MISIA×Rockon Social Club成田昭次&寺岡呼人インタビュー|三位一体で作り上げたラグビーW杯応援歌

MISIAとRockon Social Clubのコラボ曲「傷だらけの王者」が配信リリースされた。

「傷だらけの王者」はNHKで放送されている「ラグビーワールドカップ」中継番組のテーマソングとして制作された楽曲。MISIAの力強い歌声と、元男闘呼組メンバーを中心に結成されたRockon Social Clubによるエネルギッシュなバンドサウンドが重なり合う、壮大な応援歌となっている。音楽ナタリーでは、MISIAとRockon Social Clubの成田昭次(G)、寺岡呼人(G, Producer)にインタビュー。「傷だらけの王者」制作の裏側や、お互いが抱くアーティストとしての印象などを語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

“眠れる獅子”を呼び覚ますイメージ

──NHK「ラグビーワールドカップ」のテーマソングとして制作された「傷だらけの王者」(作詞・作曲:MISIA、編曲:寺岡呼人)は、MISIA & Rockon Social Club名義による楽曲です。作詞作曲の際、MISIAさんはどのようなことを意識しましたか?

MISIA 「ラグビーワールドカップ」放送のテーマソングのお話をいただいたとき、最初に頭に浮かんだことがあって。ラグビー選手の方々は、フィールドの外ではどっしりとして穏やかな印象なんですが、試合が始まって、フィールドに入っていくときは目つきが変わる。それが“眠れる獅子”を呼び覚ますような感じだなと思って、「胸の奥に眠った 獅子を呼び覚ませ」という歌詞が浮かんだんです。そこからのスタートでしたね。メロディ制作とアレンジが同時進行だったので、呼人さんのアレンジによってメロディを変えた部分もありました。

寺岡呼人(G, Producer / Rockon Social Club) そうですね。

左から寺岡呼人、成田昭次、MISIA。

左から寺岡呼人、成田昭次、MISIA。

MISIA さらにラグビーのことを調べたり、試合を観たりする中で、気付いたこともありました。ラグビーはとてもパワフルなスポーツですけど、お互いの体を気にかけながらプレイすることを大事にしているんです。ラグビー憲章には「品位・情熱・結束・規律・尊重」という5つの言葉が掲げられていて、まさに紳士のスポーツなんですよね。あと、ラグビーの監督はフィールドにいらっしゃらないですよね。それは選手の自主性を大事にしているからなんだそうです。そのことも含めて、ラグビー日本代表は日本のトップの方々、言わば王様が全国から集まってきてるんだなというイメージがありました。

寺岡 そういう研究をして、あの歌詞ができたんですね。

──実際のラグビーの試合を思い描きながら書いていた部分もあるのでしょうか?

MISIA そうですね。スクラムを組むところとか、ボールを奪うために飛び込んでいく場面とか。ラグビー選手の皆さんは、何回も何回も失敗したり、転んだり、ときにはケガをしてしまったり、そういうことを繰り返してこられたと思うんです。挫折も経験されているでしょうし、心の傷、体の傷を負いながら、それでも恐れずに次の一歩を踏み出してきた。だからこそ、最高のステージをつかんでいらっしゃるんだなって。その勇気にフォーカスしたのが、「世界はいつの日にも 勇気あるものだけに開かれる」という歌詞です。

MISIA

MISIA

皆さんと一緒だから歌えた

──ロックテイストを押し出したサウンドも印象的ですが、寺岡さんはアレンジに際し、どんなことを考えていましたか?

寺岡 この曲の仮タイトルは「眠れる獅子」だったんですよ。「『獅子』だったら、重厚感が欲しいな」と思ってましたね。あとはファンファーレ的な感じというか、行進していくような曲にできたらいいなというイメージもありました。

──そして成田さんはギターとコーラスで参加されています。

成田昭次(G / Rockon Social Club) さっきMISIAさんがおっしゃっていた通り、呼人さんのアレンジとメロディや歌詞の制作が同時に進んでいたんですよ。自分はギターとコーラスで参加させてもらうことになって、ライオンというイメージをどう出せるか?という課題に向き合っていました。

MISIA 成田さんのギターは吠えてる感じがありました。

成田 ホントですか?(笑) ライオンは滅多に吠えないんですけど、その瞬間を捉えるようなギターソロを弾けたらいいなと思ってましたね。

寺岡 ツアー先の九州から直接スタジオに来たよね。

成田 そうそう。ちょうど男闘呼組のツアー中で、長崎からスタジオに行ったので。

寺岡 僕らは「今日はギターの録音だから、MISIAさんは来ないだろうな」と思ってたんですけど……。

MISIA え!?

寺岡 (笑)。でも、来てくれて。しかも歌うためのブースがなかったから、休憩スペースみたいなところで歌ってくれたんですよ。

成田 オケには仮歌も入ってたんだけど、その場で歌ってくれて。そのおかげで、こっちのエネルギーも強くなりましたね。

成田昭次

成田昭次

MISIA 情熱の量が違いますよね、一緒にやると。

成田 そう、ライブ感がすごくあった。

寺岡 ドラムの青山英樹くんもMISIAさんの歌に圧倒されて、「こんなに盛り上がって演奏できるって、やっぱり歌の力はすごいですね」と言ってました。ギターソロもそうですけど、間違いなく歌に動かされてましたね。

成田 たぶんMISIAさんには仮歌というものが存在しないんでしょうね。どのテイクも百発百中で。

寺岡 ギターソロを何テイクか録って、「最後にもう1回やろうか」ということになったんだけど、そのときも歌ってくれて。間奏でフェイクを入れたり、歌でこっちを盛り上げたりしてくれましたね。

MISIA やればやるほどお互いのことがわかってきますからね。

寺岡 でも、今回みたいな激しいロックサウンドの曲はたぶん初めてですよね? 大丈夫でした?

MISIA 確かに初めてでしたし、私だけではできなかった楽曲だと思います。呼人さんがアレンジしてくださって、昭次さんがギターを弾いてくれて。そして昭次さんがコーラスをやってくださることになったときに、昭次さんがやっぱり(高橋)和也と(岡本)健一の声が必要だとおっしゃって、そこから皆さんにも声をかけていただいて、Rockon Social Clubの皆さんが参加してくださったことで、「さあ行こうぜ 最高のSTAGE」と歌えたんですよね。私1人ではとても歌えないけど、皆さんと一緒だから「さあ行こうぜ」って歌えた。

成田 MISIAさんがロックな曲を歌っているのはめちゃくちゃ新鮮でした。ソウルフルかつワイルドで。

寺岡 ティナ・ターナーがミック・ジャガーと一緒にやったときみたいだったよね。

MISIA ベース、ギターなどが重なっていく中で、歌い方も変わってきたんです。呼人さんの温かくて分厚いベース、昭次さんの力強くてちょっと切ないギターにグッときて。Rockon Social Clubの皆さんが一緒にコーラスを録っていた姿も忘れられません。

寺岡 サビのコーラスをみんなで歌って、MISIAさんにディレクションしてもらって。どうでした? 50代の男がマイクに向かって、一生懸命歌ってる姿は(笑)。

MISIA カッコよかったです! 男っぽくて、曲の中にまた違う風が吹きました。

成田 ラグビーもそうですけど、この曲も“全員で作った”という感じがすごくありましたね。