40%で歌うことを知れば音楽の幅が広がる
──シングル「君のそばにいるよ」と同時リリースされるライブ映像作品「MISIA SOUL JAZZ SESSION」についても聞かせてください。トランぺッターの黒田卓也さんとのコラボレーションによるミニアルバム「MISIA SOUL JAZZ SESSION」を引っさげたライブの模様を収めた映像ですが、本当に素晴らしいセッションですね。
ありがとうございます。黒田さんはジャズ畑のミュージシャンだし、タイトルに“JAZZ”と入っているので私たちがいわゆるスタンダードなジャズをやってるんだと思われがちなんですが、それだけではないんですよね。今の世代のジャズミュージシャンはR&B、ヒップホップ、ソウルなども聴いているし、私がやってきたR&B、ヒップホップもオールジャンルの音楽に対するリスペクトで成り立っていて。例えばエリカ・バドゥやThe Rootsにもジャジーなテイストも含まれているし、ジャンルがどんどん混ざっていくのは自然な流れだと思うんです。ロバート・グラスパーのようなミュージシャンが登場したのも、そうですよね。
──グラスパーが登場してから、ジャズ、R&B、ヒップホップの融合がさらに進みましたからね。
黒田くんの音楽もすごくクロスオーバーで、ハイブリッドな感じがあるじゃないですか。私自身も、ソウル、R&Bを軸にして好きな音楽をやっていることには変わりがなくて。“JAZZ”だけだとこのスタイルが伝わらないと思ったから、「SOUL JAZZ SESSION」というタイトルを付けさせてもらったんです。ソウルを好きな人、ジャズを好きな人はもちろん、アフロビートやクロスオーバー音楽が好きな方にもぜひ観てほしいライブ映像ですね。
──個人的には、今年来日したエリカ・バドゥの音楽性ともリンクしていると感じました。
「Everything」をカバーしてくれたことが縁で、バドゥさんとはすごく仲よくさせてもらってるんですよ。ロサンゼルスのライブに呼んでもらって、開演前の楽屋で音楽の話をさせてもらったこともありました。「あなたは120%のパワーで歌えるシンガーだけど、40%で歌うことを知れば音楽の幅が広がるはずよ」と彼女から言ってもらったんですけど、黒田くんとのセッションではまさにそういう瞬間があったんです。「キスして抱きしめて」で黒田くんのトランペットと掛け合いしたところはまさにそうで、「40%で歌う」って二十代のときはわからなかったんです。最近ようやくできるようになってきた気がしますね。あとは「グローバルな音楽を作りたい」という気持ちもずっとあります。Ichiroさんはロサンゼルス、黒田くんはニューヨークが拠点ですが、今はパソコンでデータのやりとりができるので、24時間、音楽制作ができる環境があって。もっと視野を広げて制作をしたいし、グローバルに聴いてもらえるものを作りたいですね。
──海外のリスナーも意識しているということですか?
それはずっと思っていることですね。バドゥさんやラウル・ミドンさん、マーカス・ミラーさんにお会いしたときに「最近はこういう音楽をやってます」って作品を渡したいし、「面白いことやってるね」と言ってもらいたいので。
全部の私を見てほしい
──来年2018年はデビュー20周年イヤーですね。4月には大阪城ホール、横浜アリーナで「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」が開催されますが、どんなアニバーサリーイヤーにしたいと思っていますか?
20周年を目の前にして思ったのは「今までのおさらいだけではつまらない」ということだったんですよね。1998年にデビューしたときは「ジャパニーズR&Bをやりたい」「アンダーグラウンドのカルチャーをメジャーシーンに持ってきたい」と考えていて。それを形にしたのが「THE TOUR OF MISIA」というライブだったんです。バンドメンバーにDJ Ta-Shiがいて、DJを交えながらサウンドを作っていくことだったり、ステージにダンサーやドラァグクイーンが登場したりするのも、20年前はメジャーのシーンでは誰もやってなかったんですよ。そのスタイルでR&BもソウルもJ-POPも表現して、ザ・エンタテインメントと言えるようなライブにすることを17年くらい続けてきて、始めたての頃はアンダーグラウンドだったカルチャーもどんどんメジャーになって。そこで感じたのは「役割は終えた」という思いで、2016年を最後に「THE TOUR OF MISIA」を終えることにしたんです。
──20周年を目前にして、ライブのスタイルも変化の時期を迎えたということですね。
「アンダーグラウンドのカルチャーをメジャーに」というテーマを外して新しいものを作ろうという気持ちもあるし、次にやりたいこともすでにあるんですよ。だから来年4月のツアーの名前も今までとは変えて「THE SUPER TOUR OF MISIA」にして。私自身もツアーがすごく楽しみだし、そのために制作をがんばっているところです。
──過去を振り返るのではなく、新しいMISIAさんの表現を体感できるツアーになりそうですね。
19年間歌ってきましたが、ずっと同じことをやっているわけではないですしね。好きな音楽のベクトルは変わってないけど、いろいろな人たちと出会って、たくさんチャレンジしながら曲を作ってきたので。今回リリースする2作品もそうで、Ichiroさん、黒田くんはここ数年で新しく出会った人たちなんです。来年の20周年イヤーでも“これまでの20年間”だけではなく、“20年目のMISIA”を伝えたいですね。
──20周年イヤーの具体的なプランはあるんですか?
