音楽ナタリー PowerPush - MIYAVI
最新アルバム「The Others」セルフライナーノーツ
MIYAVIが約2年ぶりとなるニューアルバム「The Others」をリリースした(参照:MIYAVI、新作にロブ・ハーヴェイ参加&「Shangri-La」カバーも)。
本作はインディア・アリーやジョン・レジェンド、ロバート・ランドルフなどの作品を手掛けたグラミー受賞チーム・Drew & Shannonをプロデューサーに迎え、MIYAVIが昨年から活動の拠点としているロサンゼルスと、カントリーミュージックのメッカとして知られるナッシュビルで制作された。
今回ナタリーでは、その制作に至るまでのヒストリーを入り口に、アルバムの全曲についてMIYAVIに語ってもらった。彼が迎えたさまざまな変化、そして新たな確信と決意とは?
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 雨宮透貴
日本へ帰ってしまおうか
──ニューアルバムを聴いて、MIYAVIは今すごい速度で変化し続けていることがよくわかりました。ロスに拠点を移したという点が大きいと思うのですが、まずこのアルバムには去年の9月に出したシングル曲「Real?」(参照:MIYAVI「Real?」特集)が収録されていないですよね。だからこのシングルを出した頃とは、すでにモードが異なるのだと感じられました。
そうですね。Jam & Lewis(※「Real?」を手掛けたプロデューサーチーム)とは、先日観に行ったグラミー賞の授賞式のバックステージでもばったり会ったり、彼らとはその後もスタジオに入ってセッションしているので、仲よくさせてもらっています。ただ、今はもう新しいフェーズというか。あれは自分が一番キツかった時期のシングルだったからね……今とは精神的なスタンスも違う。去年の夏から秋にかけては、もういっそ日本へ帰ってしまおうかと思ったぐらい、むちゃくちゃ追い込まれていました。
──その原因は?
すべてですね。何もかも。自分で決めたこととはいえ、生活と活動の拠点をロスに移して、向こうと日本を何度も何度も行き来しながら、映画(MIYAVIが出演した「Unbroken」。アンジェリーナ・ジョリー監督作。日本未公開)のプロモーションで、それこそ世界中飛び回って(参照:MIYAVI、アンジェリーナ・ジョリー監督映画で役者デビュー)一方でフェスや音源制作も同時にやりながらだったので、物理的にも精神的にもハンパなかったですね。唯一の救いが自分のキッズたち。彼女たちはたくましくて、新しい環境でキャッキャと走り回ってくれていました。でも移住を決めた俺のほうが日本に帰りたくなってしまったという(笑)。
──やっぱり移住もハリウッド映画への出演も、精神的な影響はハンパなかったですか?
うん。当たり前だけれど、言葉も文化も違うでしょ? 学校のシステムも違えば、人のアティテュードも、音楽制作のアプローチだってすべて違う。スタジオに入った瞬間から「何持ってきたの? どうするの? 何してくれんの? どうやれんだよ?」って笑顔でバチバチとやり合いますからね。しかも、やりとりも英語でしょ。もう、ほかのいろんなこととも重なっていっぱいいっぱいでしたね。全部、とても片手間ではできませんから。
ナッシュビルが持つグルーヴとバイブレーションに惹かれた
──そこから今回のアルバムが完成するまではどういった感じでしたか?
そこからようやくクリスマスに映画が公開されて、プロモーション稼動も終了して、年末にSMAPさんのゲストとして紅白に出させてもらって(参照:SMAP「絆深まった1年」締めくくる紅白で代表曲メドレー&MIYAVIも登場)。で、それらが終わってすぐ年始の便でロスに飛んで、ファミリーと過ごして、そのあとからナッシュビルに飛んで今回のレコーディングを始めました。それまでは、映画の役に気持ちがずっと引っ張られていた気もします。年が明けてようやく肩の荷が降りたというか。作品自体がシリアスだったこともあって映画に関するインタビューでも極力自分を抑えていましたから、精神のバランスもうまく取れていなかったと思います。レコーディングで100%音楽に集中して、身も心もグルーヴの中に置くことで、徐々に本来の自分を取り戻していった感じでしたね。
──レコーディングはどうしてナッシュビルだったのでしょうか?
アメリカのマネージャーといろいろビジョンを話しているときに、今回のプロデューサーのDrew & Shannonの話になって。俺ももともと彼らを知っていたので、まずは「ライティングセッション(曲作りのためのセッション)を」ということで去年の8月に初めてナッシュビルに行きました。すぐあの街が持つグルーヴとバイブレーションに惹かれましたね。でも、いまだにテンガロンハットにブーツもいるし、カントリーがかかりまくってる中で、「イケてるだろ」的オーラを出しまくってナンパしてる奴もいたり。ぶっちゃけかなりイナたい街ではあるんですけど。
──はははは(笑)。
でもスタジオに入って、ぶっ飛びましたね。音との距離感というか、彼らが日常の中で音楽と向き合う姿勢に驚かされました。だってレストランに入って、食べ終わる頃にはもうAメロができてるんだから(笑)。音楽が生活の中にあって、クリエイティビティが本能的であり直感的。ナッシュビルで制作を始めて、みるみるうちに精神的なスランプを脱することができました。まさにあの街が持つグルーヴとバイブレーション、そして音楽に救われたんです。心が洗われた気分でしたね。
次のページ » MIYAVIによる「The Others」全曲解説(1)
- ニューアルバム「The Others」 / 2015年4月15日発売 / Virgin Music
- ニューアルバム「The Others」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / TYCT-69079
- 通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60061
CD収録曲
- Cruel
- Into The Red
- Come Alive
- Alien Girl
- Let Go (2015 Ver.)
- Odyssey
- All The Way
- Unite (feat. Rob Harvey)
- The Others
- Calling
- Shangri-La
初回限定盤DVD収録内容
MIYAVI Live in L.A. at El Rey Theatre 02.18.2015
- What's My Name?
- Strong
- Chase It
- Secret
- Let Go
- Guard You
- Cry Like This
- Ganryu
- Survive
- Futuristic Love
- Day 1
- Selfish Love
- What A Wonderful World
- Horizon
MIYAVI「MIYAVI Tour 2015 "WE ARE THE OTHERS"」
- 2015年4月30日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年5月2日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年5月3日(日・祝)香川県 高松MONSTER
- 2015年5月5日(火・祝)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年5月7日(木)大阪府 なんばHatch
- 2015年5月9日(土)宮城県 Rensa
- 2015年5月10日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2015年5月12日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2015年5月16日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
MIYAVI(ミヤビ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で世界中から注目を集めている。これまでに北米、南米 、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど約30カ国で250公演以上のライブを行い、4度のワールドツアーを成功させている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表。アーティストやクリエイターからも高い評価を受けており、CMへの楽曲提供や、布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など、精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集め、9月には、ジャネット・ジャクソン、アッシャーなどの作品で知られるJam & Lewisをプロデューサーに迎えたシングル「Real?」をリリース。さらに12月には俳優として参加したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。