2018年、LITEは15周年のアニバーサリーイヤー期間を過ごしてきた。春には1stアルバム「filmlets」を再発し、初めてワンマンツアーを行った愛知・CLUB ROCK'N'ROLL、大阪・FANDANGO、東京・下北沢SHELTERで、当時のセットリストを再現する「LITE 15th Anniversary "Filmlets" Re Tour」を開催した。またメキシコ、モンゴル、イギリス、アイルランドと断続的に海外でのツアーやフェス出演を続け、12月にもアメリカツアーを行うなど、日本だけにとどまらない活動範囲はさらなる広がりを見せている。
音楽ナタリーでは彼らの結成15周年を記念して、LITEメンバーインタビューと、2019年1月14日に東京・LIQUIDROOMで行われるライブイベント「LITE 15th」の出演メンバーによる座談会を実施。その第1弾となる本特集では、メンバー4人にこれまでの活動を振り返ってもらいつつ、バンドの現在地について話を聞いた。
取材・文 / 金子厚武 撮影 / 佐藤早苗(ライトサム)
今のLITEから見た初期ナンバー
──今年の春に1stアルバム「filmlets」(オリジナルは2006年2月発売)をCDとアナログで再発して、2006年に初のワンマンツアーを行った東名阪3会場で、当時のセットリストを再現するライブを開催しました。まずはその感想から聞かせてください。
山本晃紀(Dr) 曲のテンポが速かったですね(笑)。最近はBPM130前後が多いんですけど、あの頃はだいたい170後半から180が多かったので、とにかく速いのをひさびさに必死にやりました。でも楽しかったですよ。
武田信幸(G) 最初は自分のフレーズがわからなくて、コピバンみたいになってたよね(笑)。昔の曲はよくも悪くも今では作れない構成になっていて。何かを参考にしてはいたんだろうけど、その通りになっていない雑さがある。だけどそれがLITEとして形を成していると言うか。
井澤惇(B) 「filmlets」の制作時はまだDTMを使っていない時期だから、スタジオで作った曲をMDに録音して、それを聴いて、「この部分いいね」って、もう1回セッションを始めるというやり方しか知らなくて。でも生でやっているからこその、「そっち行っちゃうんだ?」みたいなねじ曲がった展開が逆に面白かったです。
武田 ツアーをやってみたら「Human Gift」(「filmlets」収録曲)が昔よりもしっくり来ることがあって、そういうのは不思議だなって。
楠本構造(G, Syn) 音源としては当時気に入らなかった部分が、今聴くと逆によかったりもして。例えば「Human Gift」はリリース当時に録った最初のテイクが気に入らなくて、録り直してるんですよ。今それを聴いたら、「どっちでもいいや」って言っているかもしれない(笑)。
──当時は気になったヨレた部分とかが、今は逆に味に思えたと言うこと?
楠本 そうですね。今はヨレていても簡単に直せちゃうし。
井澤 毎回反動で次の作品になってることが多いんですよね。「filmlets」でやりきれなかったことが「Phantasia」(2008年6月発表の2ndアルバム)になって、その反動が「For All the Innocence」(2011年7月発表の3rdアルバム)につながって。紆余曲折がありつつも、振り返ってみると「filmlets」がもともとの自分たちのコアな部分を埋めてくれてる感じがします。
山本 “絡み”っていうのが初期のキーワードとして大きくあったけど、前作(2016年11月発表の5thアルバム「CUBIC」)に入っていた「Else」とか、新曲の「Blizzard」にしても、また “絡み”のあるアンサンブルに戻ってきていて。最近はそういう部分を改めて気にしながらやってるから、より統一感を感じるのかもしれないですね。
アメリカの“エモフリーク”との契約
──10周年以降の海外展開についても振り返っていただきたいのですが、2014年にアメリカのTopshelf Recordsと契約したのは1つの大きなトピックだったかなと。2006年設立のまだ若いレーベルながら、現在はLITE以外にもtoe、mouse on the keys、tricotといった日本のバンドの作品をリリースしています。どんなレーベルなのでしょうか?
武田 ひと言で言えば、「エモフリーク」みたいな感じですね。「好きなバンドの復刻盤を出したい!」というところから始まったんだと思うんですが、ちょうど新たなエモのブームとタイミングが合致して、成長したレーベルなのかな。
──近年のアメリカでは1990年代のリバイバルがあって、彼らはBraid(アメリカのエモシーンを代表するバンド)の音源を再発してるんですよね。
井澤 僕も最初は「Braidの作品を再発してるレーベル」というところで興味を持ったんですけど、「俺らとやる意味あるのかな?」とも思ったんですよね。でも、もともと知っていたアイルランドのEnemiesもTopshelfから作品を出していて、話を聞いたら「いいレーベルだよ」と言っていて。そのレーベルも僕らのことをよく知っていてくれたので、いい形で友好関係を築けたんです。
武田 Topshelfはもともとマスロックとかポストロックと呼ばれる音楽が好きで、例えばtoeみたいなそのシーンにおける有名バンドを取り扱いたいと思ったんでしょうね。で、お客さん側も「昔聴いてたあのバンドを今見てみたい」と思っている人が多いみたいで、僕らも15年やってるから、ここ5年くらいはそれをすごく感じます。「高校生のときLITEを聴いてた」みたいな、そういう流れがある気がします。
井澤 LITEを昔から聴いていた影響でマスロック系のバンドを組んで、その人たちが僕らのライブでオープニングアクトをやってくれたこともあるし。ヨーロッパでもアメリカでも、そういう人たちがここ数年はけっこういます。
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誘われたら世界のどこでも
- ライブ情報
LITE 15th -
- 2019年1月14日(月・祝) 東京都 LIQUIDROOM出演者 LITE / SOIL & "PIMP" SESSIONS / downy / toe
- LITE「Blizzard」
- 2018年10月5日配信開始 / I Want The Moon
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配信シングル
- 収録曲
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- Blizzard
- Zone
- LITE「Blizzard」
- 2018年11月9日発売 / TOPSHELF RECORDS
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7inchアナログ
- 収録曲
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SIDE A
- Blizzard
SIDE B
- Zone
- LITE(ライト)
- 武田信幸(G)、楠本構造(G, Syn)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)によって、2003年に結成されたインストゥルメンタルバンド。2005年にミニアルバム「LITE」を発表し、本作の発売に伴う全国ツアーを開催したことで知名度を高める。2007年には1stフルアルバム「filmlets」がヨーロッパでリリースされたほか、初の海外ツアーも敢行。日本のみならず海外でも注目を集めるようになる。ツインギターのスリリングな掛け合い、聴き手のイマジネーションを刺激するドラマ性の高いサウンドが持ち味。2009年10月に自主レーベルI Want The Moonから発表した「Turns Red EP」ではニューウェーブやエレクトロニカの要素を導入し、新境地を開拓した。2013年に結成10周年を迎え、6月にアルバム「Installation」を発表。10月に東京・ラフォーレミュージアム六本木にて投げ銭制のアニバーサリーライブ「LITE 10th」を開催した。2014年2月にヨーロッパツアーを成功させるなど、海外での公演を重ねている。2018年10月と11月に新作「Blizzard」をデジタルシングルおよび7inchアナログでリリース。2019年1月に東京・LIQUIDROOMにて結成15周年イヤーの締めくくりとなるライブイベント「LITE 15th」を開催する。
2018年12月27日更新