今詰めているところですが、全部の私を見てほしいという気持ちがあります。さっき言った「THE TOUR OF MISIA」のほかに、「星空のライヴ」や「Misia Candle Night」などのコンセプチュアルなライブも行っているんですが、1つひとつがバラバラに存在している気がしていて。私のことをバラードシンガーだと思っている人がライブで「INTO THE LIGHT」や「LOVE BEBOP」を聴くとビックリすることもありますからね。全部が私だし、すべて楽しんでやっているということも知ってほしいなって。
──この20年の間にR&B、ヒップホップ、ダンスミュージックは大きな変化を繰り返してきました。いろいろなトレンドも生まれましたが、流行のサウンドとの距離はどんなふうに取っているんですか?
そこは意識してないかな。やっぱり、音楽は頭で考えるものではないと思うんです。まず自分から自然に出てくるものがあって、それをあとから整理すると言うか。リスナーの皆さんも、入り口ではできるだけ頭で考えてほしくないんですよね。これはすべてのミュージシャンが感じていることだと思いますが、まずは聴いてほしいし、観てほしいし、感じてほしいなって。そういう意味では、今回の2作品はすごくいいものだと思います。映画「鋼の錬金術師」を観ること、「君のそばにいるよ」を聴くこと、「MISIA SOUL JAZZ SESSION」でライブを体感することを含めて、いろいろな形で音楽を楽しんでもらえるんじゃないかな。
- MISIA「君のそばにいるよ」
- 2017年11月29日発売 / アリオラジャパン
-
[CD]
1296円 / BVCL-854
- 収録曲
-
- 君のそばにいるよ
- 君のそばにいるよ-DJ EMMA REMI
- 君のそばにいるよ-Original Inst-
- 君のそばにいるよ-DJ EMMA DUB-
- 君のそばにいるよ-NUDE DUB-
- MISIA「MISIA SOUL JAZZ SESSION」
- 2017年11月29日発売 / アリオラジャパン
-
[Blu-ray]
4860円 / BVXL-68 -
[DVD]
4320円 / BVBL-137
- 収録曲
-
- Afro Blues(TAKUYA KURODA Band)
- BELIEVE
- 真夜中のHIDE-AND-SEEK
- 陽のあたる場所
- 来るぞスリリング
- 運命loop
- キスして抱きしめて
- The Best Of Time
- めくばせのブルース
- オルフェンズの涙
- It's just love
- つつみ込むように...
- Don't You Worry' Bout a Thing
- MAWARE MAWARE
- 最後の夜汽車
ツアー情報
- MISIA「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」
-
- 2018年4月7日(土)大阪府 大阪城ホール
- 2018年4月8日(日)大阪府 大阪城ホール
- 2018年4月27日(金)神奈川県 横浜アリーナ
- 2018年4月28日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 「鋼の錬金術師」
- 2017年12月1日(金)全国公開
- あらすじ
-
幼い頃に最愛の母親を亡くした兄エドと弟アル。彼らは母親を生き返らせるため、錬金術における最大の禁忌(タブー)・人体錬成に挑んだ。しかし錬成は失敗に終わり、エドは左脚を、アルは身体のすべてを代価として失ってしまう。瀕死のエドはとっさに再錬成を行い、自分の右腕と引き換えにアルの魂を鎧に定着させることに成功した。それから数年後、鋼鉄の義肢を装着し国家錬金術師となったエドは、奪われたすべてを取り戻すためにアルと旅を続けている。
- スタッフ
-
- 監督:曽利文彦
- 原作:荒川弘「鋼の錬金術師」(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
- キャスト
-
- エド:山田涼介
- ウィンリィ:本田翼
- マスタング:ディーン・フジオカ
- ホークアイ:蓮佛美沙子
- エンヴィー:本郷奏多
- マルコー:國村隼
- コーネロ:石丸謙二郎
- グレイシア・ヒューズ:原田夏希
- グラトニー:内山信二
- ロス:夏菜
- タッカー:大泉洋(特別出演)
- マース・ヒューズ:佐藤隆太
- ハクロ:小日向文世
- ラスト:松雪泰子
原作第1話の試し読みはこちらから
©2017 荒川弘/SQUARE ENIX ©2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会
映画「鋼の錬金術師」公開記念
あなたの心に残る“ハガレンの言葉”を募集中!
- 参加方法
-
STEP1 Twitterの映画公式アカウント(@hagarenmovie)をフォロー
STEP2 ハッシュタグ【#ハガレンの言葉】を付けて、「鋼の錬金術師」の心に残る名ゼリフをツイート!
プレゼント
映画オリジナル・クラッチバック 10名様
期間
11/27(月)~12/11(月)
- MISIA(ミーシャ)
- 長崎県生まれの女性シンガー。1998年2月にシングル「つつみ込むように…」でデビューした。同年6月に発表した1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は200万枚以上を売り上げ、R&Bブームの火付け役となる。2000年に発表したシングル「Everything」はドラマ主題歌に使用され、200万枚を超えるセールスを達成した。2013年2月にはデビュー15周年記念ベストアルバム「MISIA SUPER BEST RECORDS -15th Celebration-」を発表。2015年4~10月に全国ツアー「MISIA 星空のライヴVIII MOON JOURNEY」を実施し、2016年1月には12枚目となるアルバム「LOVE BEBOP」をリリースした。2017年7月にジャズアルバム「MISIA SOUL JAZZ SESSION」を発売。同年11月に映画「鋼の錬金術師」の主題歌であるニューシングル「君のそばにいるよ」、ライブBlu-ray / DVD「MISIA SOUL JAZZ SESSION」を同時リリースした。デビュー20周年を迎える2018年には4月に大阪と神奈川でライブツアー「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」を行う。
2017年12月8日更新