LITEの根幹にあるエクストリームな衝動
──曲を作るにあたって、何か参照したものはありましたか?
井澤 単純なものを1個やって、それで音楽になり得るようにしたいみたいな、そういう感覚的な話をしていたので、「こういうバンドのこういう音楽を聴いて」みたいな感じではなかったですね。
楠本 「ストリート感を出していきたい」みたいな話あったよね? だから、イメージが音楽ではなかったのかもしれない。
武田 エクストリームな映像を見たときの衝撃と、54-71とかを聴いて受けた衝撃って、なんとなく似ていると思うんですよ。「filmlets」はそういう衝動の影響が詰まった作品だったんですよね。だからLITEの音楽は構築したアイデアより、衝動のほうが大きい。その衝動をいかにうまく表現するかがLITEの始まりだったかもしれないです。そのエクストリーム感が、今回はストリート感って言葉に含まれているのかもしれないけど、とにかく極端なことをやりたいという流れだったと思います。人から教わったヒップホップの楽曲を聴いてみた結果、横ノリとか電子ドラムを取り入れる流れに繋がったのかもしれない。
──それは「Cubic」からの流れでもありますよね。
武田 うん。2曲目の「Zone」もそのエクストリームの流れにありますね。この曲は音数が多いですけど、広島東洋カープの応援ラジオ番組「それ聴けVeryカープ!」(RCC中国放送)のテーマソングだったので、野球のエクストリームなスーパープレイをイメージして作っているんです。マネージャーがカープの大ファンということもあり、作らせていただきました(笑)。
──「Blizzard」の録音とミックスは楠本さんが担当されているんですよね。
楠本 もともと誰でやるか決まってなくて、「ストリート感? 何それ?」って思いながら(笑)、自分たちでやるのも面白いかなって。
──どんな環境で録ったんですか?
楠本 普通のリハスタで録って、家でミックスしました。マスタリングはLOSTAGEやトクマルシューゴとかの作品でレコーディングエンジニアをしている岩谷啓士郎くんにお願いして。
武田 ドラムがエレドラだったので、幸いにも録音におけるルーム感はそこまで必要じゃなかったので。
楠本 生ドラムじゃないからこそできたっていう感じですね。でも、エレドラのミックスは初めてだったので、難しかったです。音がなかなか決まらなくて。
山本 ドラムもほかの楽器と絡むようになってるから、「ギターの音と絡むフロアタムの音ってなんだ?」っていろいろ考えて、逆相にしてくれたり、構造ががんばってました。
武田 今までプリプロってそんなに気軽にはやれなかったけど、構造に録ってもらって見えてくることもいろいろあって、そこはけっこう変わった気がします。
井澤 作曲の仕方も変わってきて、スタジオで実際に楽器を弾くよりも、聴いて、話をすることの方が重要なときもあって。3時間一切楽器を弾かずに、パソコンを見ながら話して。むしろそのほうが曲作りは早く進むこともありましたね。
──マイク・ワットのバンドメンバーであるトム・ワトソンのポエトリーリーディングも印象的ですが、詞は武田さんとトムさんが半々で書いているそうですね。
武田 もともとすごくいい声だなって思っていて、この曲に合いそうだなって。で、まず僕がある程度長い文章を英語で書いて、特に意味はない、クレイジーな内容なんですけど、タイトルは決まってたから、氷についてとかを書いて送って。そうしたら、トムさんが自分の詞をくっつけて送り返してくれたんですけど、それがちょっとピースフルと言うか、ネイチャーな感じで。ちょっと乖離があったので、「じゃあ、ミックスしちゃおう」と。でもそのままだときれいすぎたので、チョップして、ハメていくという、トラック的な作り方になりましたね。
──明確に新境地でありつつ、「過程」というお話もあったので、この先に待っているであろうアルバムが非常に楽しみです。
武田 今日こうやって話をして、「あ、途中経過なんだな」と自分で再認識しました。「そこに向かってるんだな」って気持ちの整理をするいい機会になりました。
“未完成の歴史”をこれからも
──では最後に、15周年以降のバンドの展望についても、お一人ずつ話していただければと思います。山本さん、いかがでしょうか?
