森七菜の新曲「背伸び」が配信リリースされた。
「背伸び」は8月に配信された「深海」以来2カ月ぶりとなる新曲。短いスパンでリリースされた本作は、「秒速5センチメートル」や「君の名は。」で知られる新海誠監督が作詞を手がけた優しいバラードとなっている。2019年公開のアニメーション映画「天気の子」をきっかけに監督、声優という立場で知り合った2人。再タッグとなる「背伸び」では森七菜がどんな思いを込めて歌っているのか。新海監督に歌詞を委ねた理由や、「背伸び」のレコーディング秘話、本格化する音楽活動への意欲を語ってくれた。
取材 / 臼杵成晃文 / 寺島咲菜撮影 / YURIE PEPE
リスナーのコメントに共感
──「背伸び」は、YOASOBIのコンポーザーとして活動するAyaseさん提供の「深海」以来2カ月ぶりの新曲です。リリースペースが速いですね(参照:森七菜インタビュー|歌手デビューから1年半、新曲「深海」でAyaseに託した思い)。
ありがたいことに。
──「深海」リリース後の反響はいかがでした?
「深海」をきっかけにいろんな音楽番組や「YOASOBIのオールナイトニッポンX(クロス)」に出演させていただきました。自分の気持ちをAyaseさんに歌詞にしてもらいたいという思いがこんなに広がっていって……単純にすごいことですよね。MVの公開後には、観てくれた方々がYouTubeのコメント欄に感想を書いてくれて、たくさんの人に届いているんだなと実感できました。歌には自信がなかったのですが、そういう皆さんからの言葉で、より音楽活動に意欲的になれたなと思います。
──YouTubeのコメント欄もチェックされているんですね。
そうですね。歌ってる本人ですけど、「わかるー」と頷きながら読んでました(笑)。聴いてくださる人が安心して泣ける曲になればいいなと思っていたので、「泣ける」という感想をもらったときは歌手として本望だなと思いましたね。
──周りの人の反応はどうでした?
友達からは「普段聴いてるよ」と連絡をもらって。自分の曲が褒められるのは新鮮でうれしいものですね。
世界が輝いて見える新海監督の言葉
──新曲の「背伸び」は新海誠監督が作詞を担当されていて、かなり驚きました。
年末年始に新海さんとお会いする機会があって、そのときに「あの……」ってお願いしてみたら、「いいよ。書けるかわからないけど」と引き受けてくださって。最初は困ってましたけど、「言質取ったんで絶対書いてもらおう!」と思いました(笑)。でもまさか本当に実現するとは思ってなかったので、うれしかったですね。
──新海監督は森さんが声優を務めた「天気の子」も含め、ヒット作をたくさん世に送り出し、自作のノベライズもされていますが、作詞家ではないですよね。監督が歌詞を書けると思った根拠はあったのでしょうか。
新海さんのすべてですね。新海さんの小説を読んでいるとき、次の文章を早く読みたくなるような感覚があって。新海さんから出る言葉はすごく美しくて、そういう表現によって世界が輝いて見える。「歌詞を書くとどうなるんだろう?」と興味が湧いてたんです。
──森さんは「天気の子」が声優デビュー作ですよね。ご自身にとって大きな挑戦だったと思いますが、改めて振り返ってみてどうですか?
新海さんに付き合っていただきながら猛練習しました。そのときに培ったものがすごく大きくて、新しい感性を育ててくれたなと今では思います。当時一生懸命に取り組んだことが今、お芝居やナレーションに生きているなって。新海さんにはホントに感謝しています。
──歌詞の内容について森さんからはどんなオーダーを?
私から歌詞を書いてほしいと依頼はしましたが、内容についてはおまかせです。「天気の子」の制作期間で私の声をすごくよく聴いてくれたと思うし、それ以降の自分の活動も知ってくださっていたので、新海さんが「森七菜に歌ってほしい!」と思う歌詞であれば、どんな内容でもうれしいなと思っていました。できあがった曲を初めて聴いたときはすごく心地よさを感じて、言葉遊びを楽しむような歌詞が新海さんらしいなって。
──レコーディングにはどんなふうに臨まれたのでしょうか。
油っぽいものを食べると喉の調子がよくなると聞いたので、前日にからあげを食べました(笑)。「天気の子」のアフレコで教わったことを思い出しつつ、「新海さんのお好きな声ってこんな感じかな?」と考えながらがんばって歌いましたね。歌にはまだまだ課題がありますけど、だんだんと楽しめるようになってきた気がします。
──ミュージックビデオの撮影はどうでした?
カメラを見ながら歌うのはなかなか慣れなくて緊張しちゃって。撮影中はどんな映像になるんだろうとずっとワクワクしていて、とても楽しい時間でした。
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鍵っ子・森七菜の背伸び