音楽ナタリー PowerPush - MIYAVI
最新アルバム「The Others」セルフライナーノーツ
- 映画撮影のプレッシャーから生まれた
- 05. Let Go (2015 Ver.)
──次は先行配信されていた「Let Go」の2015年バージョンです。打ち震える魂を「全部さらけ出せ」と歌っています。
言葉の通りです(笑)。映画の撮影もクライマックスに差し掛かった頃、まったく感情のコントロールが効かなくなったんです。何百人ものエキストラとスタッフ、何億円ものバジェット……ましてや監督のアンジーにとっても初の大きな作品でしょ。改めて強烈なプレッシャーに苛まれて、セットに戻れなくってしまった。どうしようもなくなって、吐いてしまったんです。でもね、全部吐いた瞬間、「ああ、こうなるべくしてなって、俺は今ここにいるんだ。であれば、流れに逆らわずすべて“Let Go”すればいいんだ」ってスッと思えたんです。この曲はその体験が元になっています。でも、つらかった。だからスタジオで歌入れするときも、気付くと泣いてましたね。
──リスナーに向けたメッセージがたくさん詰め込まれていた前作に対して、このアルバムはすごくMIYAVI自身に向けられているというのも大きな特長ですね。自分を鼓舞することでリスナーを鼓舞しているという。
本当にその通り。聴いてくれるみんなにとっても共鳴できるアルバムになればいいなあ。
- 未来に向けたMIYAVIのアティテュード
- 06. Odyssey
──ここで日本語の歌詞が登場します。
日本語詞の曲はもっとたくさん入れてもいいかなとも思ったんだけど、今回は結果的にこれとカバー曲の2曲になりましたね。歌詞についてはネトウヨさんたちに対する俺なりの回答でもあります(笑)。俺には匿名のネット上でいちいち呟いてる暇はないんですよね。
──MIYAVIが「Unbroken」で演じたのは、第二次大戦中の米兵捕虜収容所内を司る残虐な兵士の役でした。そのこともあってネット上では「反日だ」という書き込みも見受けられ、作品は現在まで日本公開に至っていません。
「話すべきポイント、そこじゃなくねえ?」と思います。みんなこの国を思ってのことなんだろうとは思うんですけど。でも、オリンピック、もう5年後には始まるんですよ? 隣の国の悪口を言っている暇なんて本当にないと思う。あと映画に関して……自分の演技はさておき(笑)、1つだけ言わせてもらいたいのは「あなた『シンドラーのリスト』を観てドイツのこと嫌いになりますか?」ということ。ならないでしょう? それは俺たちが、ドイツが歴史を乗り越え、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、世界の一員として今どう責任を果たしているかを知ってるから。だから誰もあの映画を観て今のドイツを批判しないし、今回のケースも俺は同じだと思っています。日本が70年間戦争をしてこなかったこと自体、この国にとって大きな誇りだと思います。世界に向けて堂々と胸を張っていいことだと思うんですね。それを踏まえて、この作品に限らずもっとフラットに表現を受け止められる時代が来てもいいんじゃないかなと感じています。机上で人の揚げ足を取ったり過去の過ちを言い争ったりするよりも、もっとみんなでいろいろなことに正面から向き合って、未来のこと語ろうよ。それがこの曲で言いたかったことです。
──改めて伺いますが、MIYAVIが多くのナンバーを英語で歌う意義とは?
まずコミュニケーションという点において、英語を話すことは世界共通のルールで。「燃えるごみの日は月曜ですよー」というのと一緒だと思うんですね。それに、今はありがたいことに地球の裏側にも自分のファンがいる。世界に自分の思いやメッセージを伝えたいと思っている以上、ダイレクトに響かせられるように、英語での表現にも挑戦し続けたいなと。だって「日本、最高だよ!」って日本語で言っても、みんなわからないでしょう?(笑) だから、まずは英語でそれを伝える。そのうえで、いつかは日本語の曲を作って、世界中の人たちが日本語で歌ってくれる景色が見られたらいいなと思っています。
- ブチ切れたように弾き狂ったギターソロ
- 07. All The Way
──このリズムとボトムライン、そしてサビのメロディがまたいいですね。
ちょっとキーを下げすぎたかも(笑)。ライブでは上げようかな。
──それとリズムの裏とボーカルがぶつかる感じもMIYAVIナンバーとしては新鮮では?
これはシャノンのアイデアですね。「Let Go (2015 Ver.)」でもそれが出ていたけど、彼の独自のポップ感というか。歌詞は「銀河鉄道999」みたいなイメージで書きました。ずっと続いていく旅、みたいな。家族やスタッフ、友人やファンといった、自分が心を許せて、ともに挑戦し続けられる人たちがいれば、俺はどこまででも行けるなあと。そんな曲です。ギターソロはそれまでのサウンド的なナッシュビル臭を打ち消そうと思って、ブチ切れたように弾き狂いました(笑)。早くライブで弾きたいですね。
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- ニューアルバム「The Others」 / 2015年4月15日発売 / Virgin Music
- ニューアルバム「The Others」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / TYCT-69079
- 通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60061
CD収録曲
- Cruel
- Into The Red
- Come Alive
- Alien Girl
- Let Go (2015 Ver.)
- Odyssey
- All The Way
- Unite (feat. Rob Harvey)
- The Others
- Calling
- Shangri-La
初回限定盤DVD収録内容
MIYAVI Live in L.A. at El Rey Theatre 02.18.2015
- What's My Name?
- Strong
- Chase It
- Secret
- Let Go
- Guard You
- Cry Like This
- Ganryu
- Survive
- Futuristic Love
- Day 1
- Selfish Love
- What A Wonderful World
- Horizon
MIYAVI「MIYAVI Tour 2015 "WE ARE THE OTHERS"」
- 2015年4月30日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年5月2日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年5月3日(日・祝)香川県 高松MONSTER
- 2015年5月5日(火・祝)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年5月7日(木)大阪府 なんばHatch
- 2015年5月9日(土)宮城県 Rensa
- 2015年5月10日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2015年5月12日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2015年5月16日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
MIYAVI(ミヤビ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で世界中から注目を集めている。これまでに北米、南米 、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど約30カ国で250公演以上のライブを行い、4度のワールドツアーを成功させている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表。アーティストやクリエイターからも高い評価を受けており、CMへの楽曲提供や、布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など、精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集め、9月には、ジャネット・ジャクソン、アッシャーなどの作品で知られるJam & Lewisをプロデューサーに迎えたシングル「Real?」をリリース。さらに12月には俳優として参加したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。