FRIENDSHIP.特集 第3弾|楽曲試聴会を通過したPablo Haikuのリリース前打ち合わせに密着 インタビュー&キュレーターたちによるコメントも

HIP LAND MUSICが運営するデジタルディストリビューションサービス・FRIENDSHIP.。このサービスでは、さまざまなジャンルのキュレーター計14名が選抜した音楽が世界187の国と地域に向けて配信されている。FRIENDSHIP.では今年4月に、レギュラーキュレーター6名と、プロデューサーとしても活躍するドラマーmabanua(Ovall)をゲストに迎えて楽曲試聴会を実施。その結果、投票数が最も多かった3ピースバンド・Pablo Haikuの楽曲「park」、次点のシンガーソングライター・スウの楽曲「手を繋げないままさようなら」がFRIENDSHIP.を通じて配信リリースされることとなった(参照:FRIENDSHIP.特集第2弾|ゲストにmabanua迎えて楽曲試聴会実施、キュレーターたちが選出したアーティスト2組決定)。

今回はFRIENDSHIP.のフラッグシップスペース・FS.にて行われた、Pablo Haikuのリリース前打ち合わせを通して改めてサービス内容やその魅力を紹介。また特集の後半には、打ち合わせを終えたPablo Haikuのインタビュー、楽曲試聴会を通過した2作品に寄せられたFRIENDSHIP.キュレーター陣のコメントを掲載する。

取材・文 / 下原研二 撮影 / 森好弘

FRIENDSHIP.打ち合わせレポート
タイラダイスケとPablo Haiku。

FRIENDSHIP.では毎月1回のペースで楽曲試聴会を実施しており、若手アーティストから届いた音源を、ミュージシャンや音楽ライター、ライブハウス関係者などさまざまなジャンルのキュレーター14名が選定。試聴会を通過した作品は後日FRIENDSHIP.を通じて配信リリースされ、プロモーション面でもFRIENDSHIP.がバックアップすることが決定している。今回は今年4月にゲストキュレーターにmabanuaを迎えて行われた試聴会にて、最も多くの投票数を獲得した3ピースバンド・Pablo Haikuのリリース前打ち合わせに密着した。

この打ち合わせでは、レギュラーキュレーターのタイラダイスケ(FREE THROW)がFRIENDSHIP.のコンセプトやサービス内容について説明していく。現在、FRIENDSHIP.が楽曲の配信代行を行っているアーティストは300組強。デジタルディストリビューターとして、2021年5月時点で933タイトル、2856曲をリリースしてきた。そもそもApple MusicやSpotifyといった音楽配信サービスにアーティスト個人が直接音源を納品することはNGとなっており、ディストリビューターを通す必要がある。つまりデジタルディストリビューターと契約をしなければ、アーティストは配信リリースができないのだ。タイラ曰く、海外の若手ヒップホップアーティストはバンドなどに比べると制作費が安いことから、レコード会社やレーベルとの契約以前に、自分の活動ビジョンに合ったデジタルディストリビューター探しから始めるケースが多いそうだ。

左からタイラダイスケ、Pablo Haiku。

FRIENDSHIP.では、キュレーターによって選出された楽曲を世界187カ国の音楽配信サービスにて配信している。その際固定費用は一切発生せず、売上金額の85%がアーティストにバックされる。タイラはこのシステムについて「シングル・アルバム単位で固定費用が発生する分、売上金額100%バックを保証するデジタルディストリビューターもありますが、現在のトレンドとしてアルバム発売前に先行シングルを連続してリリースするケースが増えているので、リリース頻度の多いアーティストには固定費用の発生しないサービスが合うと思います」と語る。FRIENDSHIP.では残り15%の利益分のサポートとして、アーティストに1名ずつ担当者が付くことになっているほか、Webメディアへの情報発信やストリーミングサービスのプレイリストへのアプローチといったプロモーションや、楽曲配信のプランニングやプレスリリース作成のレクチャーなどを受けることができる。

