森七菜(モリナナ)
森七菜
2001年8月31日生まれ、大分県出身。2019年7月に公開された劇場アニメ「天気の子」でヒロイン・天野陽菜役に抜擢され一躍脚光を浴びる。その後、数多くの映画やドラマに出演し、2021年3月に「第44回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞した。2020年1月公開の映画「ラストレター」では岸辺野颯香、遠野裕里(高校時代)役を務め、主題歌も担当。その主題歌「カエルノウタ」で歌手デビューを果たした。同年7月に大塚製薬「オロナミンC」のCMソングとしてホフディラン「スマイル」をカバーし、配信リリース。YouTubeで公開された同曲のミュージックビデオの再生回数は3000万回を超える。2021年8月にYOASOBIのコンポーザーとしても活動するAyaseが提供した「深海」、10月に「天気の子」の新海誠監督が作詞した「背伸び」を配信リリースした。