山本 今日来る前に10周年以降の5年でどんなことをしたか振り返ってたんです。「15年のうちの5年」と考えると、大した期間じゃない気がするけど、まあまあいろんなことをやってて、けっこう長いなとも思って。ただ、そのときどきのことを考えると、戦略的に考えてと言うよりも、心が震えること、自分たちがやりたいことをやってきてるなって思いました。結局それしかできないし、だからこそ、今回「Blizzard」みたいな曲ができたんだとも思うんですよね。自分たちが心からいいと思うことを、最高だと思うことを、これからもやり続けたいです。
──井澤さんに関しては、近年FULLARMORやカオティック・スピードキングにも動きがあったので、個人的な活動も含めつつ、話していただけるとうれしいなと。
井澤 簡単に言うと、FULLARMORやカオティックは友達との遊びっていうか、「飲もうぜ」くらいのノリで、たまに活動するからいい感じのバンドですね。やっぱり僕はLITEのベースとしてやっているから、今後はLITEで自分でも曲を作れるようにして行きたいです。ほかの活動ももちろん刺激はもらえるんですけど、FULLARMORの曲作りはセッションだし、カオティックはもはや(Maison book girlの)サポートみたいな感じで(笑)、脳みそが作る暗い音楽をどうバンドにあてがうか、そのアレンジを僕が担当してたりして。でも、LITEでは曲を作る発想を鍛えたいので、もっといろんな音楽を聴いたり、いろんな文化に触れたり、そういうことをやっていきたいです。
──楠本さんはいかがでしょうか?
楠本 10年目まではすごく長く感じたんですけど、そこから先は「あっという間に15年」って感じがするんですよね。ここから先は、もちろん、いい新作を出したいとか、ツアーの規模を大きくしたいとかありつつ……もっと面白くなりたい。お笑いとかそういうことじゃなくて(笑)。魅力的という言葉のほうがいいのかな。人間的に、より面白く、魅力的になって、それを音楽にも反映させられたらいいのかなって。
──武田さんはどうでしょう?
武田 この5年で感じたのは、その前の結成からの10年間をこの5年に生かせていたってことです。途中で話にも出たように、海外で対バンしたバンドから「10年前から聴いてたよ」と言われる状況って、バンドを続けてきたからこそ起こることで、15年続けてこれたこと自体がまず財産だし、この経験がこの先により雪だるま式になっていくことが少なからずあると思うから、バンドの一番の目標としては、これからも続けていくこと。でも、漫然と続けていくわけじゃなく、常に楽しさとか刺激を感じてないと続けられないと思っています。今感じるのは、僕らが作ってきた作品ってまだ未完成なんですよね。発表したときは完成したと思うけど、次の作品を作り出す頃には、未完成だったなって感じて、だからこそまた作ろうと思える。そうやって未完成の歴史を積み重ねてきて、きっとこれからもそうなんじゃないかなって。
- ライブ情報
LITE 15th -
- 2019年1月14日(月・祝) 東京都 LIQUIDROOM出演者 LITE / SOIL & "PIMP" SESSIONS / downy / toe
- LITE「Blizzard」
- 2018年10月5日配信開始 / I Want The Moon
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配信シングル
- 収録曲
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- Blizzard
- Zone
- LITE「Blizzard」
- 2018年11月9日発売 / TOPSHELF RECORDS
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7inchアナログ
- 収録曲
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SIDE A
- Blizzard
SIDE B
- Zone
- LITE(ライト)
- 武田信幸(G)、楠本構造(G, Syn)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)によって、2003年に結成されたインストゥルメンタルバンド。2005年にミニアルバム「LITE」を発表し、本作の発売に伴う全国ツアーを開催したことで知名度を高める。2007年には1stフルアルバム「filmlets」がヨーロッパでリリースされたほか、初の海外ツアーも敢行。日本のみならず海外でも注目を集めるようになる。ツインギターのスリリングな掛け合い、聴き手のイマジネーションを刺激するドラマ性の高いサウンドが持ち味。2009年10月に自主レーベルI Want The Moonから発表した「Turns Red EP」ではニューウェーブやエレクトロニカの要素を導入し、新境地を開拓した。2013年に結成10周年を迎え、6月にアルバム「Installation」を発表。10月に東京・ラフォーレミュージアム六本木にて投げ銭制のアニバーサリーライブ「LITE 10th」を開催した。2014年2月にヨーロッパツアーを成功させるなど、海外での公演を重ねている。2018年10月と11月に新作「Blizzard」をデジタルシングルおよび7inchアナログでリリース。2019年1月に東京・LIQUIDROOMにて結成15周年イヤーの締めくくりとなるライブイベント「LITE 15th」を開催する。
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2018年12月27日更新