タイラダイスケ

また母体となるHIP LAND MUSICのインフラを活用したパブリッシング(配信楽曲の出版管理)、海外でのプロモーションおよびライブブッキング、CDやマーチャンダイズの製造サポートなどバックアップオプションも充実。そのほかにもアーティストのファンベースを成長させるための取り組みとして、アメリカ・テキサス州オースティンで行われるイベント「SXSW Music Festival」のオフィシャルショーケースの制作とアーティスト派遣、FRIENDSHIP.企画のライブイベントの開催、FRIENDSHIP.の配信アーティストを対象にYouTube、Instagramなどのスタッフを迎えたプロモーション講習会、著作権のレクチャーなどの情報交流会を毎月1回行っている。

Pablo Haiku

ここまでの説明を受けたPablo Haikuの3人はバンド活動をするうえで気になる点を質問し、タイラは1つひとつ丁寧にアドバイスを送った。その後は各配信サービスのプレイリストに楽曲を選んでもらうためのアドバイスや、ストリーミングサービスでの再生回数を伸ばすためのミュージックビデオの公開タイミングなど展開方法のレクチャーを受けて打ち合わせは終了。Pablo Haikuの楽曲「park」は後日行われたプランニング打ち合わせの結果、6月16日に配信リリースされることが決定した。

Pablo Haiku インタビュー

それぞれのルーツを作品に

──お疲れ様でした。Pablo Haikuは去年結成したばかりなんだとか。

左からタイラダイスケ、Pablo Haiku。

森飛友(Vo) 去年の10月に大学の学祭があって、この3人でライブをしたんですよ。そのときの感触がよかったので一緒にやってみようかという話になって組んだのがPablo Haikuです。僕はもともと1人で曲を作っていたんですけど、2人とは気が合うし音楽の話をよくしていたので、「一緒にやってみない?」と誘って。

──それ以前にも音楽活動はされていたんですか?

 高校生のときにバンドを組んでました。大学に入ってからもちょくちょくバンドはやったんですけど、自分だけでやるほうが楽かもと思ってからは映像作品への楽曲提供など個人で活動していたんです。

足立新(B) 僕は地元が富山で、東京に出てくる前は中学高校とずっとバンドをやっていました。ただ、大学に入ったタイミングで興味が薄れてきたこともあって、森くんに声をかけてもらうまでは1人でベースを弾いてたという感じです。

──永田さんはいかがですか?

永田風薫(G) 僕は高校生のときに軽音部でギターを弾いていました。大学に入ってからは1人で曲を作ったり、ミックスの仕事をしてたりしていて。

──ミックスの仕事?

永田 はい。依頼されてミックスをやったりとか、舞台の音響を担当することもあります。

──皆さんはそれぞれ音楽のバックボーンが違うと聞いたのですが、どういったアーティストに影響を受けたのでしょうか?

Pablo Haiku

 Red Hot Chili Peppersなど1990年代の作品を聴いて音楽に興味を持つようになりました。中学3年から高校1年までは自分が好きになったアーティストの影響元を掘ってた時期で、1960~70年代の音楽ばかりを聴いてましたね。そのあとにニューウェイブとか、1980~90年代の音楽を掘るようになって、大学に進学してから現行の音楽も聴くようになったという流れです。

足立 僕は森くんとはだいぶ違っていて、小学生のときから地元のライブハウスによく通っていたんですよ。当時はいわゆるJ-ROCKのバンドのライブを1週間に1回とか2週間に1回の頻度で観に行ってました。中学に入ると洋楽を聴くようになって、ディスクガイドや現行のチャートを参考にいろんな音楽を掘っていくようになるんですけど、根本的にはJ-ROCKからの影響が大きいのかなとも思います。それこそヒップランドだとサカナクションさんを金沢のライブハウスまで観に行きました(笑)。

永田 僕は父親の影響でNirvanaやRadioheadから入って、日本のバンドだとtoeとかTHE NOVEMBERSのようなオルタナを好んで聴いていました。そのあとアート・リンゼイとかのノイズを聴くようになるんですけど、このPablo Haikuを組む前に自分で作っていた曲はそういうテイストの作品が多かったです。

──なるほど。ちなみに曲作りはどのようにしているんですか?

足立 森くんを中心に作っていくんですけど、その際に森くんがリファレンス曲をまとめたプレイリストをSpotifyで共有してくれるんです。それに合わせてメンバーそれぞれが聴いてた音楽からの影響を作品にまとめるって感じですかね。