音楽ナタリー PowerPush - MIYAVI
最新アルバム「The Others」セルフライナーノーツ
MIYAVIによる「The Others」全曲解説
- もっとも重苦しい闇を歌う
- 01. Cruel
──ではここからは、アルバム収録曲について1曲ずつ紐解いていきましょう。まず1曲目はタイトルの通り、“残酷(=Cruel)”な世界への叫びを歌った、まるで咆哮とでも言えるようなナンバーです。
今年に入ってから書いた曲で、もともとこの曲のリフは2曲目「Into The Red」の冒頭に入れようとしていたものだったんだけど、リフをスタジオで弾いてたら、シャノン(・サンダース / Drew & Shannon)が「これで1曲作ろうよ」と言い出して。さらに制作時期がISISによる事件の直後だったことも、少なからず影響しています。あの事件はナッシュビルにいる自分にとってもすごくショックでしたから……。あとちょうどこの時期、アニメ「AKIRA」をひさびさに観る機会があって、あの世界観が頭の中に残っていたことも楽曲に作用していますね。アルバム収録曲の歌詞は、基本的にポジティブです。生に対して肯定的。でも今回映画で悪役を演じてみて、光あるところに影はあるというか、陰があるからこそ陽の部分が輝くんだということを改めて学ぶことができたんですね。それもあって、この曲でこのアルバム作品の幕を開けたかったんです。
──アレンジはどのように?
まずはナッシュビルで Drew & Shannon と一緒に骨組みを組んで、その後BOBO(Dr)くんをロサンゼルスに呼んで一緒に演奏しながら固めていきました。やっぱりスタジオに入れば、自然とライブでプレイするイメージで作れる。これはとても重要なことなんですね。前作「MIYAVI」ではコンピュータで構成を決め込んだ曲が多かったから、ライブをイメージすることが意外とできていなかった。だから今回は、前回のワールドツアーで体感したライブ感をCDに詰め込むことも1つの課題でした。リズムやギターなどのベーシックトラックはロスで、ほかは全部ナッシュビルで録りました。この曲の終盤で聴こえてくるメロトロンはシャノンが実機を弾いてくれています。ドリュー(・ラムジー / Drew & Shannon)はギタリストでシャノンはキーボーディスト。どちらも歌えるので、今回のコーラスはほとんど彼らが歌ってくれています。
- 骨太でしなるようなリフ
- 02. Into The Red
──「そこをどけ 道を あけろ」「全て 赤に 染めろ」という歌詞。攻勢に打って出るような曲ですね。
今回、歌詞はLEO今井くんもサポートしてくれました。俺もまだまだ英語の表現に稚拙な部分があるから、日本語の感覚も英語の感覚も分かるLEOくんの存在は頼りになりましたね。
──イントロからリフマスターの面目躍如という感じでギターが炸裂します。個人的にこのグルーヴはたまりませんでした。
これはスタジオでのジャムセッションから生まれました。Drew が、まずビートを打ち込んでそこにリフを乗せて膨らませていった感じですね。ナッシュビルの空気を孕ませつつ、The White Stripes やThe Black Keysが持っているような、骨太でしなるようなリフモノをやってみたかった。最近でもKanye Westがやっていたり、こういったリフとリズムがシャレて聞こえるという流れもある気もします。
──ここまでの2曲だけでも、MIYAVI自身の喜怒哀楽とサウンドの距離が近くなったということもわかります。例えばこの曲のように「そこをどけ」と歌詞で歌うなら、リフもメロディも同じく明快に「そこをどけ」と言っているようなサウンドで。
だったらうれしいな。まだまだだけど、それもまたナッシュビルのセッションでつかめたことの1つでしたね。
- 生きてビートを感じる快感を表現
- 03. Come Alive
──個人的に今回のアルバムって、大まかに“闘争”“世界”“生命”“前進”そして“愛”という5つのテーマを柱に形成されていると思っていて。そして「Come Alive」は“生命”のパートなのかなと。
ああ、そうかも。去年から今年にかけての混沌の中で、自分自身も音楽に出会って救われた10代の頃の気持ちを思い出す機会が多かった。それもあって、生きて、ビートを感じるということ、シンプルに音楽への感謝がこの曲に込められています。途中のブリッジは “天国”で、「あなたの居場所はここじゃないの」「もっとリズムを感じに、現実に戻りなさい」と女神に諭されているイメージ。アレンジとしては マーク・ロンソンのような踊れるファンクロックをやりたいなと思って作りました。
──王道のMIYAVI路線かと思いきや、フレーズといい構築といい、やっぱりどこか新しい。あとこの曲のギター、スラップしていませんよね?
うん。っていうか、今回ほとんどスラップをやってないかな。頭の中で鳴ってる音を表現さえできれば、エレアコだろうがテレキャスだろうが、スラップだろうがピッキングだろうが、もうなんでもいいなって。なんならピアノだっていいのかもしれない。ようやくそこにたどり着きましたね。
- 実はアンジーについての歌
- 04. Alien Girl
──これはアルバムの構想初期からあった曲だと聞いています。
コンセプトは去年の夏からありました。歌詞については、アンジー(アンジェリーナ・ジョリー)について書いた曲です。
──おお、そうだったんですね。
リリック制作をしていく過程で結果的にクラブにふらっと入って出会った女の子にもリレイトできるようなラブストーリーになっていますけど、実はそうじゃなくて。アンジーと出会って驚いたのは、今回の映画にせよ彼女の生き方にせよ、彼女はそれを自分の宿命でありミッションだと思ってやっている。そして、その原動力はむちゃくちゃピュアだしまっすぐ。だからこそ俺も協力したいと思ったし、すべてを捧げてチャレンジしてみようと思った。そしてその彼女のアティテュードが、俺には異星人のように映ったんですね。まるでこの地球を救うっていうミッションを持ったエイリアンガールだと思ったんです。
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- ニューアルバム「The Others」 / 2015年4月15日発売 / Virgin Music
- ニューアルバム「The Others」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4860円 / TYCT-69079
- 通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60061
CD収録曲
- Cruel
- Into The Red
- Come Alive
- Alien Girl
- Let Go (2015 Ver.)
- Odyssey
- All The Way
- Unite (feat. Rob Harvey)
- The Others
- Calling
- Shangri-La
初回限定盤DVD収録内容
MIYAVI Live in L.A. at El Rey Theatre 02.18.2015
- What's My Name?
- Strong
- Chase It
- Secret
- Let Go
- Guard You
- Cry Like This
- Ganryu
- Survive
- Futuristic Love
- Day 1
- Selfish Love
- What A Wonderful World
- Horizon
MIYAVI「MIYAVI Tour 2015 "WE ARE THE OTHERS"」
- 2015年4月30日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年5月2日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2015年5月3日(日・祝)香川県 高松MONSTER
- 2015年5月5日(火・祝)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年5月7日(木)大阪府 なんばHatch
- 2015年5月9日(土)宮城県 Rensa
- 2015年5月10日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2015年5月12日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2015年5月16日(土)東京都 新木場STUDIO COAST
MIYAVI(ミヤビ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で世界中から注目を集めている。これまでに北米、南米 、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど約30カ国で250公演以上のライブを行い、4度のワールドツアーを成功させている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表。アーティストやクリエイターからも高い評価を受けており、CMへの楽曲提供や、布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など、精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集め、9月には、ジャネット・ジャクソン、アッシャーなどの作品で知られるJam & Lewisをプロデューサーに迎えたシングル「Real?」をリリース。さらに12月には俳優として参加したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。