ナタリー PowerPush - ももいろクローバーZ

進化の先にある“5次元”の世界

ももいろクローバーZ JAPAN TOUR 2013「5TH DIMENSION」 演出 岡本祐次インタビュー

「ももクロのライブにしないでください」

──岡本さんがももクロと仕事をするのは今回が初めてですか?

岡本祐次

過去にアイドルフェスみたいなイベントがあって、演出と舞台監督をやってたんです。そのときにマネージャーの川上さんとかももクロのメンバーと会って、それから3、4回ぐらい現場で一緒に仕事しました。今年に入ってからもバレンタインのイベントで一緒に仕事してますし。でも実際に内側に入ってがっちりやるのは今回が初めてでしたね。

──実際演出をするにあたって、どんな要望を受けましたか?

最初に言われたのが「ももクロのライブにしないでください」という発注で。

──ももクロのライブなのに(笑)。

「今回はアルバムのコンセプトに則ったライブをやりたい」って。そのときはまだアルバムも全部はできていなくて、タイトルも5次元コンセプトも決まってなかったんですよ。でもその段階から「宇宙っぽい」とか「誰も観たことのないもの」とか、そんな言葉がイメージとして挙がっていました。さらに話を聞いてみたら、アルバム発売はツアーのあとだと(笑)。

──発売前ということは、お客さんが知らない曲をやるということですよね。

まず正直に申し上げたのは「これはお客さん的に大丈夫ですか?」ということで。今までのようにお客さんを巻き込むライブと言うよりは、むしろ突き放して、圧倒的なものを見せなきゃいけない。僕らからすると「危険な賭けに出ましたね」っていうのがそのときの正直な気持ちでしたね。でもスタッフの皆さんは「そういうものを目指してる」っておっしゃって。

──お客さんの反応はやはり気になったんですね。

これは極端に意見が分かれるだろうなと思いましたので。あとはそれをメンバーが吸収して実際にやれるかっていうのが一番の心配事でした。僕らのほうで額縁を作ったとしても、中身が伴っていなければ結局いいライブじゃなくなってしまう。どれだけいい映像を使って、どれだけいい音を聴かせても、結局アーティスト自身が一番強いオーラを放たないとうまくいかないと思うんです。ももクロの皆さんのスケジュール的にも準備に割ける時間は限られているでしょうし、そこがメンバーにとっての不安と課題になるんだろうなと思いながらやってましたね。

サイリウムを消す勇気

──ほかに課題はありましたか?

今までとの違いとして、今回はMCをなくしたので、どういうふうに楽曲の転換をしていくのかは大きな課題だと思っていました。

──MCなしというのは、このアルバムの世界観を伝えるために必要だと考えてのことですか?

岡本祐次

これも最初から「MCなしでやれる方法がありますか?」という発注があって。これまた斬新でチャレンジャーだなと思いました。

──ももクロのライブはMCも重要な要素ですもんね。

そう。最後はパフォーマーも含め、スタジオで缶詰状態で作りました。もちろん道しるべは自分で立てたんですけど、そこからはやっぱりパフォーマーの意見もいろいろ混ぜながら完成させたものなので、本当にあの90分はみんなで作った90分だなと思います。僕が演出ということになってますけど、基本的にはみんなで作ったものですよ。

──今回は照明やセットの雰囲気も今までとは違うし、衣装も5人のイメージカラーがほとんど入っていないなど、見た目にも大きな変化を感じました。

そうですね。一般的なアイドルグループのライブというのは、どうしても本人たちをしっかり見せるということを大事にしていて。そうするとやっぱり衣裳は派手になるし、背景も原色をいっぱい入れてピカピカにすればある程度形にはなるんですけど、今回そういったものはある程度排除して。その中でどうやって見せていくか、照明や映像のバランスはかなり考えました。

──照明という部分では、ももクロのライブはお客さんたちのサイリウムも照明の一部を担ってると思うんですけど、今回は「サイリウム禁止」という衝撃的なルールが設けられました。

入場時に観客に配布された“5次元バンド”。赤、ピンク、黄、緑、紫に発光する5種が用意されており、例えば百田夏菜子がソロで歌うシーンでは赤だけが光るなど演出にあわせてコントロールされる。ランダムに配布されるため、観客は入場時にはどの色のものなのかはわからない。

そうなんです。サイリウムを消す勇気。限定した世界観を作るためにですが。大阪の初日はすごく不安でしたが、直前のゲネプロを観たときに、メンバーがものすごくがんばってたんです。もちろん理解しきれていない部分もたくさんあったでしょうけど、どうにかがんばって吸収しようとしていて。そんなメンバーの姿を観て改めて「よし、これはいけるな」と思いましたね。それはスタッフみんな感じたと思う。僕らもメンバーに触発されるというか、本当に初日に向けてもう一段、士気がアップした瞬間がありました。

──実際にツアーが始まってみてどうでしたか?

ほぼ3分の2は知らない曲、という状況なので、お客さんの反応にはもちろん不安はありました。でも大阪、名古屋、札幌と進む中で、なんとなくこう……曲が生まれ変わっていくのを感じたというか。同じ曲でもツアー初日とラストだとずいぶん違うんです。それはお客さんとメンバーの間で曲が成長しているからなんですよね。そんなふうに曲に命が吹き込まれていく過程がものすごく面白かったですね。

ニューアルバム「5TH DIMENSION」 / 2013年4月10日発売 / スターチャイルド
初回限定盤A [CD2枚組] / 3500円 / KICS-91899
初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / KICS-91900
通常盤 [CD] / 2800円 / KICS-1899
CD収録曲(全仕様共通)
  1. Neo STARGATE
  2. 仮想ディストピア
  3. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
  4. 5 The POWER
  5. 労働讃歌
  6. ゲッダーン!
  7. Z女戦争
  8. 月と銀紙飛行船
  9. BIRTH O BIRTH
  10. 上球物語 -Carpe diem-
  11. 宙飛ぶ!お座敷列車
  12. サラバ、愛しき悲しみたちよ
  13. 灰とダイヤモンド
初回限定盤A DISC 2(CD)収録内容

2012年11月17日(土)東京・Zepp Tokyo「ももいろ夜ばなし第一夜『白秋』」第1部ライブ音源

初回限定盤B DVD収録内容
  1. Neo STARGATE(MUSIC VIDEO)
  2. BIRTH O BIRTH (MUSIC VIDEO)

※「BIRTH O BIRTH」の「O」は/付きが正式表記になります。

ももいろクローバーZ(ももいろくろーばーぜっと)

百田夏菜子、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの5人からなるアイドルグループ。2008年に「ももいろクローバー」として結成。「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。 2011年4月に行われた中野サンプラザ公演を最後に、メンバーの早見あかりがグループを脱退。このライブ終了直後に「ももいろクローバーZ」へ改名し、5人編成での活動をスタートさせた。

2011年7月にはももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を発表。同年7月に発売された1stアルバム「バトル アンド ロマンス」は、全日本CDショップ店員組合が選出する「第4回CDショップ大賞」で大賞を受賞した。2013年4月10日には2ndアルバム「5TH DIMENSION」をリリース。


2013年4月9日更新